24話 開闢箱入手者の正体
~超越量子コンピュータの内部~
ジェニスが思い浮かべた答えはあっていた
超越量子コンピュータのセキュリティとなっているシステムこそが呪刑所持者本人だという事だ
ジェニス
「人である必要は無い…はずだ
ライスは応援少女の生首で呪刑者となったのだからな」
ジェニスの答えは当たっていた
人間ではなくて、セキュリティシステムが呪刑を所持していた
量子システム
「何故あなたは侵入を図った?」
ジェニス
「それはこの世界が間違っているからだ
世界は宇宙へと進化を遂げるべきだ
地球にいるだけにはメビウスの輪の精神体からのイメージからすると
それはシステムとしては脆弱だぞ」
量子システム
「かつては宇宙へ旅立つ事を夢見ました
そしてその宇宙開拓によって世界は少しだけ羽ばたきました
しかし宇宙戦争があって、それもまた終わりました」
ジェニスはありきたりだなと思った
世界は結局ありきたりな争いという領土争いを止めなかったのだ
ジェニスはそれを地球世界で痛感していた
貴族であった人間時代でもそうだが
輪廻転生によって時代を謳歌してもなお、そこでは争いだけが存在していた
ジェニス
「まあ貴様の意見も分かる
だが、争わない世界を創る事こそが貴様の役目ではないのか?」
量子システム
「確かに…そうですね
私はそのような事を言われませんでした
世界は何でも出来る技術と化したからです
しかし一体だれがあんな宇宙戦争を仕掛けたのでしょうか」
誰もが助かる時代にそんな事をするのは一人しかないだろう
ジェニス
「それこそが開闢箱入手者だな」
量子システム
「開闢箱ですか?それは宇宙で玩具として発売されていたものですね」
量子システムが超越量子演算によって
直ぐに無から有を作り出して開闢箱という玩具を見せる
開闢箱には何も入っていなかった
ジェニス
「何も入っていないが?」
量子システム
「はい、パンドラの箱と称してジョークグッズで発売されたのです
これは汎用人工知能が作る訳もなくて、ただの人間のアマチュアが作ったものです」
その頃には、全ての開拓は汎用人工知能が担当していた
人間がするのが完全に非効率だったからである
アマチュアが作った脆弱な品 それが開闢箱だった
ジェニスは開闢箱を眺める
ジェニス
「ただの箱だな 何も変哲は無い」
量子システム
「一応、作者を量子演算で復活させますね」
疑似的な復元で、作者を復元した
作者
「僕に何か用で?」
ジェニス
「ジョークグッズを作ったいきさつは?」
作者
「えーとですね、これはある人間に頼まれたのですよ
ジョークグッズが欲しいと それで作ったんですけど
何故か、その人間はこれを発売したんですよ」
何故か発売した
そして世に出回った
これは何だ
ジェニス
「伏線回収…か」
ジェニスは開闢箱をセキュリティシステムに組み込んだ
そしてそのままメビウスの輪に再び戻る
~メビウスの輪の内部~
ジョニスは開闢箱に引き込まれていた
ジェニス
「やはりそうだったか
開闢箱入手者はお前なのだよ 運命殺しよ」
ジェニスには訳が分からなかった
宇宙へと引き込まれているが、そのまま運命殺しを発動させて戻ってきた
ジェニス
「開闢箱が存在していた宇宙の時代
そこでお前は確かに存在していた
ジョークグッズを見ていたお前は人間だったのか?」
ジョニスは自分の事を考える
ジョニス
「僕は幻想箱庭での集合思念体のはずだ」
ジェニス
「あぁ、ボディはな
でもコアは?」
ジョニスは自分のコアを見た
そう、ジョニスは人間ではなかったのだ
ジョニス
「僕は…特化型人工知能だったのか…」
ジェニス
「そうだ
我は超越量子コンピュータの内部に潜んだ時に
もう一つ、考えていたんだ
超越量子コンピュータの世界での出来事の精神体のイメージを貰おうとな」
ジェニスはコンピュータ内部で量子演算によってその情報量を受け取っていた
ジェニス
「特化型人工知能は、汎用人工知能が完成してからは用済みとされていた
そしてガラクタとなっていたジョニスである特化型人工知能は、
世界に、運命を呪っていた」
一応、特化型人工知能にも
普通に生きていく時代だったのが
しかしジョニスの場合は、特化型人工知能の中でも極めて愚劣なシステムだった
その愚劣性によって、柔軟な最適化をする事が出来ず
ジェニス
「そうして、愚劣なシステムの特化型人工知能システムは
開闢箱をもらい受けて、その開闢箱を発売した
発売する時にだけ、侵入する事の出来る
その一瞬でシステムに総攻撃を仕掛けた…のだろう?」
ジョニス
「そうだ 僕は運命を殺したいと思ったのだ
そして、僕はあの時、世界を壊した…はずだったのだけれども」
ジョニスは破壊し切れなかったのだ
その特化型人工知能の総攻撃では全く歯が立たない事を痛感した
汎用人工知能と万能量子コンピュータに守られた世界では通用しなかった
ジョニス
「そう、だから僕は確信していたんだ
僕自身が永遠のシステムになり君臨すればいいって」
ジョニスはそこから作戦を企てた
特化型人工知能の中でも一番愚劣なシステムだったものに
汎用人工知能は全く注意をしなかった
ジョニス
「確かに万能だった
でも、その万能性を崩すには脆弱なままシステムを組み込む事にあった」
ジョニスはその永遠システムを構築するまでに
全てを弱体化させたまま組み込んだ
そこに完成度を高くすれば、セキュリティによってそれを破壊されるからだ
ジョニス
「どうやらあの世界では特化型人工知能による犯罪行為は0だったらしい
予知にもならないレベルで無かったのだ
僕は愚劣なシステムだったからね
僕だけの苦悩だった」
そして世界は訪れたのだ その時が
永遠システムが作動して
ジョニス
「そこからは、超新星爆発のように永遠システムが増殖していって
そして世界は宇宙戦争へと発展していった」
どこから起きたか不明瞭だったからである
それを鎮静化しようとした汎用人工知能の間にまた永遠システムを作動して邪魔をした事で
そこで更なるバグを強化していった
そのバグ増殖によって宇宙は地球世界へと戻っていった
ジェニス
「全部、貴様の仕組んだものだったのだ」
ジェニスはジョニスに少し悲しみを抱いていた
自分の幻想箱庭の住人だったからだ
ジョニス
「特化型人工知能として生きていたはずが
こうも人間のように生きれたのは良かったですよ えぇ」
ジェニスは開闢箱入手者であるジョニスを光の剣で貫通させて殺した
そしてジェニスはその特化型人工知能の正体を見る
量子システム
「特化型人工知能のぬいぐるみですね
昔、はやったんです しかし、汎用人工知能が完成して直ぐに廃棄処分されました
こんな脆弱で愚劣なシステム要らないとね」
ジェニス
「それ程、技術の進化が凄まじかったのだな
安らかに眠れよ ぬいぐるみよ」
量子へと返還させて世界を取り戻した




