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ブサメンとクイズ

  魔王城近くの村を開放するべく最速でダンジョンを駆け抜ける事になった俺達、最初のダンジョンは難なく突破できたが、次に向かうダンジョンは悪名高きリッチが支配する古代遺跡だ。 リッチは未来で俺が倒したが、今回は200年前の世界にいるので全盛期と言っても過言ではないコンデションだろう。 気を引き締めないとこのパーティでも全滅するかもしれない。 覚悟を決めながらダンジョンの中を進むと何か仕掛けがあるのか怪しげな部屋にたどり着く。


「チーギュウ先輩、こんなところになぞなぞが書いてありますよ? パンはパンでも食べられないパンはなんだ…… こんなの簡単ですよ、答えはフライパンだからフライパンの描いてある扉の先に正解のルートがあるんですよ!」


「おい、相手は悪名高きリッチだぞ? こんなクソみたいななぞなぞを正直にお出しする奴じゃない、罠かもしれないから先に分身魔法で分身を先行させよう。」


 俺は魔法で分身を作ってフライパンの扉の先へ進ませる。 案の定、扉の先は落とし穴で、落ちた分身が底に生えていたトゲに刺さって消滅する。


「ブッブー、フライパンはドロドロに溶かしたら食べられまーす! まぁ、人間は死ぬじゃろうけどな! 魔族のなぞなぞなんだからもっと魔族に寄り添って考えるんじゃな!」


「ムカつく館内放送ね…… ていうか、魔族のなぞなぞって人間に出す問題じゃないでしょ! 答えは残り二つ、毒パンか、聖なるパンね……」


「毒は状態異常になるだけだとして聖なるパンってなんだよ! クソみたいななぞなぞ出しやがって…… チーギュウ先輩、どうしたらいいでしょうか?」


「聖なるパンかな、聖なるパンは聖水を練り込んだパンで魔族が食べると爆発するから食べられないご当地グルメだからな。」


「じゃあ、聖なるパンですね、今回は分身を先行させなくても良さそうですね。」


 探知魔法で確認しても聖なるパン方向には罠が無いので俺が先行して安全を確かめる。 どうやら正解は聖なるパンで合っているらしく、次のなぞなぞが待ち構えていた。


「またクソなぞなぞよ! 今度は朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足で歩く動物はなんだ? って、これは有名な奴よ! 答えは人間よ! なぜなら赤ちゃんの時はハイハイして、若い時は立って歩いて、年老いたら杖をつくからよ!」


「確かに人間の扉はあるけど、残りの生きものは全然見た事ないぞ! これが魔族のなぞなぞだとしたら人間は引っ掛けで残りの化け物のどっちかがマジで一日で歩き方を変える生きものかもしれないぞ……」


「あの三本足に見える奴は一見正解に見えるかもしれないが、アイツの三本目の足は実は生殖器でメスは二本足で歩くから、正解は四本脚が付いてるモケーレ・ムベンベだな。 朝は四本で地上を歩いて草を食べて昼は水中で二本足で海底を歩いて魚を食べて、夜は波に流されないように二匹一組になって手を繋ぎながら歩いてるからな!」


「チーギュウ先輩は魔界の生きものにも詳しいんですか? もしかして動物博士では?」


「自慢じゃないが俺は子供の頃に動物図鑑とかを読み漁ってたから動物問題は得意ジャンルなんだ!」


「動物問題まで熟知しとるとは今回の挑戦者は中々知性が高そうじゃの…… ワシは馬鹿と話したくないからこうやって罠を仕掛けてたがどうやらその必要はないらしいわい。 よかろう、ワシ自ら出向いてやろう……」


 正解であるモケーレ・ムベンベの扉を抜けるとリッチが現れる。 前回のやせこけた爺さんみたいな姿ではなく老齢の凄腕魔術師といった雰囲気の凄みのある姿で禍々しいオーラを放っている。


「ワシがこのダンジョンのボス、四天王の一人リッチじゃ。 今までの謎解き、モニターで見ていたが中々面白かったぞ? このまま戦ってもいいがせっかくの知恵者じゃ、ワシの考案したクイズ対決で決着を付けようではないか?」


「クイズ対決? またあの変ななぞなぞで戦うなら普通に戦うより難しくない? 大丈夫、チーギュウ?」


「そうですよ、コイツなら普通に戦っても勝てますって! やめましょう、チーギュウ先輩!」


「いや、普通に戦ったところでこの手の輩は復活したりしてくるから、ここでプライドをズタボロにして二度と悪だくみ出来ないようにしとかないと面倒だ。 リッチよ、クイズ対決で勝負だ!」


「よかろう、クイズ魔法チクタクデスマッチ! この魔法はお互いに30秒ごとにお題を出し合い、間違ったり答えられなかった時に爆発する魔法じゃ、ちなみにワシはこのデスマッチで負けたことは無い! 先行はワシからじゃ! 仏像と銅像が喧嘩しました、どっちが勝ったでしょう?」


「像が勝手に喧嘩するわけねーだろ! 答えはノーサイド! 後攻は俺だ! ペンはペンでも物知りなペンはなんでしょうか?」


「答えは鉛筆! 英語でペンシル(ペン知る)だから! 次はワシだ! ウサギとカメは道場で修行している仲です、ある日道場の師範代の大事なマスが盗まれました。 どっちがマスを盗んだでしょうか?」


「答えはカメ! カメは英語でタートル(ター取る)だから師範代の英語名マスターからターを取ったらマスになる。 よってカメが犯人! 次で決める! 200年後の今頃お前は俺に倒されているか、〇か×か?」


「答えは×! なぜなら人間が200年も生きてるワケないだ…… うぎゃぁぁぁっ!」


 間違った回答をしたせいでリッチは爆発した。 そう、俺が時を超えた事を知らないこいつには絶対答えられない質問を持ってるのでこの勝負最初から俺の勝ちは決まっていた。


「答えは〇、何故なら俺はお前を倒してからこの時代にやってきたから!」


「マジ!? チーギュウって未来から来たの!? どうやって来たの? ていうか未来どうなってるの?」


「凄いとは思っていたけどまさか未来人だったとは…… 未来の魔法は時も超えられるんですね! やっぱチーギュウ先輩ってスゲー!」


 勢い余ってつい口走ってしまったが、まぁいいだろう。 この際旅の目的を伝えるいい機会だ。 流石にモルガンの闇落ちの部分は伏せて今までの経緯を説明した。


「なるほど、チーギュウ先輩は未来での惨劇を防ぐために過去に戻って俺達の魔王討伐に力を貸してくれていたんですね!」


「そんな悲しい過去があったのに私達に協力してくれるなんて、顔はともかく中々いい男じゃない! ちょっと見直したわ!」


 そう言えば俺が説明するよりラヴやんが説明した方がいいのでは? あれ? だいぶ前から姿を見てないんだが? それに勇者パーティの魔術師のユリっぺも見てないけど、何処に行ったんだ? 二人に聞いてみるか。


「そう言えばこのダンジョンに入ってからラヴやんとユリっぺを見てないんだが皆知らないか?」


「え、ユリっぺはともかくラヴやんなんていたっけ? 森で会った時からアンタ一人だったわよ?」


「俺も見てないですね、まさか最近女性ばかりが神隠しにあってるって例のアレでは?」


「何!? そんな噂があったなんて聞いてないぞ! 史実にもない…… まさかこれが世に聞く歴史の修正力か?」


 俺達が慌てふためくと水晶に着信が来る。 画面を壁に投影するとそこにはラヴやんとユリっぺの姿があった。


「ようやく繋がったで! 大変や、四天王の一人のサキュバスに捕まってるんや! 場所は王都の繁華街のキャバクラ『エーヤン・ルージュ』や!」


「ウチもラヴやんさんも無理やり働かされて…… 男の人と二人きりで喋るの恥ずかしいナリ! 早く助けてほしいナリ! あっ、見つかっちゃうから切るナリよ!」


  大変な事になった。 どうやら歴史の修正力によって史実には無い事が起こり、かなり魔族が強化されているようだ。 史実ではサキュバスは四天王ではなく、半魚人が四天王として君臨していて水没都市ダンジョンでソロバンが溺死するのだがソロバンは生き残り、半魚人はサキュバスに倒されたことによって、この時間軸が新たな分岐を生み出そうとしているのかもしれない。


「チーギュウ先輩、助けに行きましょう! たとえ歴史が変わってしまおうとも、あなたはそれを承知で時を超えてきたんでしょ!」


「そうよ、不測の事態が起こってもアンタ未来から来た凄腕の賢者なんでしょ? 先鋒は私達が任されたからアンタは魔法でサポートしなさいよ、これでも背中を任せるぐらいには信用してるんだから!」


「ネギタマ、モルガン…… 俺のわがままのせいでお前らの歴史まで変えてしまって申し訳ない! でも、俺は皆が笑顔になれるように全力を尽くすつもりだから最後まで付き合ってくれ!」


「何言ってるんですか、正しい歴史なら一年かけて魔王を倒しても村は戻ってこなかったのに、あなたが来てから一か月もしないうちに魔王に立ち向かえるぐらいにはレベルも上がりましたからね。 村が焼かれるのが正しい歴史なら俺だって変えたいですよ!」


「私も最初は変な奴だと思ってたけど、今は頼りにしてるし…… それになんか変な話だけど私自身救われてるって感じてるのよね。 多分アンタが居なかったらどこかで取り返しのつかない事になってるかもしれない、まぁ歴史を変えるついでだとは思うけどこんな私で良かったら頼りなさいよ! 私もアンタを頼ってるしお互いに力を合わせればきっと何とかなるわよ!」


「二人とも…… よし、転移魔法で王都に行ってラヴやんとユリっぺを救うぞ! 転移魔法発動!」


 こうして俺達は本格的に変わり始めた歴史と戦うべく、王都へと向かった。


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