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 太陽が紅くなる頃、オレ達はマーリークサークルに着いた。

 「おお、もう、集まってきているな」

 前回と同様、湖に飛び込み、天地の逆転から体勢を引き戻すと、ステアが嬉しそうに言った。

 見ると、空のあちこちに、箒に乗って、地上を目指している人たちがいる。

 「あ、あれ、ジャンポールさんだわ。ご挨拶してくるわね」

 メイヤーがそう言って、右の空を飛んでいる一団の方へと向かった。

 前方に固まって飛んでいる集団の一人がこちらを振り向き、手を振っている。

 「あれは、クリエさんご一家だな。私の古い知り合いだ」

 そう言って、タロルが手を振り返す。

 箒に乗って空を飛んでいる者がほとんどだが、中には馬車を飛ばしている一団もいた。

 「あれって、ペガサスか?」

 馬車を引いているのは、翼を持つ馬だった。

 「ああ、そのようだな。たぶん、理事の一人だろうな。入学式の来賓だろう。クレイ、ちゃんと前を見ないと危ないぞ」

 「す、すみません、師匠」

 クレイは右にずれていた進路を、元に戻す。しかし、周りにいる魔法使いたちに興味津々のようで、気が付けばフラフラしている。

 オレは箒を操る必要が無いので、気兼ねなく魔法使いたちの飛行を見学した。

 どの一団にも、子供が一人必ずいる。親や年上のきょうだい達に守られるようにして、空を飛んでいた。

 オレのように、二人乗りしている者もいる。

 「全員、新入生ってわけじゃないよな?」

 「そうだな。今日は入学式でもあり、新学期の始まりの日でもある。学校の子供たちが休暇から戻って来ているのだ。送り届けるだけの親も多いだろう」

 「マーリークサークルへは、皆、空を飛んでくるのか?」

 「いいや、空を飛べない者もいるからな。そんな人たちのために、バスや船を学校側が用意している。あ、ほら、湖に浮かんでいるだろう。あれに乗って来るんだ」

 湖の岸に、大きな船が留っていた。

 ふと、遠くに光の輪が現れ、そこからかなり大きな乗り物が出てきた。

 「あれがバスだ」

 赤い車体で、窓から子供や大人がこちらを見て手を振っている。

 バスは地上へと下りるために、円を描きながら降下していく。

 「わあ!わあ!すごいなあ!」

 クレイはさっきから興奮しっぱなしだ。 

 「おい、本当に落ちるぞ」

 箒から大きく身を乗り出すものだから、メーラにまでそう言われている。

 「こんなに沢山の魔法使いがいるなんて、びっくりだ!」

 「こんなの、魔界全土から見たら、ほんの一部だぞ」

 「はー……そうなんだ……」

 クレイは、呆然と呟いた。

 「お前も今日から、魔界の魔法使いの仲間入りだぞ」

 ステアにそう言われ、クレイは満面の笑顔で頷いた。

 「はい!」

 

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