表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/77

25

 クレイは話を終えると、「散歩してきます」と言って、食堂を出て行った。

 「…………アレでよかったのだろうか?」

 ステアが難しい声でそう呟いた。

 見ると、腕組みをして難しい顔をしていた。

 「授業料の事か?良いも悪いも無いだろう。クレイにはその道しかない。学校に通うのならな」

 「いいや!私の財産に頼るという手がある。こんな子供のうちに、借金を背負わせるような形にしてしまうなんて……」

 ステアは渋面顔でうなる。

 「しかし、クレイは絶対に、ただ頼るなんてことしないだろうし……」

 「よくわかってんじゃねえか。まあ、確かになあ……成人もしてないのに、1000万ドールの借金とか……ちょっと考えられねえな……でも、あいつ、頑固だからなあ……」

 子供は大人に頼れ、などと言っても、クレイは絶対に納得しないだろう。生活でお金が必要になると、クレイは細かいところまで知りたがる。税金はその必要性や使い道まで聞きたがるし、市場へ行けば野菜の値段の変動に敏感だ。しかも、大人顔負けに値切りだす。

 お金で苦労してきたクレイは、お金の使い方に厳しい。はやく自分でお金を稼ぎ、ステアに頼り切りでいたくないと考えていることが、ひしひしと伝わって来る。

 ただ、さっきのステアの質問に答えられなかったところを見ると、そのやり方までは考えきれていないようだ。

 オレとステアが一緒に唸っていると、メーラが口を開いた。

 「オレも、授業料返す?」

 母親のメイヤーに聞いていた。

 「うーん……私も返してほしいとは思っていないわね。でも、将来、独立してほしいとは思っているわ。私とお父さんに何かあった時、頼りにできる大人になって欲しい。魔法の面でも、お金の面でも、精神の面でもね」

 「……わかった」

 「本当にわかったの?」

 「うーん……」

 メイヤーはにっこりと微笑み、目を泳がせている息子を見る。

 「誰かを助けるには、それなりの力が必要だわ。あなたはまだ非力。誰かに助けてもらう側だわ。助けてもらったら、それを忘れないようにしなさい。自分も誰かを助けられるようにね」

 「……わかった。それはできる」

 メーラは素直に頷いた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ