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ブサメンとビキニアーマー

  母と妹を探しに敵国であるマルカジリ帝国に潜入した俺とアリスは情報を収集するためにギルドへ向かう。 治安の悪い地方のギルドなのでならず者がたむろする危険地帯なので当然のように見かけない顔にはちょっかいを出してくる奴がいる。


「おい、オメェ見かけねぇ顔だが冒険者登録しに来た新入りか? 新入りはまず登録より先輩全員の靴を舐めるのが習わしなんだよ、オジサンが見てあげるからやってみな?」


「雑魚が噛みつく相手を間違えるなよ? チーギュウ様、コイツの首を即刻胴体から切り離してもよろしいでしょうか?」


 アリスが剣を抜くとギルドにいたならず者も剣や得物を抜いて険悪なムードになるが俺はアリスを制してならず者に手をかざして風魔法で得物だけを吹き飛ばす。


「これで力の差が分かっただろ、俺はこのお尋ね者を追ってきた賞金稼ぎだ。 なにか知ってる者がいたら金貨一枚で情報を買おう、ただし嘘や罠だった場合は容赦なく殺す。」


「え、得物を一瞬で吹き飛ばした…… しかも無詠唱魔法でだと……!?」


「コイツは腕の立つ賞金稼ぎだ、野郎ども何してやがる! 殺されたくなかったら情報を持ってくるんだよ!」


 なんか勘違いされてるがこれで情報が向こうからやって来るだろう。 ギルドで気長に待っていると一人の少年がこちらに近づく。


「オイラこのおばさん知ってるよ。」


「そうか、何処に行った?」


「そこまでは教えられないな、おばさんの居場所まで案内してやるから俺を雇ってくれよ!」


「お前が役に立つとは思えないが道案内として雇ってやるよ。 坊主の名前はなんていうんだ?」


「オイラ、オシンコってんだ。 職業は盗賊で錠前破りに関しちゃここら辺の大人よりは上手いぜ? よろしくな、オッサン!」


「俺はオッサンじゃない、まだ若い。 それに俺の名はチーギュウ、そしてこっちがアリス。 オシンコ、早速だが道案内頼む。 無事に俺達がたどり着いたら金貨をやろう。」


「交渉成立だな、じゃあついて来いよ!」


 オシンコに先導してもらってギルドを出て、街の外に出ると街の近くだがそこそこ大きなダンジョンが見えてくる。


「この中に賞金首のおばさんが隠れてるけどここのダンジョンは罠だらけで探知魔法で探索すると気が狂うほどの罠がかけられてんだ。 だから入るにはオイラみたいな盗賊を雇わないといけないってわけ。 良かったらおばさんが見つかるまで案内してやってもいいぜ? 今なら成功報酬金貨三枚の前払い金貨一枚でいいぜ?」


「しっかりしてやがる…… ほらよ、金貨一枚だ。 だけど俺を騙したらどうなるか分かるな?」


「分かってるよ、ギルドで見た魔法を見たら誰もオッサンには勝てるわけないって思うさ。 じゃあオイラの後ろを歩いて指示に従ってくれよな。」


 金貨を受け取ったオシンコは俺達にダンジョンを案内する。 途中で止まって罠が解除できるまで待ったり、盗掘用の横穴を通ったりとエキサイティングな体験をしてやっとダンジョンの深層まで潜ってきた。


「オッサン、着いたぜ。 ここがおばさんの居場所な? おばさーん! 賞金稼ぎだ、コイツもやっつけちまってくれよ!」


「なっ、お前騙しやがったな! それにしてもやっつけるって…… 誰が誰を?」


 オシンコが暗がりに逃げると逃げた先から人影が現れる。 手には髑髏の杖、身体はビキニアーマーを着こんだ仮面の女魔術師といったところか、俺は身構えながら様子を見ると女は俺を見るなり仮面を外して話しかける。


「チーギュウ、チーギュウではありませんか? しかし貴方はニンゲッテイーナに向かっていた筈では?」


「母上! よくご無事で…… って何その恰好!? 恥ずかしくないんか?」


「王妃様!? え、そのまぁ…… 年齢の割にはお似合いですよ。」


「これは追手から逃れるための変装で仕方なく着ているのですよ! あまりジロジロ見ないで頂戴!」


「え、知り合いだったの? オイラてっきりまた賞金稼ぎだと思って倒すように言っちゃったよ。 ゴメン!」


 ともかく母上が無事でよかった、格好はともかく母上に事のいきさつを説明してもらう。


「しかし母上、母上はエビチリと一緒に逃亡している筈では?」


「そうなのよ、私はエビチリがマルカジリに捕まったと聞いていてもたってもいられずに転移魔法でこっちに来てから王宮に突撃してエビチリを助け出したのはいいんだけど……」


「大方逃げてる最中にはぐれて帰るに帰れなくなってこうやって身を潜めてたってわけか…… 考えも無しに突っ込むからこういう事になるのでは?」


「ひどい! 母はエビチリが心配で心配で…… 今もどこの馬の骨ともしれない男共にいかがわしい事をされてないか心配で心配で…… とにかく心配でしょうがないのよ!」


「その割にはノリノリでビキニアーマー着てるじゃん、とりあえず今はエビチリを助ける為にまた別の街に行くけど母上も来る?」


「モチのロンです、元はといえば私がはぐれてしまったからこういう事になってしまったので責任はきっちり取ります!」


 こうしてビキニアーマーの実母と合流した俺達は妹を探しに新たな街へと旅立つのであった。 っと思った矢先に俺達の入ってきた方向からギルドであったならず者達が現れる。


「お前の後をつけて正解だったぜ、小僧。 賞金首と敵国の貴族が一緒に網にかかってくれてるじゃねぇか! こいつらをギルドに突き出せば一生遊んで暮らせるぜ!」


「しまった、アイツらオイラをつけてたのか…… オイラとしたことがつい気が緩んでたぜ、すまねぇオッサン、おばさん!」


 盗賊はオシンコの後をつけていたおかげでギルドで会った頃と変わらず大勢でこちらを囲んでいる。 絶体絶命かと思われていたが母上が杖を構える。


「オシンコさん、心配しないで頂戴。 このような輩は私の魔法で何とかなります、あと私の事はおばさんじゃなくてセクシー大魔術師エビマヨお姉様と呼びなさいと言っているでしょう!」


「ババぁ! その齢でお姉さんは無理だろ! 全く賞金首と聞いてどんな奴かと思えば似合ってないビキニアーマー着てはしゃいでるババアだったとはな! 楽しめそうもないからそっちの不愛想な女で楽しもうぜ皆!」


 ならず者達が満場一致で母上じゃなくてアリスに興味を持ったのが気にくわないのかババア呼ばわりが相当堪えたのだろう、怒りを通り越してゴミを見るような目で母上が魔法を放つ。


「風魔法バハムート・ブレス! 雷魔法トール・ハンマー! 炎魔法イフリート・フレイム! 土魔法トレント・ウィップ! 水魔法リヴァイアサン・プレス! 五行相剋カオス・パニッシャー!」


「ぎゃぁぁぁぁぁっ!? 強すぎるぞこのババア、皆退却だー!」


「逃がすか、痴れ者がっ! 重力魔法グラビトン・チェイン! 貴方達がババア発言を撤回するまで重力を強めていきますよ?」


「ひぃぃぃぃっ! 許してくださいビキニアーマーの似合うピチピチのおねぇさん!」


「許しましょう、皆怒ってしまってごめんなさいね? 回復魔法かけてあげるから一列に並びなさい?」


 大方壊滅したならず者集団がひれ伏しながら許しを乞うと聖女のような微笑みで全てを許す母上、それを見て大体の人間は二度と母上の事をババアとは言えなくなるだろう。 俺も被害者の一人だ。 俺は母上と一緒にならず者達を回復しながら聞き込みを続けていくと有力な情報を手に入れる。


「そういえばよ、南のリザードマンの村にすげぇ強い剣士が来て村の長に収まったって聞いたがもしかしてアンタらの仲間か?」


「なんだって? 確かにウチの妹は魔法はからっきしだが剣においては王国一と言われる剣聖の元で修行していたからな、そいつかもしれない! ありがとうな!」


「でしたら南へ行きましょう、王妃様はビキニアーマー着たままでいいですよ! 南は暑いですからね!」


「やったー! って、私は別に気に入っているわけじゃなくて着ていたドレスがボロボロになったから偶々ダンジョンで見つけた装備を着たら呪われて脱げなくなっただけです!」


「母上…… 解呪の魔法は覚えてるでしょ…… まぁいい、次は南のリザードマンの村に行くぞ!」


「待ってくれよ! オイラも連れてってくれよ! リザードマンの村にはブービートラップがあるからオイラ解除してみたいんだよ! 金は要らないから経験させてくれよ!」


「しょうがねぇなぁ、いいぞ! それじゃ皆でリザードマンの村に行くぞ!」


 こうして俺達は南のリザードマンの村へ向かう事にした。 妹よ、待っててくれ。 今、母上と迎えにいくけどビックリしないでくれ。 母上は割とノリノリでビキニアーマーを着ているし身内のビキニアーマーは見ていて辛い。

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