いわくつきヒモになりたい
小さい頃から夢もなくただグタグタ生きてたら20歳のボッチ大学生になっていた。彼女なんて今までできたことないし、このままいくと魔法使いになってしまうだろう。
そこで俺はヒモになることを考えた。ヒモになると言っても俺にはヒモになれるルックスもステータスもない、だから女性が俺といてプラスになることはなんだろうかと考えた。俺はルックスはないが身長は180cmを超えるモデル体型だ(ちなみにイチモツもでかい)。サングラスして女性と散歩していたらどうだろうか、女性の自己肯定感は間違いなく上がるだろうと俺は考えた。ただ、散歩してくれるだけの男をヒモにする女性は少ない、そのため家事と調理は完璧にこなす。これらの条件ならばおそらく食いついてくれる女性もいるのではないか…などと考えていると
「シンジー、ご飯よー」
と母の声が聞こえてきた。
いつも母は俺の思考を遮るタイミングで呼んでくる。ヒモになること考えてる一人息子を持つ母のことを考えると我ながら親不孝だと思う。
「母さん、母さんはどんな人だったら一緒に住みたい?」
「そうね…好きな人かしら」
はいっ、詰んだー。やっぱり恋愛対象でなければ一緒に住むことは考えられないのか?いや待てよ港区OLは高確率で犬が猫を好む。ここに恋愛感情はないのでは?!そうだペットになればいい、
俺は天才的な発見をした。ペット系ヒモ?俺は体型的にドーベルマンか…?とりあえず犬のコスプレ頑張ってかわいいと言ってもらえるようにしないと。あとワンって、吠える練習も頑張ろ(いやこれはいらないか…)。俺の具体的な行動目標が定まってご飯も進んだ。
次の日、コスプレ用品を買ってきた。あくまで女性にはペット感覚で俺を家に入れるのだからかわいさ重視の服装にした。とりあえずSNSに画像、電話番号と共に『ヒモにしてください/身長181cm/犬系/散歩できます/都内』と書き、投稿した。
身長が功を奏したのかすぐに女性から連絡があった。
「あの……1日だけ来てくれませんか」
よっっっっししゃーキターーーーーー!俺は心の中でめちゃくちゃ叫んだ。
「はい!では明日の夕方そちらの方に向かいますね」
とウキウキで俺は答えた。
次の日、俺はその人の家にお邪魔した。玄関を開けるとロングヘアでいい香りがするいかにも美人OLという二十代中盤くらいの女性が待ち構えていた。俺が見惚れていると
「さっさと家事してください」という冷酷な声が聞こえた。
うわっ、ガチガチのSじゃんと心の中で思いつつ俺は快感を感じた(というのも俺はガチガチのMだった)。
俺は大量に溜まった洗濯物を洗濯機に入れ、洗濯機を回してる間に積み上がった皿を速攻で洗い洗濯物を干した。ここまで聞くとママ活の劣化verかもしれないがここから長期で契約を勝ち取れば立派なヒモになれる。そう思い掃除も丁寧にこなした。
家事がひと段落すると女性は
「そういえば、散歩もできるという話だったよね、外行こ」
と言った。俺はすぐさま返事をして支度した。もちろんサングラスをつける、この目があることで男としての価値は無と化すからな。
「手も繋ぎなさいよ」
と言われて俺は初めて、いや二回目くらいに女性と手を繋ぐこととなった。
歩いていると気づいたことがある。今まで感じたことのない視線だ。キモいとかそういう視線ではない、羨望の視線だ。カップルはこんな感じの気持ちなのかと俺は思った。女性の家に帰ると周りはすっかり暗くなっていた。母には高校時代の友達の家に行ってくると言ったので心配無用。とか思ってたら女性は
「一緒にシャワー浴びなさいよ、犬なんでしょ!」
と言った。え!シャシャシャワー?!に一緒に入る?!俺は混乱したがシャワーに一緒に入るのは本望なので即答でハイと答えた。
ん?待てよこれ大丈夫か?1日だけって言ってたよな、うん大丈夫だ泊まるなんてことは…
「今日泊まっていきなさいよ」
女性の声はシャワーの音でかき消されつつも俺の耳にはしっかり届いた。すぐさま俺はOKマークで返した。うわ、初回でこれはエグいと思いつつもまあヒモだしー?それくらいはやって当たり前だと心に言い聞かせた。
これ上手くいけば長期で契約勝ち取れんじゃね?と思った。俺にはそういう経験がないことを女性に伝えると
「慣れてる人はつまんないんだよねー」
と返され、安心した。
シャワーから出て歯磨きをしてベッドへ向かった。部屋の電気を消し、するべきことをして俺たちは寝た。(まさかこんな形で卒業するとは…まあいいや)
次の日、起きてすぐに女性の家を出ようとしてたら
「あんた何してんの?私のペットでしょ?でちゃダメだよ」
と言われ、困惑しつつもすぐに心の中で歓喜の舞を舞って。
「よろしくおねがいしまーーーーーすっ」
と某アニメのような声で答えた。
まあ?この家は?大学の近くだしいいかと勝手に納得し、母さんにはしばらく高校時代の友達の家に泊まると伝えた。正直、最高の環境がそろった。
どんなヒモ生活になるのだろうと心を躍らせていた矢先
「飯作って」
といつもの冷たい声が飛んできた。
俺は母さんに料理を仕込まれているので腕は一人前だ。とりあえず冷蔵庫にあった食材と米で炒飯を作った。
美味しそうに炒飯を頬張る彼女をみて、彼氏はいつもこんな視点なのかと嫉妬した。とりあえずこの家でヒモの武者修行をしようと考えた。




