オートカーが飛んで行った先
「ごめんね。大丈夫? エイト」
オートカーの運航が安定したところで、アイフォが心配そうに覗き込んでくる。
「……あ、ああ。……Grand-systemに、こんな機能があるなんて……」
「物理事象は空間情報が構成してるわ。周囲の空間情報に少し干渉すれば、物理現象で出来ない事はほとんどない。ただGrand-systemの管理者権限がないと機能しないけれど……」
???!! 一瞬理解が追いつかない。なんだか突然ものすごい事を聞いた気がする。
アイフォは、ふと口を噤んだ。そして、ゆっくり、言葉をおとす。
「あの事故は、私のせいなの」
「……貨物船が〔分解〕した、やつか」
「さっきの銃撃の人達。逃げた先の貨物船が発艦して、光学迷彩でも逃げ場が無くなって……私の持っている管理者権限を、あの人達に取られる訳にはいかなかった」
事故現場を見せられ、原因解明にむけて遠回しに誘導尋問されても、本当になにも知らないように見せていた彼女が、簡単に口を開いていた。
かくれんぼ的な可愛いものじゃなかったな。
「私のDNAアカウントは、Admin。お父さんと一緒に、1年後から本格運用されるsystemの運用補正も担ってるの。ごまかしてて、ごめんね」
「いや……」
こんなに簡単に話をしてくれる、ということは。
「エイト君。俺の可愛いアイフォと一緒に、世界を助けるつもりはないか?」
イオウス=グラディウスの、すっげぇ良い笑顔。
もう、笑うしかない。
「運転手でよければ」
「人類の未来へ、船を導け。若者よ」
ギュンとオートカーが加速する。後部座席に押し付けられて、アイフォが抗議の声をあげていた。
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Android-system open
地球連邦 3th衛星大陸
災害救助艦 イージスNo.09 宇宙災害部隊 外作業特殊要員
クロウ=シュライサー
29歳 出身:USA自治区 血液型:O型
超能力現象について
目撃情報多数あり・記録映像なし・医療関連機関に記録なし
特色:《牽引》
・触れずに物質を引き寄せる
・一定の距離まで近づいて集中する必要あり
同艦乗務員に同じ能力者の情報なし
報告先『研究所』:地球連邦政府 中央機関 宇宙科学情報研究所
政府機関からの反応なし
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「ここまでが、犯罪にならない範囲で確認した情報だ。こうしてみると『研究所』とやらで情報が途絶しているな。ふざけていると思っているのか、わざとなのか」
そういう白衣の青年は、イオウスとそっくりだ。いや、ひとまわり若い。
猫耳がその黒髪をふわりと飾り、白衣の下で黒い尻尾がゆらゆらと左右に揺れる。
「本当にこれしか情報無かったの? お兄ちゃんの情報力ならもうちょっと何かありそうなんだけど」
「まじでこれだけだ。それ自体が、不自然だと思うんだが、どうよ」
「そういわれると、わざと情報を遮断してるとしか聞こえないんだけど?」
黒い猫耳尻尾と、白い翼の天使。
この兄妹、並んで喋ってると、見た目がやばい。
アスワド=カープ。アイフォの兄で、イオウス=グラディウスの長子だそうだ。
研究員らしい同じ白衣に、可愛い系の顔立ちの兄妹。
……この世の天国か。
「systemの外にある情報は、開示して貰うしかない。無理にアクセスすればG社が連邦政府に喧嘩を売ることになる。いま社長が情報開示を打診してる所なのに、それを邪魔はできないだろ? まぁ、簡単に開示するとは思ってないけど」
「こちらからも関係者に確認しておきましょう」
座れと言われたゲーミングチェアの背もたれに肩を埋めて、2人を見上げる。
航行免許があっても、あのイオウスの危険運転には流石に酔った。
まさかあのまま郊外の公道までぶっ飛ばすとは……。




