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クレイは話を終えると、「散歩してきます」と言って、食堂を出て行った。
「…………アレでよかったのだろうか?」
ステアが難しい声でそう呟いた。
見ると、腕組みをして難しい顔をしていた。
「授業料の事か?良いも悪いも無いだろう。クレイにはその道しかない。学校に通うのならな」
「いいや!私の財産に頼るという手がある。こんな子供のうちに、借金を背負わせるような形にしてしまうなんて……」
ステアは渋面顔でうなる。
「しかし、クレイは絶対に、ただ頼るなんてことしないだろうし……」
「よくわかってんじゃねえか。まあ、確かになあ……成人もしてないのに、1000万ドールの借金とか……ちょっと考えられねえな……でも、あいつ、頑固だからなあ……」
子供は大人に頼れ、などと言っても、クレイは絶対に納得しないだろう。生活でお金が必要になると、クレイは細かいところまで知りたがる。税金はその必要性や使い道まで聞きたがるし、市場へ行けば野菜の値段の変動に敏感だ。しかも、大人顔負けに値切りだす。
お金で苦労してきたクレイは、お金の使い方に厳しい。はやく自分でお金を稼ぎ、ステアに頼り切りでいたくないと考えていることが、ひしひしと伝わって来る。
ただ、さっきのステアの質問に答えられなかったところを見ると、そのやり方までは考えきれていないようだ。
オレとステアが一緒に唸っていると、メーラが口を開いた。
「オレも、授業料返す?」
母親のメイヤーに聞いていた。
「うーん……私も返してほしいとは思っていないわね。でも、将来、独立してほしいとは思っているわ。私とお父さんに何かあった時、頼りにできる大人になって欲しい。魔法の面でも、お金の面でも、精神の面でもね」
「……わかった」
「本当にわかったの?」
「うーん……」
メイヤーはにっこりと微笑み、目を泳がせている息子を見る。
「誰かを助けるには、それなりの力が必要だわ。あなたはまだ非力。誰かに助けてもらう側だわ。助けてもらったら、それを忘れないようにしなさい。自分も誰かを助けられるようにね」
「……わかった。それはできる」
メーラは素直に頷いた。