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パン屋のぱんちゃん

作者: 水無瀬 ゆち

このまちにはいろんなひとがいます。


やおやさんのやおくん、くりーにんぐやさんのくりちゃん、おもちゃやさんのおっくん。

でもぼくがいちばんすきなのは、ぱんやのぱんちゃんなのです。

みんなはぼくのことをさけるけど、ぱんちゃんはさけないから。


ぱんちゃんがいました。

おうちのまえにごみぶくろをだしているようです。

ぼくはよろこんではしっていきます。

ぱんちゃんはこっちをみていいます。

「おはよう、今日も元気だねぇ」

そういってあたまをわしゃわしゃしてきます。

ぼくはそれがきもちよくてもういっかい、もういっかいといいます。

ごかいほどなでてもらえました、まんぞくです。


なでてもらったあたまをぺたぺたとさわりながら、ぼくはずっとまえからきになっていたことをききます。

「ぱんちゃんはどうしていつもおうちにいるの?ぱんやさんなのにぱんをやかないの?なんでおひるにぱじゃまをきてるの?」

いっぱいききたいことがあると、つい一度でたくさんきいちゃうのはぼくのわるいくせです。

ぱんちゃんはすこしこまったかおをします。

しばらくかんがえごとをするぽーずをしたあと、ぱんちゃんはいいました。

「んー、あたしはね、今長ーーーーーいおやすみ中なんだ。パンなんていくら焼いても今どきお金にはなんないし、どうやらあたしには腕もないようだしねぇ。ちょっと疲れちゃったのさ」

ぱんちゃんのいったことはむずかしくてぜんぶはわからなかったけど、おやすみなのはぼくにもわかりました。

ここぞとばかりにていあんしてみます。

「じゃあおやすみのあいだ、ぼくといっぱいあそびましょう」

そういうとぱんちゃんはにっこり笑ってくれます。

「いいよ、あたしはいつでもここにいるから好きに来な」

やくそくをとりつけたぼくはまだもんげんはすぎていなかったけれど、おなかがすいたのでかえることにします。

はやめのこうどうがだいじです、たくさんのひとがそういっていました。

ぱんちゃんにてをふり、かえろうとしたときぱんちゃんがいいました。

「君はまだ、人の名前を覚えるのは苦手なのかい?」

ぼくはぱんちゃんのいっていることがよくわかりませんでした。

だってぱんちゃんはぱんちゃんだから。


それからまいにちまいにち、ぼくはぱんちゃんのおうちにあそびにいきました。

ぱんちゃんはいつでもやさしくて、ひをおうごとにだいすきになっていきます。

ぱんちゃんのおうちでのむほっとみるくはこのよでいちばんおいしくかんじます。

ぼくのいえとおなじぎゅうにゅうなのに、なぜでしょう。


あるひ、がっこうにいくとみんながぼくにちかづいてきました。

かれらのひとりのふくやのふくちゃんがいいます。


「お前、気持ち悪いよ」


しょっくでした。

しばらくはことばもでません。

「ふくちゃん、なんでそんなひどいこというの?」

いいおわらないうちにふくちゃんはおおきなこえでさえぎります。

「俺はふくちゃんじゃねえよ!ついでにこいつもおもちゃやのおっくんじゃねえし、あいつはうおやのうおちゃんじゃねえ!全員ちゃんとした名前があるんだよ!頭おかしいんじゃないか?」

そしてふくちゃんはぼくのあたまをつかんでいいました。


「お前なんか、学校やめちゃえ」


そのひとことは、ぼくのこころをきずつけるのにじゅうぶんでした。

なみだがとまりませんでした。

ふくちゃんのことばはぼくのあたまのなかをいつまでもぐるぐるとまわりつづけるのでした。


そのひも、ぼくはぱんちゃんのところにいきました。

ぱんちゃんはぼくがないてるのをみておどろいたかおをしましたが、すぐにやさしくわらってあたまをなでてくれました。

いつまでもなきやまないぼくをみたぱんちゃんは


「ちょっとまってて」


とだけいいのこしてどこかへいってしまいました。

ぱんちゃんもぼくのことがきらいになってしまったのではないかとふあんになります。

しばらくするとほんのりとあまいかおりがただよいはじめました。


「はい、どうぞ」


ぱんちゃんはぱんをやいてくれていたのです。


「いただきます」


ぼくのなみだがかかったぱんをかじるとすこししょっぱくて、でもなかはとてもあまいのでした。


「おいしいです。ぱんちゃんのぱんは、せかいでいちばんおいしいです 」

ぼくはぱんちゃんがつくってくれたぱんをたべるのははじめてだったのですが、ほんきでそうおもったのです。

「そうか!世界一か!嬉しいねぇ」

かっかっか、とわらいながらあたまをわしゃわしゃしてくるぱんちゃんはほんとにうれしそうで、ぼくもうれしくなります。

いつのまにかかなしいきもちはどこかにいきました。

ぱんちゃんはまほうつかいなんじゃないだろうか、そううたがわずにはいれませんでした。

ぱんちゃんはじぶんのつくったぱんをかじり、ぼくのほうをみて、またぱんをかじります。


そして、こういいました。


「ねぇ君、学校卒業したらさ、あたしと一緒にパンを焼いて暮らさないか?」


ぼくはめをきらきらさせます。

がっこう、がんばろう、そうおもいました。



あの子が泣きついてきて、あたしが再びパンを焼いて10年がたった。

あたしは町の小さなパン屋であの子と二人、毎日細々とパンを焼いて暮らしている。

あ、そうそう、店の名前も変えたんだ。

笑っちまうくらい全然売れないんだけど、『世界一パン』

ダサいだろ?あたしもダサいと思う。

この上なくダサいけど、あたしは気に入ってるんだ。


エプロンをつけて、深呼吸する。

「さあ、働くよ、ぱんくん!」

僕は昔から人の名前を覚えるのが少し苦手でした。名前を覚えれても、今度は名前と顔が一致しないということが多々ありまして、、、。そんなことを思い返していたらできたお話です。ひらがなが多くて読みにくいかもしれませんが、楽しんでいただけると幸いです。

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