ブサメンとリザードマン
無事、母親と再開した俺だが久しぶりにあった母はビキニアーマーを着て変な仮面を被っていたので嬉しいやら悲しいやら複雑な気持ちになってしまったが気を取り直して妹らしき人物のいる南のリザードマンの村にやってきた俺達は聞き込みをすることにした。 早速通りがかったリザードマンがいたので最近人間を見たか聞いてみる。
「すみません、最近人間がこの村に来ませんでしたか?」
「あー、あのお嬢ちゃんかね? あの子が村に来てから村の若いもんが大人しくなってくれてありがたいねぇ。 前まではリザードマンの国を作るためにこの国から独立するとか言うとったけどワタスみたいなおばあちゃんには分かんないからねぇ、軍事物資とかいって畑から野菜を盗らなくなっただけありがたいよ。」
「なるほど、おばあちゃんも大変でしたね。 で、そのお嬢さんはどちらへ?」
「今は村長の家で若いもんに稽古つけとるよ、何やら王都に攻め込んでこの国をリザードマンの天下にするんだとか。 若いってええなぁ、ワタスにはそんな元気無いでな。 村長の家に行くならこれウチで穫れた野菜だけど持って行ってくんろ。」
「ありがとうございます、では届けに行ってまいります。」
リザードマンのおばあちゃんから野菜をいただいた俺達は村長の家に向かうとそこで大きな声を発しながら己を高め合うリザードマン達を見つける。
「お前ら、もっと腹から声を出せ! 今のままでは虫けらのままだぞ! あ、何だお前らは? ここはリザードマン族解放戦線の前線基地だぞ!」
「すみません、おばあちゃんから野菜を持って行ってくれと頼まれまして……」
「そうか、ではさっさと置いて帰れ。 我々は一刻も早くレベルアップして軍団長と共に王都へ攻め込まなければならんのだ! 一般人は帰れ!」
「あの、よろしければ軍団長にお目通り願いたいのですが……」
「軍団長は忙しいのだ、貴様等一般人とは話はしない! 帰れ!」
いかん、このままでは話し合いにならない。 そう思った瞬間、更にリザードマンが続ける。
「お前のような怪しいニートと女とガキとババアはきっと王都のスパイだ! 皆、捕らえろ!」
「やめろ、お前! 発言を撤回しろ!」
「誰がババアだクソトカゲ! 黒焼きにして黒魔術の材料にしてやろうか、炎魔法イフリート・フレイム!」
母上がリザードマンの尻尾の先に火を付けて戦の火ぶたを切ると全員が俺達に襲い掛かる。
「も~、母上のせいで戦闘になったじゃないか! 極力殺さないようにしないと…… 水魔法リヴァイアサン・ブレス!」
「ごめんなさい、ついカっとなってしまって…… 雷魔法トール・ハンマー!」
俺の水魔法でリザードマン達を濡らしてからの母上の雷魔法で感電させるといかに硬い鱗で覆われたリザードマンといえどひとたまりもないだろう。
「隊長! 奴ら強いです! 我々では勝てません!」
「ならばあのお方をお呼びするしかない! 軍団長、王都の刺客がやってきました! 助けてください!」
リザードマン達が家に逃げ込むと入れ代わる形でビキニアーマーの頭にリザードマンの骨を被った少女が出てくる。
「クソ雑魚トカゲが…… 弱いくせにイキるから負けるんだよ! で、次の敵は誰? アンタ達? って、お兄ちゃんとお母さんじゃん! どうしてこんなところに!?」
まさかのビキニアーマー被りで出てきたのは我が妹エビチリだった。 親子共々ビキニアーマーをチョイスするのは血なのか? 俺にも流れているから認めたくないが多分血筋だろう。
「お前が敵国で行方不明になったから迎えにきたんだよ、さっさと転移魔法で帰るぞ?」
「ちょっと待って! 私どうしてもやんないといけない事があってさ…… このトカゲとこの国のキモ王族をぶっ飛ばすって約束しちゃったんだよね?」
「勝手な約束をするなよ…… 穏便に済まそうと思ったのになんでそんな面倒な事になったんだよ?」
「仕方ないじゃん、だって私が『ドッチデモエーヤンはニンゲンッテイーナに勝ったからお前らウチに歯向かったらどうなるかわかってんのか?』って言ったら向こうのキモブタ帝王が『つまり君はボクチンのお妃になりたいって事だね? いいよ、ドッチデモエーヤンと協定を結ぶ代わりに結婚をしたいというなら結婚するよ、ブヘヘ!』って言ってきたからぶん殴ってきたら追いかけられてお母さんが助けに来たと思ったらはぐれちゃってさ…… でもって刺客に追いかけられてるうちにトカゲ共に絡まれて全員ボコボコにしたら『どうか我ら一族を率いてリザードマンを差別する今の帝王を打倒してください』って頼まれちゃってさ? 私もムカつくからOKしたらコイツら滅茶苦茶弱くてさ、でもお兄ちゃんとお母さんが来てくれたからこれで帝王を倒せるよ! もちろん手伝ってくれるよね、お兄ちゃん?」
「わかった! ここの帝王倒してさっさと家に帰るぞ!」
「いや、妹に甘すぎるだろ…… しっかりしろ、チーギュウ様!」
昔から甘えてくる妹に弱い俺は妹に言い寄るここの帝王に激しい殺意を抱くと帝王の抹殺に意欲を燃やすのであった。 とはいえ無策で突っ込むわけにもいかないのでリザードマン達に事情を説明すると協力してくれる事になった。
「我々リザードマンとしてはエビチリ様のご家族が協力してくれるとありがたいです。 勝手に襲い掛かった非礼を許して下さる上に帝王を倒す事に協力してくれるとは何とお礼をしていいのか分かりませぬ。 どんな事でもご協力しましょう!」
「そうだな、帝王の趣味とか油断しそうなタイミングとかって分かるか?」
「そうですね、今の帝王は女漁りが趣味で毎月自分の後宮に入れる為に美人コンテストを開いてますね。 この隙を狙って我らがマドンナに潜入してもらって暗殺するのはどうでしょうか?」
「でも帝王は人っぽい魔族が好きだからリザードマンは興味無いんじゃない?」
「そうなんですよ! 獣人やサキュバスはいいのになんでリザードマンはダメなんだ! 隣村のラミア族は美人を連れていかれるのに…… 悔しいですよ!」
まさか、リザードマン差別って村一番の美人が後宮に入れないひがみなのか? そりゃ、分かるよ帝王の気持ちは。 だってお前らトカゲじゃん、二足歩行のトカゲで雑魚だもん、そりゃ選ばれないよ。
「そこで我々の代わりに軍団長や、軍団長のお母様に潜入してもらうというのはどうでしょうか?」
「ゲッ、私はパスしたいかな…… だってあの帝王ゲロキモくて嫌だもん、アリスが代わりに行ってよ?」
「私も嫌ですよ、ですが命令とあればやりましょう。 軍人として上の命令は絶対ですからね。」
「えぇ~、こんなおばさんでも役に立つのかしら? でもやるからにはおばさん張り切っちゃおうかしら? な~んてね?」
「おぉ、ありがたい! では美人コンテストに潜入して隙あらば暗殺しましょう! これで村は滅茶苦茶重い年貢を払わなくて済むぞ! あの帝王、我々にだけ美人を輩出できない罪とかいって重い税金を取ってるから大変なんですよ!」
動機はともかく帝王は取り除かれるべき人間らしいが肝心の潜入作戦は母上以外乗り気ではないらしい。 ここは俺も協力してリザードマン達に助け船を出すべきだろう。
「なぁ、エビチリ。 お前の軽い口約束でリザードマン達に迷惑をかけたんだから最後まで付き合ってあげないと可哀そうだろ? それに下々の民の為に動けって兄ちゃんいつも言ってるだろ?」
「うぅ~…… 分かったわよ! やればいいんでしょ、やれば! トカゲの皆との約束ぐらいキチンと守るわよ!」
「それとアリス、悪いが潜入してくれ。 これは命令だが潜入している間だけは母上やエビチリを護衛してやってくれ。 これを頼めるのは危険な任務を難なくこなせるお前しかいなんだ、やってくれるな?」
「そんなに褒められなくてもやりますよ、任務ですから。 ただし貴方以外に媚びるのだけはゴメンですからね? 私のマスターはチーギュウ様ただ一人ですから……」
「それと母上、たとえ帝王のお眼鏡に適わなくても決して魔法で会場を吹っ飛ばしたりとかはしないでくださいね? マジで国際問題に発展するかもしれないのでダメだったらさっさと帰ってきてくださいね?」
「チーギュウさんがここまで私に意見を言うなんて…… すっかり成長したのね…… 分かりました、母は帝王にババアって言われても怒らないわ!」
これでようやく全員潜入してくれる気になったぞ…… 不安要素はたくさんあるが後はどうやって女狂いの帝王を除いて話が分かる奴がトップに収まってくれるように仕向けるか、この国の先進国入りをこんな作戦に委ねてしまって申し訳ない、国民の皆。 でも今より絶対いい統治してやるから許してくれ!
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