ブサメンと物語の終末
無事に妹であるエビチリと合流した俺達だが、エビチリがリザードマンと交わしたマルカジリ帝国の帝王の排除を実現するために毎月行われる美人コンテストで優勝して帝王に近づくという計画を実行するのであった。
「皆、いよいよコンテストだけど準備できてるか?」
「当り前じゃない、見てよこの可愛い衣装を! リザードマンの村に伝わる花嫁衣装らしいわよ?」
エビチリは純白のウエディングドレスのような衣装を着ていて、髪型も大人っぽいアップスタイルでまとめているので人相書きより大人っぽいからバレないだろう。
「チーギュウ様、私もせっかく夜会用のドレスに着替えたんですから見てくださいよ。」
「アリスも可愛いな、普段の甲冑姿もかっこいいから好きだけど、今の格好も色っぽくて見てるだけでドキドキしてくるな……」
「これぐらいでドキドキするとか童貞ですか? これだからモテない男は女もまともに褒められないんですよ、まぁ合格点はあげましょう。」
アリスは口ではこう言いながらも頬を染めながら照れている。 口は悪いがこういうところは可愛いんだよな……
「チーギュウさん、母の衣装も採点してもらえるかしら?」
「母上はもっと落ち着いた格好をしてくださいよ! そんなフリルの付きまくったミニスカドレスなんてすぐに追い出されますよ! しっかりしてください!」
「えぇ~、ひど~い! 可愛いと思うんだけど二人はどう思う?」
「ないわ、お母さん。」
「無いですね、王妃様。」
二人に否定されて少し残念そうにしながらも渋々コンテストの控室に向かう母上、多分速攻で落とされるだろうが控室にいてくれるだけでも戦力的にはありがたい。 俺とオシンコはコンテストの客席で事の成り行きを見守る事にして後はコンテストが始まるのを待つだけだった。
「いよいよ始まりました、帝王様のハーレムに入る美女を決める為に各地から集まった美女を決める美人コンテスト! 司会は女を見る目に自信がある私オークがお送り致します! 解説は女を見る目に定評のあるゴブリンさんにお越し頂いてます!」
「よろしくお願いします、いい子供を産めそうなメスは大体お尻がデカいんで今回はお尻が大きい女子が注目されてますね。」
「なるほど、今回はお尻に注目されるようです。 早速ですが参加者に意気込みを聞いて行きましょう、一番の人間さんはお尻に自信はありますか?」
「お、お尻ぃ!? 早速何処見てんのよ! お尻なんて関係なく私のドレスとかを見なさいよ…… このドレスお尻に穴開いてるぅ!?」
「これは早速お尻を見せつけてきた! リザードマン族の花嫁衣裳には尻尾用の穴が開いてますから尻尾の無い種族が着るとお尻が出てしまいますね!」
「これはあえて穴の開いた衣装でお尻をアピールしてくるいい作戦ですね、しかもお尻も安産型で大きいのも加点対象ですね。」
エビチリが着ていた衣装にはお尻に大きな穴が開いており、後ろを向くと下着とお尻が丸見えになってしまう、だがそれが会場で受けていたので設置されていたスロープに一番と書かれたボールが大量に流されていく。 スロープの先には大きなバケツが置いてあって最終的にバケツの中に多く入っていた番号の美人が帝王のハーレムに入れるのだ。
「一番の人間さんに大量得点が入りましたね、次は二番のこれはまた人間ですかね? いえ、本人のプロフィールにホムンクルスと表記がありましたのでホムンクルスですね。 では意気込みをどうぞ!」
「ケツはデカく無いが鍛えてるので引き締まってるとは思いますよ。 今、会場のオッサン共から見られてると思うと不快ですね。 そんなにケツが好きならケツで押しつぶしてやろうか、ゲス共?」
「これはキツイですね、言葉の暴力では彼女に適う者はいないでしょう、解説のゴブリンさんどうでしょうか?」
「そうですね、お尻は鍛え抜かれていて引き締まったスポーディな感じで中々いい子供が産めそうですね。 そして勝気で男を見下した表情で毒を吐くのはマニアにとってはご褒美なので刺されば高得点が狙えそうですね。」
アリスの発言でまたもやスロープに大量のボールが流れていく。 どうやらこの国には変態が多いらしい。
「二番のホムンクルスさんも中々に人気ですね、今回のコンテストはこの二人の一騎打ちになりそうですね。 では三番の……、誰だこんなババア連れてきたのは!? 誰かつまみ出せ!」
「なんだこのババアは! 私が解説するまでも無い、経産婦は評価の対象外ですよ! ここは美人コンテストであって美熟女コンテストではありませんよ!」
「ひっど~い、こう見えてもマヨちゃん17歳だぞ☆ あんまりいじめちゃ嫌ぴょん♪」
母上の発言で会場の変態達は一気に吐き出し、実況と解説の二人も思わず釣られてゲロってしまった。 かくいう俺とオシンコもちょっと吐いてしまった。
「チーギュウ兄ちゃん、オイラもうダメみたいだ…… 皆と冒険続けたかったけどこれは耐えられないや……」
「嘘だろ…… ここまで来たのにこんな所で死ぬなんて…… 死ぬなーっ! オシンコー! うわぁぁぁぁぁぁっ!」
「あのババア、いたいけなガキを無理すぎる若作りで殺しやがったぞ! この犯罪者め! 誰か憲兵を呼べー!」
「私がババア……? 私が犯罪者……? こんな、こんなに可愛いのになんで?」
「く、狂ってる…… こんなところに帝王様を呼ぶわけにはいかん! 控室にいる帝王様をお守りしろー!」
多少番狂わせはあったが帝王が控室にいる事は分かった。 暗殺するなら今しかない、俺はオシンコに蘇生魔法をかけて会場から抜け出して控室を探す。
「帝王様、大変です! 会場で狂ったババアが暴れているので危険です! 今すぐ逃げましょう!」
「ボクチンの新しいお嫁さんはどうするの? 新しいお嫁さん決めて結婚初夜をしようと思ったのに…… ババアなんて早くやっつけて、役目でしょ!」
あの控室で参加者の着替えを漁っているのがどうやら帝王らしい、まったくどんな腐った政治をしたらあんなものを上に立たせるんだ。 俺は杖を構えながら帝王の護衛を風魔法で吹っ飛ばす。
「ぐわ~っ!? 何者だ?」
「帝王! お前には恨みは無いが国民の不満を解消するために死んでもらうぞ!」
「なに? ボクチンはただお嫁さんが欲しいだけなのに…… だからいっぱい美人コンテストしたいから増税しまくってボクチンの言う事を聞く官僚にお金いっぱいあげてるのに…… ボクチンに文句をいう奴は許さんぞーっ! ボクチンがこの国で一番強くて偉いんだーっ!」
「強さイコール偉いってわけじゃねぇ! 死ねっ、火炎魔法イフリート・フレイム!」
俺は炎魔法を帝王に向けて放った。 これが決まれば帝王は燃えるはずなのだが…… 帝王は燃えずに口をモグモグさせてお腹を擦っている。
「おいち~! そちの魔法はおいち~のでもっと食わせてたもれ♡ ボクチンは相手の魔法や技を食べる事が出来るんだよ、ちょうど昼飯がまだだったからちょうどいいや。」
「ただのキモデブだと思っていたらこういう力の持ち主だったのか、さすが力こそ正義のマルカジリの帝王……」
「チーギュウ兄ちゃん、魔法が効かない相手にどうやって勝つんだよ?」
「魔法が効かないなら物理で殴るか、くらえ勇者神拳!」
「今度はマッサージかな? 中々気持ちいいし君をボクチン専属コック兼マッサージ係として召し抱えてもいいぞ?」
打撃も分厚い脂肪で受け流されて威力が減少してしまい、奴がいうマッサージ程度のダメージしか与えられていない。 おそらく斬撃も分厚い脂肪で内臓へ届かず致命傷にはならないだろう。
「拳も効かないなんて…… チーギュウ兄ちゃん、諦めて退散しようよ!」
「いや、今仕留めないと護衛が強化される…… 殺るなら今しかないっ! 大量破壊魔法一点集中!」
「色んな属性の魔法の味がしておいち~! 凄く濃厚で気に入ったぞ、あと百回食べても飽きない味だえ~♡」
「くそっ、これもダメか…… どうしたら勝てるんだ……」
俺が諦めかけた時、後ろから誰かの気配がして振り返る。
「お兄ちゃん、諦めないで! アイツを倒さないと故郷に帰れないでしょ!」
「この程度で諦めてどうするんですか、諦めが悪いのが貴方の取り柄でしょう。」
「エビチリ! アリス!」
エビチリとアリスが駆けつけてきてくれたので今度は三人での連携を試す。
「二人とも剣を持ってないなら俺が作る、ソイツで奴を倒すぞ!」
「分かったわ、お兄ちゃん!」
「早く作ってください、アイツの顔を見ると生理的に不快なんです。」
「もう出来てるぞ、炎の魔法剣インフェルノ・ブレイド! 氷の魔法剣コキュートス・エッジ! 受け取れ!」
俺は二人に魔法で出来た剣を渡すと二人はそれぞれ斬撃を繰り出す。 しかし、思ったより浅い切り傷しか出来ないので致命傷にはならない。
「効かないよ~、でも美女二人が来てくれたおかげで楽しみは二倍に増えてぞなもし~♡ 大人しくしていれば優しく大事に扱うけどおいたが過ぎたら厳しく折檻しちゃうぞ~♡」
「うわっ…… キモっ……」
「容姿も性格もパーフェクトにゲスですね、早く殺しましょう。」
「でもこれ以上どうやって……」
俺がまたも諦めかけた時、もう一人の影が俺の後ろに立つ。
「諦めてはいけませんよ、勇者の家系は決して諦めてはなりません!」
「母上!」
「オゲー!? コスプレババアぞなもし~! ボクチンはピチピチヤングの女子しか受け付けて無いのじゃ~!」
母上を見てゲロを吐く帝王、だがその量が尋常じゃなく見る見る内に身体が萎んでいく。
「よし、チャンスだ! 二人とも斬撃を合わせて二属性相殺魔法をアイツの体内に喰らわせてやるんだ!」
「やってみるわ! アリス合わせて頂戴! 炎魔法インフェルノ・オルトロスバイツ!」
「承知しました、お嬢様。 氷魔法剣技コキュートス・ケルベロスバイツ!」
「「二極相殺剣技ヘルゲート・セイタンパニッシャー!」」
「そんな技は効かな…… あれ、ボクチンの鋼の脂肪が…… ないっ!? うわぁぁぁぁぁっ! ボクチンのハーレムがっ! ボクチンの世界酒池肉林計画がっ! まだ死にたくな、うぎゃぁぁぁぁっ!」
ゲロで鋼の脂肪を吐き過ぎた帝王が生身の身体で二人の剣技を受けると爆発四散した。
「帝王様、ババアがそちらに行かれました…… 帝王様が死んでるぞ!」
「何ッ!? 誰だ帝王を倒したのは?」
現場にやってきた憲兵がしばらく困惑すると魔法剣を持っていた二人を見ると納得したように拍手を送る。
「やったぞ! 二人の女神が邪知暴虐な帝王を倒したぞ!」
「帝王を失った俺達はこの二人についてくぞ! マルカジリ帝国は代々強い者に率いられてきたからな! しょうがないよな、皆!」
すっかり魔王を倒した英雄として迎えられた二人は国民に迎えられ宴と共に帝国の指導者として迎えられる事になった。 最初に行ったのはドッチデモエーヤンに併合される事や国民への税の負担の軽減など今までの強ければなんでもしてもいいといった歪んだ考えを改める事や人も魔族も仲良く暮らせる社会を作る事を中心とした改革でこれは国民にも受けた。 俺も母上もエビチリの家族なので国賓として扱ってもらったが、いざ国に皆で帰ると言っても中々離してもらえず結局エビチリとアリスはマルカジリ州の知事として現地に残ってもらう事になった。
帰国した俺と母上は、その後事の顛末を話した後に残っている外交問題に奮闘することになった。 父上と母上はその後、頑張った末に俺の妹や弟を沢山残して大往生。 かくいう俺もシズと結婚して子供は三人出来た。 子育てはラヴやんやエリぴょんが助けてくれていたので何とかなったがとにかく大変だった。 特に一番下の子が俺に似て顔が不細工だったが、特に俺のように捻くれて育たずに魔法の才能は俺を凌ぐほどの大賢者だ。 今では孫達に囲まれてこうして冒険譚を纏めている途中だ。
「ねー、爺ちゃん? どうして僕はチーギュウって名前なの?」
「それはね、お前が爺ちゃんみたいな大賢者になって欲しいってお前の母さんが付けたからだよ。 チーギュウというのは古い言葉で大賢者という意味なんだよ、だからお前も爺ちゃんみたいな大賢者になって欲しいと思ってるよ。」
「そうなんだ、じゃあ僕も勉強頑張って爺ちゃんみたいな大賢者になるよ! それじゃ、僕エリぴょんとお勉強の時間だから行くね! また色んな魔法や昔の話してね!」
「あぁ、いってらっしゃい…… 爺ちゃんは少し眠るとするよ……」
俺は一番下の子の子供であるチーギュウ二世を見送るとベッドに横たわって瞼を閉じる。 今日の夢は光に包まれたダンジョンで昔の仲間と冒険する夢らしい、背格好も昔のままだ。
「チーギュウ先輩、やっと来てくれたんですね! 先輩がいなかったからこの暗黒終末獣を押さえるだけで大変だったんですよ!」
「ネギタマ!」
「私だってアンタが余計な事してくれたせいで魔女から女神に昇格しちゃって大変だったんだから! そのおかげで信仰の力とかでパワーアップしたんだけど…… ありがとうね、チーギュウ!」
「モルガン!」
「チーギュウさん、向こうの世界では僕の子孫を助けてくれてありがとうございます! あの後、地下アイドルから昇格して世界的アーティストになった嫁を補佐するだけの人生ですが楽しかったですよ!」
「ソロバン!」
「ウチもあの後お店を大きくして色んな支店を出したんですけどチーギュウさん気づかなかったんですか? ニンゲンッテイーナやマルカジリにも出してたんですけど…… でも色々と楽しかったからオッケーナリよ!」
「ユリっぺ!」
「チーギュウ! まさか私が量産されて幅広く使われるとは思わなかったがおかげで良き相棒を持ててうれしく思うぞ!」
「まさかこの人がオリジナルとは…… まぁ、ホムンクルスは短命ですが州知事もやらせてもらって悪くはない人生でしたね。」
「アイリス! アリス!」
「懐かしいと思うが話は後だ! 今までの世界の悪意が集まって出来たこの魔物をこの世界から解き放ったらお前の孫世代に世界の終末が起きるかもしれないんだ。 孫達が力を付けるまでここで抑えるのが俺達の今の使命だ、行くぞチーギュウ!」
よく見ると皆形は違うが黒いモヤのような化け物と戦っている。 俺もこの戦いに参加するために呼ばれたのか。 そう悟ると俺は杖を構えて叫んだ!
「俺の名はチーギュウ! 大賢者にして勇者、クッテソーの血を引いたドッチデモエーヤンの魔術部隊隊長だ! 暗黒終末獣よ、俺達の子孫がいつかお前達を討ち滅ぼすまで俺達が相手だ!」
俺の話はここまでだがいつかきっと続きをしてくれる奴が現れるだろう、それまで世界は爺ちゃんが守ってやるからお前は俺より凄い勇者になれよ、チーギュウ二世。 そしてまだ見ぬ俺の子孫達よ、俺が守ってきた世界を頼むぞ!
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この話はここで終わりですが、近いうちに次回作を書きたいと思います。 仕事に就いたので更新頻度は遅くなりますが週一更新で頑張りたいと思います。