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【完結】竜の翼と風の王国  作者: 藤夜
本編

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8/27

8 風の国の王2

誰かが私を抱き抱えてくれている。

誰?

何度か瞬きを繰り返した後、ぼやけていた目の焦点がようやく合って、私は助けてくれた人の顔を見ることができた。


(っきゃぁー!!!)

目の前に美青年のドアップ。

ぶったまげた私はもう少しで彼の顔をはり倒すところだった。

そうしないですんだのは、まだ貧血の余韻を引きずっていたからだ。

ううっ、私ってば免疫がないから………


「怪我もしていないし、どうやら大丈夫のようだな」

うっすら笑みを浮かべて私を立たせる。


「あ、ありがとう」

私はクラクラする頭でなんとかお礼を言った。

うーむ、なんちゅう男前だ。こりゃあアルファさんに負けず劣らずだな。

綺麗な黒の短髪で、孔雀石色マラカイトグリーンの瞳。

ちょっとこっちの方が線が太くてがっしりしているが、長身で均整がとれているから細身に見えるくらい。

アルファさんが優美な感じなのに対して、精悍な感じと言えばいいのかな。


気がつくと、魔鳥たちは幾人もの武装した男達によって追い払われていく。

凄い。人よりずっと大きいのに、怯むことなく斬りつけている。怖くないのかな。

そのうちの一人が懐から丸い玉のようなものを取り出して、鳥たちに向かって投げつけた。

するとそれは地面にぶつかって破裂し、盛大に白い煙を噴き出した。


なぜだか鳥たちはその煙にひどくおののいた様子を見せ、男達は動きの鈍ったそれらにいっそう激しく斬りつける。

敵わないと思ったのか、とうとう魔鳥たちは逃げていった。

よかったー。ふーっとため息と共に全身から力が抜けた。


「ルーラ様」

リューンの声がして、小走りで駆け寄ってくる彼の姿が見えた。

彼はいくつか浅い怪我をしていたけれど、なんとか無事のようだった。

でもなんだか様子がおかしい。

すごく驚いているような、怒っているような………


「陛下!何故このようなところに?」


『陛下』?なにそれ。

私の頭の上にクエスチョンマークが三つほど浮かぶ。

リューンの視線をたどると、私が抱きついている人にぶち当たった。

ーーーするってーと、この人は………

私の頭からスーッと音をたてて血が引いていった。


「もしかしてっ、ビスラの王様ぁーっ?」

そんな人に私ってば抱きついていたの?

ズササッと後じさった私を王様は不思議そうに見る。

その手を伸ばして私の腕を掴んだ。


「何故逃げる?」

ひょええええーっ!おそれおおい。

私は根っから庶民なの。触んないでよ、固まっちゃうじゃない。


けれども、王様は私の腕を掴んだまま、リューンに向かって頷く。


「リューン、遅くなったな」

王様はどことなく厳しい顔つきで言った。



    ***



「また襲われたですって!」

宿中に轟かんばかりの大声でリューンが怒鳴る。

いまにもかぶりつかんばかりの形相だ。


「またって、お前………」

王様はリューンの迫力に押されてタジタジの様子だ。

もう外は夜。

私達は化け物を追い払ったということで、街で一番大きい宿に歓迎されていた。

料理もなかなかで、お腹の満足した私としては、このまま部屋に行って寝たいくらいなのだがそうはいかない。

食堂を人払いしてもらって話している。


「聞きましたよ。怪我して寝込んでいたんじゃないんですか?もしやとは思っていましたが、どうして来るんです!」

リューンは完全に説教モードに入っちゃって、どっちが年上かわかんない。


「あんなのはかすり傷だ。傷のうちにも入らん」

「そうやって軽く見ているから後で困るんですよ。いつもいつも、軽々しく出かけていっては怪我をして帰ってくるんですから。あなた方も、どうして陛下の無茶を止められないんですか!」

矛先を向けられた男の人達も申し訳なさそうにうつむいている。


「そう責めるな。城にいようと外にいようと、もう変わらぬのだ」

唇の端にわずかな苦笑いをのせる。


「とうとう王宮まで………」

リューンが息を飲んだ。


「では、ゼリーネ様は?ご無事なんでしょうか」

「母上は大丈夫だ。後宮の警護はかたい。俺のかわりに政務をとってくれている」

「あのー」

私はおそるおそる口を挟んだ。

いまいち私には話が見えないんだけどね。


「ああ、すいません、ルーラ様。ご紹介がまだでしたね」

そう言ってリューンは王様を示した。


「こちらの方が我々のビスラ国王、レンディルム・イル・ビスラ陛下です。陛下、こちらが風の乙女のルーラ様です」

王様は無表情で頷く。


「では、これがルジェンの娘か」

私はちょっとムッとした。

コレ呼ばわりしたな。私は物じゃないぞ。


「ルーラ様、少々事態が切迫してきているようです。急がなくてはなりません」

「どうしたの?」

「ビスラの王宮にまで魔物が現れるようになったのです。王宮は太古の精霊の護りの最も強い場所に建っているのですが、それすらも魔物に蹂躙されるとは………」

リューンの肩が小さくふるえている。よっぽどショックだったんだ。


「早く精霊の守護を取り戻さねば。国が魔物に飲まれてしまえば終わりだ」

王様の言葉は重い。


「ええ」

リューンがため息をつく。


「ねえ、飲まれちゃったらどうなるの?」

こちらの事情を知らない私としては、ごくごく素朴な疑問だと思うんだけど、王様はめちゃくちゃ冷たい視線をくれた。


「おまえ馬鹿か?」

おのれ………一瞬頭に血が上りかけたけど、我慢我慢。相手は国王陛下だ、命の恩人だ。

可愛いリューンが代わりに説明してくれる。


「ビスラは魔物の巣となり、人の存在しない土地になってしまいます。下手をすればワルファラーン全土が危険にさらされてしまう。それだけは絶対にさけなければ」

魔物………あんな化け物ばかりになってしまうの?この国の人たち、どうするんだろう。他の国に逃げるんだろうか。

王様が周囲の従者の人達を見渡す。総勢九人。

比較的みんな若い。

彼らは王様の近衛の騎士なのだそうだ。


「ここから都までは馬でも五日。明日の朝にはここをたとうと思う」

騎士達は真剣な面持ちで頷いた。


「リューン殿」

一人の騎士が私をチラリと見て、リューンに話しかける。


「あの、本当にこの方が風の乙女なのでしょうか?」

「?」

リューンが首を傾げる。


「風の乙女はいかなる地においても精霊の守護を得、その身には常に風を纏うと聞いております。が、おそれながら拝見したところそのような兆しは………」

この人は私が化け物に襲われた時のことを言っているのかな。

確かに、私死にかけたけど、一体なに?その恥ずかしいイメージ。

ところがリューンはたじろぐことなく、にっこり笑って答えた。


「大袈裟な噂が流れているようですね。風の乙女も人であることには変わりありません。精霊との結びつきは強いかもしれませんが、それでもルーンが使えなければ風を操ることは出来ません。ルーラ様は残念なことに異世界で育たれたため、まだ精霊と対話するすべを知らないのです」

騎士達は互いに顔を見合わせている。どことなく嫌な感じ。

なんだかなー、どうも私が彼らの思っていたのと、だいぶん違っていたんで戸惑っているよーだ。

悪かったな、期待してたのと違ってて。


「間違いないのだな」

王様の問いにリューンはしっかり頷いた。


「はい、それに彼女は背に翼を持っています」

「翼っ?」

王様が信じられないというような目で私を凝視する。

その目つきがあんまり鋭かったので、私は小さく身震いした。

ちょっと怖いわよ、あんた。


「この特徴もない平凡な者にか?」

むむむっ、平凡で悪かったな!

なんなのよ、こいつ!いくら王様だからって、この態度どーにかなんないの?ルイリーン陛下と大違い!


「とはいえ、本当にこんな小娘に鏡を元に戻せるのか?あまり信用できんが」

さすがにこれにはカチンときた。

スーッと大きく息を吸う。


「やーめた!リューン、私帰る!アルファさんのところへ連れてって」

リューンがギョッとして私を振り返った。


「ルーラ様、何を………」

「信用できないんでしょ?だから帰るの。私を家に帰して。それで他をあたるのね」

「そんな」

「私はねえ、どうすりゃいいかなんて知らないし、出来るかどうかだってわからないのに、ほとんど勝手にこっちへ連れてきておいてその態度は何?それが人にモノを頼む態度なの?」

冗談じゃないわ。

王様は私が怒っている理由がわからないのか、キョトンとしている。


「なんだ、この娘は」

その言葉を聞いた時、私はキレた。




やっとヒーロー登場です。

長かったです。

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