スキル【不運】がバレて追放された
「アッシュ、あなたをこのギルド『幸運の女神 』から追放するわ。よくも【不運】スキルのこと、隠していたわね」
ギルドマスターのゼティアが、オレに鑑定石を突きつけて言った。
「そんなスキル持ちだと知っていたら、最初からギルドに参入させなかった」
副マスターの重戦士ワイアールも重々しくうなづいて、俺の追放に同意した。
「おかしいと思ったのよ。アンタが入ってからのダンジョン探索は、モンスターハウスに当たる確率が高すぎた」
斥候のエクシアがじろりとオレを睨む。彼女もオレの追放に同意した。
「待ってくれ、確かにオレのスキルは【不運】だが、これはこのギルドのダンジョン探索に役立ってるんだ」
「何が役に立つだ! この前の探索で階層ボスがヒドラの希少種だったのも、お前のスキルのせいだったんだろ! あれでダブラは左手が激毒に侵されて、治癒が間に合わなければ切り落としていたかもしれないんだぞ!」
「確かに階層ボスが激レア枠の希少種だったのはオレのスキルが影響したからだ。しかし、ギルドマスターのゼティアの【過剰幸運】スキルで相殺されて、最悪の事態は免れるわけだし…」
「お前もゼティアの幸運のおこぼれ狙いかよ」
剣士のヴィータスに吐き捨てられた。
「しかも、自分の不幸を黙って私達に押し付けてたなんて、サイテー」
普段温厚な治癒士のユーリカもこんなに怒るなんて…。
「オレたちは駆け出しの頃から共に鍛えてきた仲間じゃないか。黙っていたのは悪かったが…」
「確かに、傭兵上がりのあなたの戦闘指導は、駆け出しのギルドメンバーの戦闘力を鍛えてくれたわ。でも、もう私達は戦闘で遅れをとることは無いし、私達が危険な戦闘に巻き込まれていたのはあなたのスキルのせいだった。仲間の安全の為に、出ていってちょうだい」
オレはさらに謝罪をして、このスキルの有用性を説明しようとしたが、ギルドメンバーはそれ以上オレの話を聞いてくれなかった。
「傭兵上がりなんだから、またそっちに戻ればいいだろ? 」
「人殺しに慣れてるから、仲間を危険に巻き込むスキルを隠して平然としてられたんですね」
「人でなし。戦争屋なんてこの幸運に恵まれたギルドにふさわしく無いのよ」
メンバーに口々に罵られて、オレはギルドハウスを追い出された。
確かに、スキルを黙ってギルドに入ったのはオレが悪かった。最初から説明すべきだった。
だが、スキルの恩恵を受けたことがないメンバーが、この字面の悪いスキルを受け入れてくれると、オレは信じきれなかった。スキルの恩恵でギルドが大きくなり、みんなで金持ちになってから、説明したかった。
だが結局、ギルドが最強の名声を得た今になるまで黙っていたから、このザマだ。
自分達の戦闘力で希少種やモンスターハウスをクリアできるようになったメンバーは、ダンジョン探索士としてここまでになれたのは、自分達の戦闘力のおかげとしか思ってくれなかった。
最初に信じて全てを伝えられなかったオレの自業自得か。オレは苦い後悔を抱えて、そのまま街を出た。
その後、流れた先の街の酒場で、オレは元いたギルドの噂を聞いた。
一時は変異種や希少種の高額モンスター素材を山のように持ち帰っていたギルド『幸運の女神』は、ある時から、ダンジョンに探索に入っても、ほとんどモンスターに遭遇せず、強制的に遭う階層ボスですら、一番よく出る低ランクモンスターのみになったそうだ。
そんな状態では、せっかく鍛えた戦闘力も役に立たず、わずかばかりの低ランク素材だけではダンジョン探索ギルドとしては運営がなりたたなくなり、あっという間に借金まみれになったそうだ。今ではダンジョンを離れ、戦乱の続く中原諸国で借金を返す為に傭兵になったらしい。
ゼティアの【過剰幸運】スキルがあれば、仲間は過剰に幸運で守られるから、死ぬことなく戦場を生き残れるだろう。早く借金を返せるといいな、とオレは心の中で祈っておいた。
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