雪の日
仕事を終えて外に出ると、雪が降っていた。たまには私も創作者の端くれらしく、降り積もる雪という情景をセンチメンタルな文章を用いて表現でもしてみようかと思ったのも束の間、駐輪場に停めていた愛車の姿を見たことで全てがどうでもよくなった。前カゴやハンドル、サドルを、それなりの量の雪が白く染め上げている。色白の美女であれば諸手を挙げて大喜びすることだろうが、そこにいたのは色白のママチャリであった。私は無心で、持っていたタオルで雪を払い除ける。
帰路に就く私の目に映るいつもの風景は、満遍なく白に染め上げられていた。さながら空から粉砂糖をまぶされたかのようだった。甘い物を好んで食べる者からすればそれは理想的なのかもしれないが、今の私には、布製のマスクを湿らせる存在でしかなかった。マスクで覆えない顔の上半分を、勢いのある雪が襲う。すれ違った小学生が、雪の中を大はしゃぎで駆けて行った。積雪で舞い上がれた年齢はいつ頃終わったのだったか。今はただ、帰りの足に影響する雪をほんのりと憎んでいる。子供の心をすっかりと忘れてしまった自分に若干の嫌気を差しながら、私は自転車のペダルを漕ぎ進める。
吹き荒ぶ雪が私の目の中にさらなる特攻を仕掛け、それがまぶたの裏で溶けた。おかげで目の周りは水浸しだ。決して、寒さと切なさによって溢れ出た涙ではないだろう。




