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ブサメンと牧場

  大量破壊魔法によって多くの犠牲が出てしまった歴史を変えるべく、過去に飛んだ俺とラヴやん。 この時代でモンクをしているモルガンを探すために先ずは先代の勇者であるネギタマのパーティに合流するべく、俺たちはスゲードイナカ地方にあるギルドに訪れた。


「いらっしゃいませ、ギルドへようこそ…… ギャー、オークよ! 人里に降りてきたオークよ!」


「誰がオークじゃ! 人間じゃい! そんな事よりここから仕事を受けた若い連中のパーティは何処に行った?」


 しばらく顔の事について触れられてなかったので久しぶりにツッコミを入れてしまった。


「あぁ、新米のネギタマくんのパーティですね。 それなら北の森でキマイラ退治のクエストを受けてますよ、でも帰りが遅いですね……」


「ありがとう、じゃあ北の森にワープするぞラヴやん!」


「おぅ、ねーちゃんありがとうな! じゃ、ワイらは転移魔法で北の森までひとっ飛びや!」


「転移魔法!? もしやさぞや名のある賢者様では!?」


 確か史実では最初のキマイラ狩りの最中にコカトリスに襲われてパーティが全滅しかけるんだったな、転移魔法でワープすれば丁度コカトリスに遭遇したパーティを発見した。


「キマイラだけだと思っていたらこんなデカブツがいたとはな…… ユリっぺ、魔術で援護してくれ、コカトリスの石化攻撃に注意しろよ?」


「ま、任せるナリ! ウチの魔術は婆ちゃん仕込みの古代魔法ナリよ! ソロバン、アイテムの援護お願いするナリ!」


「ふむふむ…… コカトリスですか、今のレベル帯では厄介な相手ですが倒せば大きな利益になるでしょう。 ですが、ここで倒れたら大きな損益になります、無茶はしないでくださいね、モルガン?」


「それじゃ、いっちょ私の拳で鶏料理でも作りましょうか? そっちの方が金になるかもよ? ソロバン?」


 鑑定魔法で調べるとまだ駆け出しなのでレベルが10ぐらいしかない低レベル帯だ、それに対してコカトリスはレベル30でそこそこ強い個体だ。 こりゃ普通なら死んでるぜ、よくもまぁこの状況で勝ったなご先祖様は…… 危なくなったら助け舟を出そうと観戦すると魔術師が気をそらし、剣士とモンクが攻撃、周りの状況を見て商人がアイテムでサポートする。 中々連携の取れた動きだがレベル差は残酷でコカトリスのHPは半分も削れていない。 そのうち、疲れからか被弾も多くなりコカトリスが石化魔法をかけようとした瞬間に俺が反射魔法でコカトリスの魔法を跳ね返した。


「クェー!?」


「見ろ、コカトリスが石になったぞ! 一体誰が……」


「見てネギタマ、きっとあの人が助けてくれたんだわ!」


「ウチの魔法より凄いナリ…… きっと高名な魔術の先生に違いないナリ!」


「うーん、あともうちょっと早く加勢してくれれば経費も安く済んだんですがね? 今は生き延びた事を喜ぶべきでしょう。」


 ガキ共が好き勝手言いやがって…… まぁ、無事で良かったと言うべきだろう。 俺は大人の余裕を見せつけるように堂々とした態度で接する事にした。


「大丈夫だったか? ここにはキマイラ以外にもコカトリスやグリフォンの巣もあるからレベリングならもっと人里に近い方でするべきだったな。」


「すみません、俺達まだ新米であまりモンスターの生息地に詳しくなくて……」


「で、でもウチら早くレベルアップして魔王を倒さないと故郷の皆が心配で……」


「そうなんです! 私達の故郷は魔王城に近くて早く魔王を倒さないと畑や家畜が襲われて冬を越せなくなっちゃう!」


「とはいえ、魔王は勇者にしか倒せないらしいので地道にレベリングをするしかありませんね。 一体いつになったら魔王城にたどり着けるのやら……」


 史実によると、この後一年ほどレベリングしてようやく魔王を倒すらしいが村は既に魔族に焼かれて失われたらしい。 なるほど、こういった悲しい過去の積み重ねでモルガンが魔女になったのだろう。 だとすれば俺が過去に来た事によって魔王の早期討伐が可能になった今、やるべき事はただ一つ。


「よし、お前ら! 今から魔王城に行くぞ!」


「えぇ~、ちょっとアンタいきなり何言ってんの!? そもそも名前ぐらい名乗りなさいよ!」


「俺の名前はチーギュウ、魔王を倒すためにはせ参じた賢者だ。 今から俺がお前らをレベリングしながら魔王城に着くころには魔王を倒せるようにしてやる!」


「ふーむ、魅力的な提案ですが美味い話には裏があります。 私たちにはメリットがありますが貴方にはメリットはあるのですか?」


「あるわい! 俺はビッグになりたいからわざわざこんなド田舎まで勇者を追いかけてきた! そして勇者を育てた男として歴史に名の残る存在になりたいんじゃい!」


「動機は不純だけど筋は通ってるナリね…… 皆はどう思うナリか?」


「俺はこの人に着いていくよ、動機はどうであれ魔術の腕も凄いし何より早く魔王を倒したいという気持ちは俺達全員の相違だろ?」


「そうね、でももし私達を裏切ったら全身の骨を折ってやるんだから覚悟しなさいよね?」


 それは未来のお前に散々やられたんだが? と、思いながらとりあえず勇者パーティに合流する事が出来た俺は勇者達のレベリングをしながら魔法の授業、モンスターの知識や野営の仕方など持てる知識を全て叩き込みながら魔王城へ進軍していた。

  一緒に暮らしているうちに段々と打ち解けていき、俺はキッズ達に慕われるような存在となっていった。 あと、ネギタマとモルガン以外の顔と名前が一致するようになった。 魔術師の子がユリっぺこと、ユリ・ナオンスキーで商人の子がソロバンことバーソロミュー・バンデラスという名前らしい。 ユリっぺは女だがソロバンは女に見えるが男らしいので時々ネギタマとソロバンと俺で連れションに言ったり異性の話をして盛り上がっている。 そんな生活をしているうちにとうとう四天王の一人であるミノタウロスが住むダンジョン、迷宮に挑む事になった。


「よし、お前ら! 四天王を倒さなければ魔王は倒せない! 気を引き締めていけよ!」


「分かりました、チーギュウ先輩! でも俺達は今何処にいるんでしょうか?」


「分からん! 迷宮って凄いな! 本当に迷っちゃったぞ!」


「全く…… そう言うと思ってあらかじめ私がこの毛糸を入口から引っ掛けて道しるべにしておいたので、行き止まりに着いたらこれを辿って別の分岐に進めばいいのですよ。」


「流石はソロバン、ソロバンは村で一番勉強が出来る奴だったんですよ先輩!」


「あ、あの毛糸ソロバンが仕掛けたナリか? ウチが毛糸のパンツを編もうと思って回収しちゃったナリよ……」


「アンタ達ねぇ…… まともにダンジョン探索しなさいよ!」


 すっかり仲良くなったので毎回こんな感じでコントのようなやり取りができるようになったので良かった…… キッズと喋る機会なんて無かったから仲良くできるか不安でしょうがなかった…… 結局、迷宮は探知魔法で出口を探して事なきを得たので一応賢者の威厳は保たれた。 俺は年上で賢者だぞ、敬えよキッズ共? 迷宮を抜けるとそこは牧場だった、看板には『わくわくふれあいファーム ミノ牧場』と書いてあり、可愛いイラストでほのぼの感を出している。


「すげーっ! 村の牧場より立派だ! 流石は都会だぁ!」


「ソフトクリームも売ってるわよ! きっと牧場で取れたミルクで出来た美味しい奴よ! すみません、牧場バニラソフト一つお願いします!」


 すっかり普通の牧場だと思い込んでるキッズ共を横目に俺はダンジョンの主を探す。 いや、多分アイツだな。 ソフトクリーム作ってる牛みーてな奴、アイツが絶対ミノタウロスだろ、俺は早速声をかける事にした。


「チーギュウ、小銭無いからソフトのお金払っといて?」


「嘘だろお前、俺の事保護者だと思ってんの? まぁ、払うけど後で返せよ? すみません、いくらですか?」


「250ゲンナマです、あっ良かったらお父さんも試食しますか?」


「いいんですか? いやー、ありがとうございます…… って、俺はまだ25才だよ! ていうか、お前がここのダンジョンのボスのミノタウロスだろ!?」


「バレたなら仕方ない、俺がここのわくわくふれあいファーム ミノ牧場の牧場長のミノタウロスだ! 今は牧場をしながら四天王をしている。」


「ここであったが百年目! 俺達は魔王討伐を目的とした勇者のパーティだ、勝負しろ!」


「慌てるな、その前にわくわくふれあいタイムがもうすぐ始まる。 冥土の土産に見ていくといい、俺の自慢の娘がお前たちの前で残虐なショーを始める様を見届けるがいい! 来い、ミノ子!」


 ミノタウロスがラジカセのスイッチを押すと小さなステージから自作のアイドル衣装を着た牛みたいな乳の美少女が現れると自作の歌やダンスを披露しながら数分間のショーをやり切る。 なんだこれ、新手の精神攻撃かな?


「はい、チェキと握手会やるからCD買ってね~? ミノ牧場のアイドル、ミノ子をどうかよろしくお願いします!」


「何が残虐なショーだよ、ただの地下アイドルのライブだっただろうが! これを土産に冥土に言ったらぜってー地獄の鬼に『エピソードトーク持ってないねー』って笑われるわ! オメーは一体どうしたいんだよ!」


 俺はひとしきり突っ込むとミノタウロスの襟首を掴みながら叫ぶ。


「すみません、なんか魔王様が『お前ミノタウロスだからダンジョン迷宮にしろよ』って言われて牧場への道を迷宮にしちゃったせいで牧場が経営難なんです!」


「経営難だからって娘を地下アイドルにしてもいいのかよ! 無理やりやらせて恥ずかしがってたじゃねーか!」


「あ、あれは娘がやりたいって言ったのでせめてステージを使わせてやろうと思って…… 可愛かったでしょ?」


「可愛いかったかと言われれば可愛いよ? でもこんな牧場じゃなくてライブハウスでやれよ! 牧場発地下アイドルは新しいっちゃ新しいけど素人にプロデュースは無理だ!」


 そう言うと俺はミノタウロスの襟首を掴む手を強める。 そこにソロバンが現れ制止する。


「チーギュウさん、彼に敵意は無いみたいですし手を放してください。 僕らはあくまでも魔王の支配下の近くである生まれ故郷の村を助ける為に行動しているので四天王とかはどうでもいいです。」


「あぁ、でも話し合いと言ってもどうするんだ?」


「ミノタウロスさん、確かダンジョンの前の迷宮が邪魔だから牧場の経営が危ういと言ってましたね?」


「はい、それに魔王様はワンマンなので我々の意見は封殺されてしまいます。」


「では私達がダンジョンを破壊して牧場への道を切り開けばまた牧場の売り上げが回復するのでは無いですか?」


「なるほど、勇者のせいにすれば魔王様もなっとくしてくださる!」


「ただし、条件があります。 貴方の娘さんを僕にプロデュースさせてください!」


「なっ…… それは…… まぁ、そんな事ならいいでしょう。」


「話は決まりましたね、ではチーギュウさん魔法で何とかしてください。」


「お前らは俺をなんだと思ってるの? まぁいいや、大量破壊魔法一点集中!」


「すごい! 無駄に頑丈な迷宮が一瞬で粉々に…… これで牧場は救われます、ありがとうございます!」


 魔法で迷宮を粉々にするとミノタウロスの牧場は経営を立て直して四天王の仕事をしなくても済むようになったらしい。 感謝の印として乳製品詰め合わせセットを貰ったので食費が浮いてラッキーだった。 それとソロバンとミノ子はあの後、メジャーデビューを目指して王都に行ってしまったのでパーティからは外れてしまった。 史実ではこの後の戦いで戦死してしまうのでそれよりはマシだろう、メンバーは欠けたが新たな四天王撃破に向けて次の旅に出るのであった。

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