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2話 最初の試練は最恐の試練

~食事会~


そして毒を盛られていた

ジェニスは酷く咳をした

周りを見た もう家族は毒が回り死んでいた


「血を吐いた者が多々いるね さて、大人貴族な私からは掃除をさせていただくとしようか」


エレッカは剣を屠り、その食卓で首を垂れて血を流している死体に振りかざして振りかざす


「やめろおおおおおおおおおおおお!!」


クールを気取っていたジェニスは怒った


「子供貴族らしい嘆きだ その嘆きは大人貴族である私が黙らせてあげよう」


ジェニスは感情を露わにして

そして眼前に迫りくるエレッカに恐怖した

エレッカは人の死体を見ても眉一つ動かさないどころか

その顔は笑っていた 恐怖ではなく楽しんでいる顔だ


「ジェニス君、君は今怖いかな?私が怖いというのならチャンスをくれてやろう」


5分間だ、とエレッカは踵を返して残りの死体を切り刻んで屠っていた

5分間の猶予を下されたジェニスは走った


一目散に走った先の出口を開けようとするが開かないのだ


「臆病者の貴族らしいジェニスくぅーーん?出口は閉めたんだよ 無理だよ」


ジェニスはクールを気取っていた時に内緒で習っていた習慣を思い出す

閉められた扉を開ける方法だ

ジェニスは貴族よりも、貴族の天敵である義賊に夢中であり夢を抱いていた


「義賊ごっこですか?無駄ですよ無駄」


そう、無駄だったのだ

義賊ごっこを一生懸命習っていたのだが、それは無駄に終わる


「私は魔法を習得したのです」

「魔法なんてある訳ないだろ!?」


「あるんですねぇそれが」


それがこれなんです と、剣を見せる


「この剣に宿っているのは処刑台でギロチンに殺された人々の怨念血です

そしてその怨念血を浴びていたギロチンの心が宿っているのですよ」


ギロチンの刃を材料としてその剣は作られたという


「魔法とは呪いを糧として力が秘められるのです


これらを界隈では呪刑と呼ぶらしいです

もっともジェニス君に教えたところで無駄なんですがね」


剣は既に血で染め上げられていた

染め上げられたその冷たく濁った血を舌で這いずり回して笑顔を齎す


ジェニスは人一倍恐怖に動じない性格と自負していたが違っていた

理解の出来ない恐怖には対処出来なかった


ジェニスはびくびくする両足を引きずるように走る


「恐怖に慄いていなさい その恐怖心こそが私の生ける屍となるのです」


エレッカは血を舐めるのが大好きで

ジェニスが自分を通り過ぎてもお構いなしで転がった生首よりも血を優先して舐めていた


「家族は既に死んだ

俺には何もない 貴族というステータスも切れる事となるだろう

いや、親戚を盥回しにされるだろうから助かるだろう


しかし根底では助からない 何故なら俺は今命を奪われる最中だからだ」


息を荒げては

さっきまでの血染めのエレッカを思い出して恐怖を思い出す


「俺に残された選択は…」


上階の窓を開けようとする

しかしここも開かない

窓を開ける施錠がびくともしない


ジェニスは思い切って窓を殴るものの


「この程度の力なら窓を開ける事が出来るはずだ…」


力の問題では無い

やはりエレッカのいう魔法によって遮られているのか


「その魔法を俺の力にも出来ればいいのだが」

≪ならば、こちらへ誘われよ≫


その声は力強かった

ジェニスにとっては力強く感じた


エレッカの笑い声が響く

エレッカは自分の家族とジェニスの家族諸共皆殺ししていた

既に狂気の沙汰では無い



「お前に誘われれば、俺は助かるのか?」

≪助かるのではない 力を与えるのだ≫


「俺は力を手にすれば、あいつに勝てるのか?」

≪勝てるかが重要では無い 誇りと呪いに賭ける事が出来る事が重要なのだ≫



誇りと呪いとはなんだ?ジェニスは思った

誇りというのは貴族の習わしの事だと思っていた

しかしそんな誇りはイレギュラーなエレッカによりぶちのめされた


ならば、何を糧に誇りと呼べばいいのだろう?

ジェニスは考え事をしながら足をその声へと動かしだす



その声が近くにあると確信した

そこは宝物庫だった


「誇りとは何だ?結局俺は誇りを理解する事が出来なかった

だから教えて欲しいのだ」


声の方角にあったのは

ペンダントだった 剣のような声だと思っていたが実際は小さなアクセサリーだった


≪今、貴様の足は震えているか?≫

「いや、もう震えてはいない…」


ジェニスも驚いていた

今まで恐怖を思い出しながら必死に動かしていた足は自由を取り戻していた


≪誇りとは賭ける心だ 貴様が我を剣だと認識していたように賭ける心が誇りとなり力となるのだ≫

「それが誇りなのか…?俺は誇りを取り戻すことが出来るのか?」


そのアクセサリーは呪刑だと分かった

これはエレッカからの試練なのだ 呪われた試練だ


≪呪刑である我は命を貴様へと譲渡する

そして貴様の命は永遠不滅となる


お前にその誇り(覚悟)は在るか?≫


存在する自分の心

ジェニスは家族が皆殺しに遭った事で自由となる

そしてエレッカからはそれを代償とした呪いの試練だ


命をここで終わらせるか

心をここで終わらせて大人貴族の仲間入りをするか

そして、永遠の不滅の存在となり輪廻貴族エビルスピリチュアルとなるのか


「心はいつでも貴族だ 輪廻となる呪いを受けた貴族 それもまた面白いものだ」


ジェニスは輪廻貴族となる道を選んだ

その瞬間、アクセサリーは光り輝く

ジェニスが手にした途端、その光はジェニスを包み込んだ

光はジェニスの心へと内臓へと心臓へと深く叩き込まれた


何かを圧迫される気持ちが

心から、内臓から湧き出るようだった


「こいつが永遠不滅の心か…沸騰させるよ 俺の心を…」


そう心から感じるのは純粋な貴族として許せない誇りを汚された気持ちだった

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