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 ゆっくりと、水面が近づいてくる。

 薄紅色の膜が水面に触れると、ちゃぷんと音がした。

 「では、潜りますよ」

 コッコメット先生の言葉に、生徒たちは少しだけ身を寄せ合った。

 安全だとわかってはいても、怖いのだ。

 クレイもやはり、怖かった。

 「ね、ねえ、メーラ。手をつないでも良い?」

 「えー……ジャミンに繋いでもらえよ。そのほうが安心だろう?」

 「いいわよ、ほら」

 ジャミンは快く、手を差し出してくれた。

 クレイは「ありがとう」と言って、ジャミンの手を握る。ひんやりと冷たくて驚いた。

 「人間って体温高いのね」

 ジャミンもジャミンで、クレイの体温の高さに驚いたようだ。

 「お前も繋いでもらえば?」

 メーラがジャムにそう言った。ジャムはメーラのローブの裾を握りしめていた。

 ジャミンが手を差し出すと、「ううう、お願いします」と言って、手を握った。

 クレイたちを乗せた薄紅色の膜は、ゆっくりと水の中に潜っていく。先生の言った通り、水が入ってくることは無く、冷たさも感じない。息もちゃんとできる。

 ただ、足の下がどうなっているのかがはっきりと見えないせいで、余計な恐怖を感じてしまう。

 「ちょっと、あんたたち、痛いわよ!もう少し優しく握りなさいよ!」

 ジャミンにそう叫ばれて、クレイは自分がジャミンの手を力を込めて握りしめている事に気付いた。ジャムも同じようだった。

 「ご、ごめん!」

 力を緩めるが、手を離せはしなかった。そんなことしたら、怖すぎる。

 もうすぐ、頭の上まで水が来てしまう。

 「ほら、足元見てみなさいよ。ちゃんと砂地が見えるでしょう?」

 ジャミンにそう言われ、目を凝らすと、確かに、足元がはっきりと見え始めた。

 さらさらとした砂が、一面に堆積している。所々に岩があり、水草のようなものも見えた。

 砂地はすぐそこだった。もうすぐ、足がつく。

 「え?もう着いたの?」

 あまりに早い到着に、クレイは驚く。

 「いいえ、まだですよ。今いるところは、浅い部分です。ここから、もっと深い所に潜ります」

 コッコメット先生が、そう答えてくれた。

 砂地に足がつくと、生徒たちからほっとしたようなため息が漏れた。

 暗いと聞いていたが、薄暗い程度だ。見あげると、水面はすぐ手が届きそうなところにあった。いつも見降ろしている水面が、頭上にあるのはすごく変な感じだ。太陽の光に照らされて、キラキラ光っているのはいつもとおんなじだった。

 陸の上では、太陽を見上げれば、目を刺すような光を感じるが、水の中ではそれが無かった。優しい光だ。

 薄暗い水の中には、怖いものは何もなかった。

 足元に感じる砂地は、柔らかかったし、揺れる水草は柔らかそうで、この場所が穏やかである証拠のように見えた。

 目の前を小さな魚が横切る。

 「綺麗だねー」

 サマーン君の声がした。

 のんびりとしたその声を聞いて、クレイの不安は随分小さくなった。

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