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押しの強い後輩

作者: 猪口怜斗

「先輩、バレンタインですね!」


冬になると、チョコレートが食べたくなる。

CMが多くなるのも一つだが一番は今この時期、バレンタインだからだろう。高校二年生のこの時期は学生生活で一番バレンタインが活発といっても間違いない。現に、友人たちからいくつかチョコレートをもらっているし。


 だが、ここで一つ問題がある。私は、甘いものが苦手だ。好んで食べない、甘すぎるのが無理なだけで、ある程度は食べれるけど。



 ここで一つ問題がある。それは目の前のこの男。二年の教室だって言うのに堂々と入ってきた。私のことが好きらしいこいつは入学当初から話しかけてくる。

率直に言おう。面倒くさい。

私は、恋愛したくないわけではない。何なら恋人がほしいと縁結びの神社に友人といったことだってある。でもやっぱり、好きじゃないし面倒くさい。

顔は良い方だと思う。でも私は可愛い系が好みじゃないのだ。何度も言ってるのに、この後輩、まだ来る。



 「チョコくれないんですか?」なんて聞いてくる後輩を横目に、友人たちからもらったチョコを口に放り込む。甘い。

こいつはどうせ他の女の子からもらえるんだしいいだろ。


私が軽くあしらっていると、急に手に箱を握らされられる。なにこれ。


「…なにこれ」

「チョコです」

えぇ、チョコもらっちゃたぁ…。

チョコって女子があげるものだと考えていた私からすると、今日作ってきたのはかなり勇気がある行動だ。

貰ってしまったし、と思い封を開け中を見ると手作り感満載のそれに思わずうわぁ、と声を漏らす。後輩から不満の声が聞こえてくるが無視して口に運ぶと、ほんのり苦くて甘すぎないでおいしかった。なんでこいつは上手いんだ。


少しの妬みを含みつつお礼を言うと、満面の笑みになる後輩。

「…なに」

「いや、先輩ってかわいいなぁって」

「…そう」

「つきあいません?」

「…付き合わない」


なんで堂々と言ってくるんだこいつは、追い返すと不貞腐れながら自分の教室へと帰ってく。

そんな私を見て、友人の一人が近づいてくる。

「チョコわたさなくていいの?あんなに必至だったのに」

「うるさい」

小学校からの幼馴染の彼女は、わかったようにからかってくる

「緊張してると言葉に詰まるりりちゃんは、なんに緊張してたの?」

「うるさいって」


さっきの彼の言葉や笑みを思い出してしまい、それをかき消すようにチョコを食べる。

ハート形に大きく好きと書かれたそれ。

口に運ぶと、ほんのりと苦みがあった。でも、ひどく

「…あまったるい」


ふいに机の中にある箱を手に取る。綺麗にラッピングされたそれには小さなメッセージカードが挟まっている。


そのカードに書いた内容を思い出し

押しに弱いのは直した方がいいのかもしれないな、と思った。

まぁでも、君に押し負けるのは悪い気はしないけど。

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