表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】竜の翼と風の王国  作者: 藤夜
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/27

3 幽霊

その日の夜、私は那智と一緒に学校の側のコンビニに来た。

私たちが着いた時、蓮と颯太はすでに来ていて、チキンを食べながら待っていた。


「よ、早速行こうか」

二人と合流してすぐそばの公園へ向かう。

 

怪談のスポットには到底見えない。

まだ空はほのかに明るくて、車も多いし、帰宅途中だろうか、スーツ姿のオジサンとかも歩いている。

郊外とは言え、昼間は結構賑やかな所だ。

近くにマンションがたち並んでおり、小さな子がよく遊んでいる。

 

「ねえ、本当に出るの?」

「目撃者が結構多いんだよ。十人や二十人じゃないってさ」

ふーん、じゃあ信憑性はあるのね。


「見間違いじゃないの?『正体見たり枯れ尾花』ってやつ」

那智が疑わしい、と言って空を見る。まだ何も出てこない。

 

私はなんとなく辺りを見渡した。

マンションの部屋にポツポツと明かりが灯っている。

まだ人が帰っていないのか暗いままの部屋もあって、外から見ると白と黒のモザイクみたい。

視線を移すと黒い空が見えた。

今日は星が見えない。

雲が広がっているんだなあ。

 

空に風が吹き抜けて、電線がヒューヒュー鳴っている。

公園の木もざわざわと大きく枝を揺らしていた。

 

「風が強いね」

「涼しくていいんじゃない?」

「ねえ、何時ごろ出るとかないの?」

「夜としか書いてなかったよ」

いつになるかわかんないのか。つまんない。

コンビニに並んでいた花火の袋を思い出したけど、花火してるわけにもいかないしねえ。

 

けれど、幸か不幸か、私達はそう待たずにすんだ。

ほんの十五分か二十分、それくらい経った頃、突然それは現れた。

 

「出た!」

颯太が叫んだ。指さす方向に蓮がスマホを向ける。

ふわり、空を横切る白い影。ちょうどマンションの五階くらいの高さ。あれはなんだ?

 

「ちょっと、マジ?」

さすがの那智も驚いている。

影は大きい。人の形をしている。けれど何もない夜の空に浮かんでいる。

ふいっと幽霊が私達の方を振り返った、そんな気がした。

 

「!」

二つの小さな金色の光。

それが私の目とあった。

ドキリとする。あれは幽霊の目?幽霊の目ってあんな猫みたいに光るんだろうか。

でも、不思議に綺麗な光だ。

 

影はこちらに気がついたのか、みるみる遠ざかってゆく。

 

「追いかけろ!」

公園の外までしばらく走ったけど、もうどこにも幽霊の姿はなかった。

 

「すっげ、本物?」

「動画撮れたか?」

「多分撮れた」

まだ自分が見たものが信じられない。

 

「あれなんだったんだろう」

「本当に幽霊?」

 

なんだか風がいっそう強くなった気がする。

半袖の腕が肌寒く感じた。もう七月なのに。

風が轟々と木々を唸らせている。髪がバサバサに吹き乱された。

空が怖いくらいに暗い。

夜だから暗いんじゃない。

雲が厚く覆い、月も星も一粒の光も閉ざしてしまっている。

 

その時、訳もなく不安が私の胸に広がった。

何かがずれている気がする。小さな違和感。日常が非日常になったような感覚。

その時、突如すさまじい突風が私達を襲った。

 

「うわぁっ!」

身体が吹き飛ばされそうな強い風。

木の葉が巻き上げられ、私達の腕や脚に叩きつけられる。

顔を庇う両手に、細かな砂粒が痛いほど吹き付ける。

 

「危ない!」

吹き荒れる風と埃で息をするのも苦しい。

 

変だ。この風は意志を持っている。

耳の奥で虫の羽音のような耳鳴りがする。

何か言っているような気がするのは、本当に気のせいだろうか。

風が私を包み込むように吹き上げる。優しく、そして激しく。

 

その時聞こえたのだ。

 

(目覚めよ)

風の唸りが。

そして、嵐のような風は消え、嘘のように静かになった。

 

「何だったんだ、あの風」

「帰ろっか」

那智がきく。

 

「うん、風強いし」

「早く帰ろう」

すっかり興奮も冷めて、私達は早々に帰る事にした。

 

ーーーそして、翌朝、私は彼に出会い、旅立ったのだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ