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冗談好きな担当職員

作者: euReka

 友達が猫になってしまったので、私が彼女を飼うことになった。

「あなたは、この猫の飼い主登録の第一番に指定されています」

 猫を引取るために人猫変換施設へ行くと、妙に眉毛の太い女性の担当職員が現れて、いろいろ質問をされた。

「引取り主には経済状況を聞いています。失業などで収入は減っていませんか?」

「はい、ずっと同じ仕事を続けていますし、収入の証明書類もあります」

「では、猫になる前の彼女との関係は良好でしたか?」

「はい、概ね良好だったと思います。たまに喧嘩もしましたが、もう二十年も友達付き合いをしています」

「なるほど。では、あなたはこの猫を本当に飼いたいですか?」

「猫になる前の彼女と約束をしていましたので、この猫を飼うのは私しかいないと思っています……。ちなみに、飼い主登録をしている人には他にどんな人が?」

「それは、プライバシーに関わることなのでお答えできません」

 担当職員は、太い眉毛を上下に動かしながらそう答える。

「あ、いえ、後でその、家族などの登録主とトラブルになるのは避けたいと思って、その」

「それは心配ありません。登録主はあなただけです」

「え、だったら、最初にそう……」

「プライバシーに関わることなのでお答えできません、というセリフを一度言ってみたかったもので、すみません」

 担当職員はまた眉を上下に動かしたが、そういえば猫になった友達にも、無意味に眉を動かす癖があったなと私は思い出した。


 私は手続きを無事に終えて、猫になった彼女を引取ることができた。

 本当は人間のままの友達同士でいたかったし、彼女が猫になりたい、猫になった自分を飼って欲しいと相談してきたときは、いろいろ悩んで一カ月ぐらいはよく眠れなかった。

 でも、何もすることのない昼下がり、猫になった彼女と一緒にソファでくつろいでいると、彼女は自分の幸せを見つけたのかもしれないなと思えた。


 しかし五年後、猫になった彼女は寿命がきて死んでしまい、私の心に、ぽっかりと穴が開いた。

 人猫変換施設へ行って、猫の死亡手続きの申請をすると、五年前の手続きで会った眉毛の太い女性職員が現れた。

「あなたのご心痛をお察しいたします。もし、あなたが猫になるなら、わたしがあなたを飼います」

「え?」

「わたし、猫喰い、という妖怪なのです……。というのは嘘ですが、実は、彼女はわたしの妹だったのです。猫になった妹の世話を最後までしてくれてありがとう」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 不思議な雰囲気。不思議な話。けれど、変な盛り上げやわざとらしさが無い。 [気になる点] どうして、猫? [一言] 最後の部分は冗談と付いてないから、多分冗談ではなさそう? でもそうだとした…
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