24 エピローグ
「な、な、ルーラ、あれはなんだ?あの店で売っているの」
「あれ?アイスクリームだよ。欲しい?」
「うんうん!」
「ルイリーン、はしたないですよ。すいません、ルーラ様」
アイスクリームのダブルを買って、ルイリーン陛下に渡す。他のみんなにも、それぞれ好きなものを選んでもらった。
「私も楽しいからいいの」
なんだかんだ言っても、アルファさんはルイリーン陛下には弱いんだ。
めでたく帰ってきた私は、私の世界をみんなに案内中だ。
リューンとアルファさんのお陰で、やっとこさ家に帰ることができたのだ。
結局私は一ヶ月以上行方不明になってしまったのだけど、幸い学校はあれから間もなく夏休みだったから、特に問題にはならなかった。
けれど、旅行から帰ったら私はいない、いくら待っても帰ってこないので、パパとママはとても心配していて、警察にも届けていたようだ。那智もすごく心配して、蓮も颯太も一緒に探してくれていたみたい。
ごめんね、ありがとう。うるうる。
でも、アルファさんが精霊の魔力で記憶を操作したらしく、私がいなかった事をみんなすっかり忘れてしまっている。
神官って凄いわ。
リューンは以前、精霊の呪文では人をどうこうできないって言っていたはずだから、アルファさんが特別なのかもしれない。あの人、人じゃないかもしれない謎の人だから。
私がこちらの世界に戻ってくるのは、鏡が二つ揃ってもとても大変だったらしい。
まず、アルファさんがリューンの導きで、イスターラヤーナの水鏡をビスラの神殿に移転させた。
私が一回飛んでるのもあるらしいけど、ビスラの神殿が一番あっちの世界に繋がりやすかったらしい。
それから二人で水と風、ふたつの鏡を共鳴させ、その波動を合わせて力を増幅し、なんと、次元を結ぶでっかい穴を作ったのだ。
その間、約三日。二人は二晩まるまる徹夜だった。
本当にご苦労様です。
そんなこんなでやっと帰れたのだが、神官達の他に無理やりくっついてきたのが二人の国王陛下。
あんた達、自分とこの国ほっぽらかしといていいの?
レンディルム陛下が私の袖をクンクンと引く。
「あの鉄の箱はなんだ?馬も牛もくっついていないのに、ものすごい速さで走っているぞ」
「あれは自動車。ガソリンっていう燃料とエンジンっていう機械で走る乗り物」
「うおっ、空を巨大な鳥が!」
「飛行機だよ。あれも乗り物」
うーむ、ちょっと恥ずかしいかも………
「陛下、頼みますから、もっと静かに驚いてください」
リューンも頬を染めている。
「悪い、珍しいものばかりなんで」
それもそうだ。向こうの世界は科学面ではずっと歴史が浅いから。
石油とかあるのかな?
陛下も男の人だから機械系には興味が湧くんだろう。
「なあ、あの服可愛い」
ルイリーン陛下の方はやっぱり女の子だ。ショーウィンドウの中の洋服に惹かれている。
んー、さっきから視線を感じるのは気のせいじゃないな。
向こうで女の子達が、こっちをちらちら見ながら囁き合っている。
気がつけば、すれ違う人みんな、立ち止まって振り返っている。
中には口を開けて見惚れている人もいた。
やっぱり目立つんだな。
金髪超美形のアルファさんに、これまた精悍高貴なレンディルム陛下、リューンもしっかり可愛い美少年。妖精のように愛らしいルイリーン陛下。
目立つわ。目立ちまくっている。
おまけに私だけ浮いてるんじゃなかろうか?
みんな並の美形じゃないんだもの。るるるー。
「どうかしたか?」
レンディルム陛下が私の顔を覗き込む。
ああ、ハンサムなお顔。
まだ信じられないな。この人が私を好きだなんて言ったこと、夢だったんじゃなかろうか。
「ねえ、戴冠式はどうするの?」
私が尋ねると、レンディルム陛下は腕を組んで唸った。
「神官の長がいないから、風鏡に誰が映っているのかがわからぬのだ」
「お血筋的にはルーラ様が長になるのが妥当なのですが………」
「私はイヤだよ。リューンがんばれ!」
「ええっ?僕ですか?」
ルイリーン陛下がアイスにかぶりつきながら言う。
「いいんじゃないのか?王はこのままお前がやれば。鏡にはどうせレンしか映ってないさ」
アルファさんも笑みを浮かべて頷いている。
「ビスラの民はそもそも陛下以外の王は戴かないと主張しているようですし」
そう、レンディルム陛下は国民にとても信頼されている。
さまざまなものを犠牲にしてまで、もとの国を取り戻した人だから。
今ではその功績を讃えて、英雄王って呼ばれている。
きっと、風も認めるだろう。
「戴冠式には呼んでくれる?」
おそるおそる尋ねると、みんなは当然!と口々に答える。
「何を言っているんだ。国の恩人を呼ばずしてどうする」
「そうですよ。ルーラ様のおかげなんですから」
「ルーラ、そんなこと心配していたのか?」
「ルイリーンも私も、お二人にお祝いを言うためにうかがうつもりですよ」
「うん、ありがとう」
嬉しいな。とっても嬉しい。
レンディルム陛下が近寄ってきて、私の耳元で囁いた。
「その時には、返事を聞かせてくれるよな」
「………!」
ぱっと彼を見ると、悪戯っぽく笑っている。
けれど、目は本気だった。くらくらするほど魅力的。
「何の話だ?」
カーッと赤くなった私を、ルイリーン陛下が不思議そうに見る。
「内緒!」
ブルブルブルッと首を振る。
「ずるいぞ」
「二人だけで何か怪しいですね」
「あははははっ」
笑って誤魔化しちゃえ。
まあ、何はともあれ、一件落着だ。
ようやく完結です。
最後までお付き合いくださりありがとうございました。
面白かったと思っていただけたら幸いです。
姉妹作の黒銀の狼と男装の騎士の連載に戻ります。
そちらも読んでいただけたらと思っています。
また次の物語も読んでいただけたら嬉しいです。




