28
太陽が紅くなる頃、オレ達はマーリークサークルに着いた。
「おお、もう、集まってきているな」
前回と同様、湖に飛び込み、天地の逆転から体勢を引き戻すと、ステアが嬉しそうに言った。
見ると、空のあちこちに、箒に乗って、地上を目指している人たちがいる。
「あ、あれ、ジャンポールさんだわ。ご挨拶してくるわね」
メイヤーがそう言って、右の空を飛んでいる一団の方へと向かった。
前方に固まって飛んでいる集団の一人がこちらを振り向き、手を振っている。
「あれは、クリエさんご一家だな。私の古い知り合いだ」
そう言って、タロルが手を振り返す。
箒に乗って空を飛んでいる者がほとんどだが、中には馬車を飛ばしている一団もいた。
「あれって、ペガサスか?」
馬車を引いているのは、翼を持つ馬だった。
「ああ、そのようだな。たぶん、理事の一人だろうな。入学式の来賓だろう。クレイ、ちゃんと前を見ないと危ないぞ」
「す、すみません、師匠」
クレイは右にずれていた進路を、元に戻す。しかし、周りにいる魔法使いたちに興味津々のようで、気が付けばフラフラしている。
オレは箒を操る必要が無いので、気兼ねなく魔法使いたちの飛行を見学した。
どの一団にも、子供が一人必ずいる。親や年上のきょうだい達に守られるようにして、空を飛んでいた。
オレのように、二人乗りしている者もいる。
「全員、新入生ってわけじゃないよな?」
「そうだな。今日は入学式でもあり、新学期の始まりの日でもある。学校の子供たちが休暇から戻って来ているのだ。送り届けるだけの親も多いだろう」
「マーリークサークルへは、皆、空を飛んでくるのか?」
「いいや、空を飛べない者もいるからな。そんな人たちのために、バスや船を学校側が用意している。あ、ほら、湖に浮かんでいるだろう。あれに乗って来るんだ」
湖の岸に、大きな船が留っていた。
ふと、遠くに光の輪が現れ、そこからかなり大きな乗り物が出てきた。
「あれがバスだ」
赤い車体で、窓から子供や大人がこちらを見て手を振っている。
バスは地上へと下りるために、円を描きながら降下していく。
「わあ!わあ!すごいなあ!」
クレイはさっきから興奮しっぱなしだ。
「おい、本当に落ちるぞ」
箒から大きく身を乗り出すものだから、メーラにまでそう言われている。
「こんなに沢山の魔法使いがいるなんて、びっくりだ!」
「こんなの、魔界全土から見たら、ほんの一部だぞ」
「はー……そうなんだ……」
クレイは、呆然と呟いた。
「お前も今日から、魔界の魔法使いの仲間入りだぞ」
ステアにそう言われ、クレイは満面の笑顔で頷いた。
「はい!」