緒言
南宋の曾先之が著した「十八史略」。日本における中国史受容のスタンダードです。当作はここに出てくる人物を、可能な限り簡潔に、本文以上の情報は載せず、紹介していきます。一緒に、中国史上の著名人物を歌にしている「蒙求」も掲載します。
テーマがテーマですし、wikipedia もビックリなレベルで簡素な紹介がなされます。というのも、そこを洗い出すことで「日本における中国史人物評の祖型」を見いだせるようになる、と考えるのですね。
そういう特殊な目的の元、各話は展開されます。よろしくお願いします。
なお当作では
・春秋戦国時代(-770〜-221)
・秦・前後漢(-221〜220)
・魏晋南北朝(221〜628)
・唐、五代十国魏晋南北朝(628〜979)
・北宋南宋(979〜1279)
を、それぞれ十世代で区切ってタイムスパンが少しでも見えやすくなるよう挑戦しています。
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以下、おまけのお話。なんでこんなことをしたいのか、についてです。
十八史略。中国史上の評価は「クソ」「問題外」。なので中国ではほぼ知られていません。そんなものが、日本ではブレイクした。というのも、十八史略。基本的には歴代史書のコピペです。つまり、文章そのものは極上。
そもそも今と違って、昔は著作権なぞいらなかった。印刷技術なんてない世界です、誰彼構わず出版なんて、望むべくもありません。「より人々に求められる文章」以外、世には出回れないんです。そういう世界でコピペされるのは、そのものが一つの栄誉。
十八史略のコピペ祭も基本的には「おー、あれのコピペね」とのみ取られるわけです。
ただしそういう世界では、コピペのセンスが求められる。中国で流通しなかった、となれば、コピペのセンスが最悪だったとするべきなのでしょう。実際のところ、史家は上位互換たる「資治通鑑」には興味を示しますが、十八史略には見向きもしません。それだけ、まぁありていに言って「ダセェ」本だったわけです。
そんな本が、日本でブレイクした。
あ、ここに上下論挟んじゃだめですよ。異文化は分かりづらい。なら、少しでもわかりやすいものがほしい。十八史略は、同じ文化圏の人間にとり価値ある本ではありませんでしたが、異なる文化圏の人間にとっては、すごかった。そう考えるべきです。
なら「十八史略のわかりやすさ」を端的に示せれば、中国史説話のど真ん中に共有される「日本人にとっての中国史」を浮き彫りにできるかもしれません。様々な知識人が、その膨大な知識で十八史略の断片的な記述に様々な付加価値を加えたことでしょう。けどその芯には結局の所、十八史略があるのではないか。
そう、仮説を立てています。
この仮説に対する検証は、今はそれほど進んでいません。というか、もしかしたらただの勘違いかもしれません。けどいいの。作者は「劉裕」周り以外、どうせザル知識だし。ザルなりに流れを把握する。そう言う恩恵にはあずかれるでしょう。
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自分がこう言った「史料読解」をぶち決めるときには、共通点があります。「勉強の足跡を吐き出す」。間違っても既知の学識の披露ではありません。学んだものを誰かに説明する、それを小説サイトでやる。そう言う性格のテキスト群です。なので、ご意見ご指摘は大歓迎。
ただご注意ください、こちらはタイトルにもある通り、「十八史略の内容を紹介する」以上を書くつもりはありません。「史実はこうだ!」と指摘されても、「いや「十八史略」をやってるんですけど……?」と返すしかないですので。
もちろん、コメント欄で語って頂くのは歓迎ですよ! よろしくお願いします。
十八史略参照サイト
国立 国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/958962/4?tocOpened=1