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プロローグ、あるいはエピローグ

軽率に性癖

 白一色の部屋には、ベット程度しか目立つ家具は置いていなかった。


 すぐ隣の窓からは、もう二度とそこに立つことは叶わない、青天の公園が見える。


 相も変わらず、長ったらしい名前の病に蝕まれた内臓は絶えず悲鳴をあげていたが、それを僅かな痛みとして受け流すことに慣れるくらいには、この欠陥品の体とは長い付き合いだった。


 部屋には僕一人しか居ない。恐らく今日明日で最後(・・)との事だったので、僕がこうなるように取り計らってもらったのだ。


 一人で死ぬのは寂しくないのか、だなんて空々しいセリフを吐く身内に、意識が消える直前まで不快感を頂く必要は無いだろう。最後くらい、感傷に浸らせて欲しい。



「......綺麗だなぁ」



 今日は異分子警報も欠片も聞こえないし、公園には人が溢れかえっている。ビルは青天の日差しを跳ね返して、昼間の町中をイルミネーションにしていた。


 僕自身としては昼なんて大っ嫌いだったのだけど、成程一人になってみると分かった。あくまで僕は静かな光景が好きなのであって、それを堪能出来る時間というのが夜しか無かった。それだけのことらしい。


 もっと早く気付いておけばなという気持ちと、最後に気付けて良かったなという気持ちが半々で湧き上がってくるが、それも含めてまぁ悪くない日だ。


 窓に触れる。病弱なせいで血色に恵まれたことがついぞなかった肌が、僅かに反射して写った。


 面倒臭がって切らなかったせいで、性別にそぐわず長くなった髪。線の細い身体。異分子になったかのような歪な色を放つ瞳も、室内に篭っていたせいで腐りきった性根も...........全部引っ括めて大嫌いな僕自身も。


 今日だけは、特別で。



「次に目覚める時は、飛びっきりの悪夢でありますように」



 全部から逃げ出してしまう憎ったらしい僕の身体に悪態をひとつ吐き出して、重くて仕方なかった瞳を閉じた。











































 それが、最後の記憶。


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