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第057話 思慕の念

 感情なんてものは持っていないだろうが、ミニヨンたちが気の毒だ……。


 ピラミッド内から聞こえてくる何かが爆発したような音は、冒険者がミニヨンに向けて放った攻撃魔法の音だったのだ。

 ミニヨンから送られてきたメッセージには、その攻撃を受けた様子が記録されている動画が添付されていた。


 その動画は……

 女性冒険者パーティーが宝箱トラップに引っかかり、宝箱から溢れ出てきたGの大群に襲われて、冒険者たちが逃げ出すシーンから始まっていた。

 そう!第4階層で出てきたあの牙を持ったゴキブリのような虫型の魔物が宝箱の中からわらわらと溢れ出てきたのだ!



「う、うわぁっ!なにあれ!?じ、Gっ!」

「きゃぁっ!Gがいっぱい出てきましたよ!うわぁ~!!」


 俺と一緒に動画を見ていたハニーたちの顔は青ざめて引き攣っている。



 一人の冒険者が何かに躓いて転んでしまい、Gの大群に飲み込まれてしまう!

 ミニヨンがすかさず、麻痺レベルのフェイザー光線を発射して、Gの大群に飲み込まれてしまった冒険者ごと、彼女に群がっているGを一気に麻痺させる!


 ミニヨンが発射できるフェイザー光線は、ピント調節で光の太さを変えることができるのだが、その光の太さは最大にしてもせいぜい直径5cm程である。

 だからミニヨンは、昔のブラウン管テレビの電子銃のように、フェイザー光線で面を塗りつぶすかのように銃口を高速に左右に振りながら上から下へと移動させて女性と女性を覆っているGたちに照射したのだった!


 ミニヨンはものすごい速さでそれを行っているので人の目には残像で、あたかも一気に女性とGを覆うかのようにフェイザー光線が照射されたかのように見える。


 さすがはミニヨン!いい選択だ! なかなか優秀なAIを搭載しているなっ!



 他の冒険者たちが動かなくなったGの山をかき分けてその中から仲間を救出したのだが……すでに女性は酷い怪我をしている!?

 顔などの肌が露出していた部分には、骨が見えているところもあるっ!?



 その様子を見たミョリムとマルルカが卒倒してしまった!

 それを見てすぐ横にいたラヴィッスとヴォリル、ユリコが倒れてしまった二人を介抱する……。



 これは酷い怪我だ。放っておいてはすぐに死んでしまうな……。


 映像を見ながらそう思った時には既にミニヨンが女性に修復神術を施していた。

 女性の身体が、淡い緑色をした半透明な光のベールに一瞬だけ包み込まれると、骨が露出するほどの酷い怪我は一瞬で治ってしまった。


 いやぁ~、ホント、ミニヨンは優秀だなぁ!


 ところがここで問題が発生する!

 当初ミニヨンは、冒険者たちに見つからないようにと距離を取って、こっそりと彼女たちを見守っていたのだが……。

 さすがにフェイザー光線の照射と修復神術を施すためには彼女たちに近づかねばならなくなったのだ! しかし、そうすると当然冒険者に見つかることになる!


 女性冒険者のひとりが悲鳴を上げ、爆裂魔法をミニヨンに向けて放ち出す!

 すると攻撃魔法が使える他の冒険者たちも、いきなり攻撃を始めた彼女の様子を見て、ただ事じゃないと感じたのか、わけが分からないままも一緒にガンガン攻撃魔法を放ちだしたのだ!


 その攻撃音が先ほど聞こえた音の正体だったのだ。



 まあ……無理はないか。ミニヨンはぱっと見、目玉みたいだもんなぁ……。

 突然空中に目玉みたいな浮遊物体を見たとしたら、そりゃ、魔物が襲ってきたと勘違するわなぁ……だがなぁ~、彼女を助けたミニヨンがなんとなく不憫だなぁ。

 『ぼくは悪いミニヨンじゃないよ』とかしゃべらせるように改造した方が……いやいや却(かえ)って逆効果になるよな。あのスライムみたいだもんな。ダメだ。



 攻撃を受けたミニヨンはシールドを展開していたので彼女たちの攻撃で損傷することはなく、スッと亜空間に身を隠す……。


 亜空間へとそっと姿を隠すミニヨンの後ろ姿には、どことなく哀愁が漂っているように見えてしまった。思わずほろっとする。



 ミニヨンはもうそこにはいない。なのに、彼女たちはパニック状態だったのか、空中に浮かぶ"目玉型魔物"が消えたことを認識するまでに相当の時間を要し……

 その間、めったやたらに攻撃魔法をぶっ放し続けていたのだ!



 大丈夫だろうか?あんなに派手に魔法をぶっ放して。

 魔力を結構無駄遣いしてしまったようだし……それに、あの攻撃音が他の魔物を呼び寄せてしまわないか心配だなぁ。


 取り敢えずあの優秀なミニヨンが彼女たち冒険者パーティーの警護をしているんだから、まぁ大丈夫かな?


 しかし……このピラミッドの中にも虫がうじゃうじゃいるのか?嫌だなぁ。

 まあ、女性を凌辱する魔物はいないようだからまだましな方か……。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 ティータイムを終え、俺たちも取り敢えずピラミッドの中へと入ってみることにした。通路は狭いため、ほぼ一列縦隊になっている。

 先頭はオークドゥだ。彼自ら先頭を買って出たのだ。決して俺が頼んだわけではない。


 オークドゥはロングソードを鞘から抜いて、いつでも戦えるように身構えながら進んでいく……。


 俺の背中をツンツンと突っつく者がいる? それはマイミィだった。


「ん?どうした?」

「あのう……」


 彼女の話では……

 このピラミッド内の主な魔物は、マミーとも呼ばれるミイラ男じゃないかということだった。

 ここのダンジョンマスターがどこかの戦場から兵士たちの遺体を大量に調達して来たらしく、その大量の遺体すべてに包帯を巻き付けて魔物化したらしいのだ。


 魔物使いのマイミィとルディバインもそれを手伝わされたという。


 ゴブリン使いのマイミィは死体に包帯を巻き付ける作業をゴブリンたちにさせたのだが、サイクロプス使いのルディバインはぶうぶう文句をいいながら自らの手で死体に包帯を巻き付けていたらしい……。考えただけでゾッとする作業だ。


 なぜサイクロプスに包帯巻き作業をさせなかったのかというと、サイクロプスは身体が大きいので細かな手作業には向かなかったらしい。


 マイミィの話では少なくとも5000体のマミーがここにはいるとのことだ。


「それでですねぇ。マミーと戦うときには剣を使ってはダメです!なぜな……」

「上様!マミーが数十体こちらへと向かってきます!ただちに殲滅しますっ!

 マミーどもっ!覚悟しろっ!やーっ!」

「待てっ!オークドゥ!剣で攻撃しては……」


 ズバッ!ズバッ!ズバッ!ズバッ!ズバッ!

「うっ!?…………うぎゃぁぁぁぁっ!」


 オークドゥはいつものように一刀のもとにマミーたちを斬り捨てていったのだが数体を倒したときに彼は絶叫した!


「だから剣はダメだと言おうとしたのに……」

 魔物使いのマイミィがボソッと呟いた。


 なにが起こったかというと……

 オークドゥによって一刀のもとに斬り捨てられて両断されたマミーの身体から、正確にはその身体の両断された切り口からわらわらとものすごい数の虫が出てきて一斉にオークドゥに襲いかかったのだ!


 『うぎゃぁぁぁぁっ!』というのは虫たちに飛びかかられる寸前のオークドゥの口から発せられた絶叫だったのだ!


 まさか、大男のオークドゥから『うぎゃぁぁぁぁっ!』という絶叫が口をついて出るとは思ってもいなかったので、思わず失笑するところだった。

 笑いを堪(こら)えながら、オークドゥに集(たか)る虫たちをミニヨンに殲滅するように指示を出した。


 女性冒険者を助けたときとは違って、ミニヨンにはフェイザー銃の出力レベルを麻痺ではなく、レベル3に設定させることにした。虫たちを一瞬で蒸発させられる出力レベルだ。

 オークドゥはスーツを着ているし、極薄シールドも展開中だから少々の攻撃ではダメージを受けないから大丈夫だ……と思う。多分……。


 俺が命じたミニヨンも女性冒険者を助けたミニヨンと同じように面で攻撃した。 実際には高速に銃口を動かしているのだが、人の目には、あたかも面で照射したかのようにみえるのだ。


 オークドゥに集(たか)っていた虫たちの殲滅は一瞬で終了した!


 オークドゥはまるで腰を抜かしたように通路に座り込んでいる。顔面蒼白だ!

 『はぁはぁ』と肩で息をしながらなにやらブツブツと呟いている?


「も、もう虫は…嫌だぁ……も、もうたくさん…だぁ……」


 気持ちは分かるぜ!オークドゥ!俺も、ハニーたちもきっと同じ思いだ!

 案の定、俺の後ろについてきているハニーたちの顔も恐怖に引き攣(つ)っていた。


「あ…みんな。マイミィの話では、マミーは剣で斬ってはダメらしい。切り口から虫が湧いて出てくる仕掛けがしてあるらしいぞ……って、もうみんな分かっているよなぁ……」


 みんなは大きく何度も頷いている。


「身体を張って剣で斬るとどうなるかを見せてくれたオークドゥに拍手!」


 パチパチパチパチパチパチ!


 オークドゥは顔を引き攣らせながら無理矢理に笑顔を作っている。

 それ以後のマミーに対する攻撃はすべて剣ではなく、出力レベル3にセットしたフェイザー銃を使用した……ということは言うまでもないだろう。



 ◇◇◇◇◇◇◆



 ミニヨンを先行させてトラップはすべて解除させながら進んでいる。

 だから、かなりの速さで進んでいるはずだ。はずなんだが……なぜか、なかなか女性冒険者たちに追いつけない。


 彼女たちの位置をもう一度確認するか……。


 そう思って、マップ画面でもう一度彼女たちの位置を確認しようとしたときに、ミニヨンからメッセージ送られてきた。


 ある女性冒険者の肩にアンカーを貼り付けて、亜空間内に潜みつつ追跡していた護衛用のミニヨンからのメッセージである。


 そのメッセージによると……

 さっき宝箱トラップに引っかかった冒険者が、今度は通路の床に設置されていた押しボタン式のトラップを踏んでしまい、女性冒険者全員が亜空間バイパスに引き込まれてしまったということだった。


 なんとまぁ、迂闊(うかつ)な人だなぁ……。


 そして、その際に彼女たちを護衛していたミニヨンのアンカーが外れてしまい、追跡が不可能となったということだったのだ。


 確かにマップ上でついさっきまであった冒険者5名の生命体反応がない。

 翠玉とユリコが行方不明になったときとよく似た状況だ。


 取り敢えず、そのトラップがある位置まで早急に移動することにした。



 ◇◇◇◇◇◆◇



「ああっ!シェリーさん!ずるいっす!」


 女性冒険者たちが嵌(は)まったトラップの前まで来て、亜空間バイパスによる転移に備えるために、みんなには俺にできるだけ近づくようにと指示したのだが……

 シェリーがいきなり俺の正面から抱きついたのでウェルリが文句を言ったのだ。

 他のハニーたちもみんなぶうぶう文句を言っている。


 え?ユリコ?なんでお前さんも文句を言うんだ?


 周りからのブーイングに、シェリーは顔を真っ赤にしながら俺から離れた。



 みんなに俺の側に近寄ってもらったのにはわけがある。

 全員を"見えざる神の手"で包み込んで一体となることで、亜空間バイパスによる転移によって、みんなが別の場所にバラバラに転移させられてしまうのを防ごうと思ったのだ。


 恐らくこんなことをせずとも、先ほどの"寺院のようなゴブリン集落"への転移の時のように、みんなが一緒に同じ場所へ転移させられるとは思う。単なる可能性に過ぎないのだろうが……リスクマネジメントだ!念には念を入れたのだ!



「それじゃぁ、トラップを踏むぞ!?いいな?」

 "はいっ!"



 ◇◇◇◇◇◆◆



 今度は古代ギリシャの神殿のような建物の前に全員が転移させられてきた。


「……きゃぁぁぁぁぁぁっ!誰かーっ!誰か助けてっ!……」

 ズガンッ!フュンッ!……シュピッ!……


 よく聞き取れないが女性の叫び声のようだ!?攻撃魔法を放ったような音もしている!?

 マップ画面を表示させて索敵する……どうやら前方にある神殿のような建造物の中に女性冒険者たちがいるようだ。


 ん?彼女たちは囲まれてしまっているぞ!?……オークだっ!1000匹以上はいるようだな!マズいっ!


 この場に野営用のテントと共にシールド発生装置を設置し、ただちにシールドを展開した!

 翠玉とシェリー、ノアハ、ザシャアの4人に他のハニーたちを守るように頼んでこの場を任せ、俺とオークドゥでピンチに陥っていると思われる女性冒険者たちのもとへと転移で向かう!


「後は頼んだ!みんなでゆっくりお茶でも飲んで待っていてくれ!……転送!」



 ◇◇◇◇◆◇◇



 俺とオークドゥは、ものすごい数のオークどもに完全に包囲されてしまっている女性冒険者たちのすぐ側に転移した!

 すかさず俺たちをスッポリと覆うシールドを展開する!


 防御シールドを展開して漸(ようや)く周りを確認する余裕が出てきた。


 目の前には何やら神像がある。女神のようだ。

 祈りを捧げる場所なのだろうが……かなり広い。数百人が一堂に会しても十分に余裕がありそうなスペースだ。この祈祷所のような場所の中央で俺たちは300匹近いオークの群れに完全に包囲されている。



 おっといけない!女性たちの状態を確認しなくては……


 女性たちは肩で息をしながら身構えている。非常につらそうだ。

 消耗しきったような顔をしていて、5人全員の顔が真っ青だった!


 オークに襲われているためか?いや。どうやらそれだけじゃないようだな?

 どうやら俺が心配していた通り、魔力欠乏に陥ってしまってるようだな!?


「修復!」


 女性たちの顔色は見る見るうちに良くなってきた!


「やあ、お嬢さんたち。どうしたんだい?助けはいるかな?」

「……」


 突然眼前に現れた俺たちに驚いたのか、それとも、一瞬で状態が回復したことに驚いているのか、はたまた、俺が気の抜けた問いをしたからなのか……女性たちは皆、呆然としているようだ。


「こ、この状況が分かっているから助けに来たんでしょっ!?ふ、ふざけないで!オークたちが襲ってくる前に早く助けてよっ!ったく!」

「す、すげぇ言い草だなぁ……助けるのをやめてもう帰ろうっかなぁ~」


「ご、ごめん、ごめん!じょ、冗談よ!冗談!だから、ね!?助けて!お願い!」

「ははは。こっちも冗談だ。ちゃんと助けてやるから安心しな!」


 あれ!?オークドゥが呆然としている!?

 おいおい!どうした?目から涙が溢れているぞっ!?ま、まさか精神支配されてしまったのか!?



 ◇◇◇◇◆◇◆



「……した……」

「ん?なに?聞こえねぇんだけど?オークドゥ!ハッキリしゃべれよ!」

「い、生きていました!弟たちが……生きていました!あそこです!」


 オークドゥが指さしている方を見てみると……そこには"キョトン"とした表情をしているイケメンオークがいた。

 なんと!そこにいたのは死んだはずの……クソ野郎冒険者どもに殺されたはずのオークドゥの弟だったのだ!彼の側近たちもいる!


 "ははーーーっ!"


 オークドゥの弟たちは目の前に突然現れたのが俺とオークドゥだと知ると、皆が一斉に俺たちに向かって跪く!



「へっ?な、なになに!?どういうこと!?ま、まさか!まさかあなたがオークの親玉なの!?……うわっ!最悪っ!ああ……ここで私たちはオークたちの孕み袋にされてしまうのね?ううう……うわぁーーーん!」


「おいおい、お前さん!勝手に俺を悪者にしてもらっちゃ困るなぁ!助けに来たと言っただろう?オークの孕み袋になんかにさせねぇよ!絶対に!心配するなっ!」


「ううう……。そんなの嘘よっ! ああ……お父さん、お母さん、ごめんなさい。反対を押し切って冒険者なんかになるんじゃなかったわ……うわぁーーん!神様、助けてーーっ!うわぁーーーん!」

「ほらっ!見てみろ!この印がなにか分かるだろう?」


「えっ!?か、かか、神様です…か?」

「おおぅよっ!俺がこの世界の神だ!どうだ!俺を信じる気になったか!?」

 "ははあーーーっ!"


 女性冒険者たちも全員が俺の前に跪いたのだった。



 ◇◇◇◇◆◆◇



「おい。弟よ。お前なんでここにいるんだ?第3階層にいるはずだとばかり思っていたぞ?」

「それがさあ、兄者よ。よく分からないんだよ。

 気が付くと俺たちはここにいたんだよ。

 第3階層で俺たちと一緒にいた、他の集落から来たヤツらはここには来ていないようなんだけど……全くわけが分からないぜ!

 精神支配されていない俺たちだけを隔離でもしたかったんだろうかなぁ?」


「そうか……とにかくみんな無事で良かった!ううう……本当に良かった!」


「おいおい、兄者!泣くなって!俺たちの王が……みっともないぜ!」

「まあ、そう言ってやるなよ。ここに来るまでは、お前さんたちが魔石も残らねぇくれぇに殲滅されちまったとばっかり思っていたんだから、無理もねぇって」


 俺はこれまでの経緯(いきさつ)を説明した。

 オークドゥの弟たちもオークドゥの心情を理解したようだ。


 あれ?そうなると、あのクソ野郎冒険者どもは??……まっ、いいかっ!瑣末(さまつ)なことだ!


 オークドゥよ。良かったなぁ!



 ◇◇◇◇◆◆◆



「お前さんたちさぁ、さっき目玉みたいなヤツに攻撃魔法をぶち込んだだろう?」

「はい。思いっきりぶち込んでやったら消し飛びましたが、それがなにか?」

「あれはなぁ……実は密かにお前さんたちを守らせていたヤツなんだよ。お前さんたちのことが心配で俺があいつを同行させていたんだ」

「えっ!?そ、そうなんですか!す、すみません!殺しちゃいました!」


「いや。大丈夫だ。あの程度の攻撃でやられるようなヤツじゃねぇよ。ほら!」


 亜空間に潜伏していたミニヨンが、まるで『どうも!』とでも言いそうな感じで目の前に現れる。


「きゃっ!」


「それよりも、お前さんさぁ!もうちょっと慎重にならねぇとダメだ!トラップに引っかかるのは、いつもお前さんじゃねぇか!?最初の虫のもそうだし、今回のもそうだろう?」


 トラップに引っかかってばかりいた女性に思わず注意したくなったのだ。


「は、はい……すみましぇん……ぐっすん」

「ああ……泣くな!泣くなってぇ!今度から気をつければいいんだから!」


 話を変えよう……


「し、しかしお前さんたちは運がいいな。ここにいるオークたちは女性を襲ったりしねぇ善良なオークたちだ。たとえ俺たちが助けに来なかったとしても、お前さんたちは無事だったと思うぜ。コイツらはお前さんたちには何もせず、そのまま帰すつもりだったらしいぜ?」


「そ、そんなオークなんて聞いたことがないです。本当ですか?」

「ん?俺の言うことが嘘だって言うのか?」


「も、申し訳ございません。そ、そんなつもりでは……。純粋に疑問に思っただけです。お気を悪くされたのでしたら謝ります」

「とにかく、ほら。あの男を見てみろ。コイツらのリーダーをしているオークなんだが、どうだ?すげぇイケメンだろう?肌の色が緑だから人族からすると違和感があるかも知んねぇが……」


 本当のリーダーというか王はオークドゥだが、今現在このオーク集団をまとめているのはオークドゥの弟であるから間違いではない。


「は、はい。オークじゃなければお付き合いしたいくらいです」

「よかったら紹介するがどうだ?もしカップルが成立したらこの世界初のオークと人族とのカップルということになるぞ。パイオニアだぜ?」


「い、いえ。結構です。やはりオークと聞いただけでちょっと……」

「そうか。ならしょうがねぇ。……お前さんたちはどうだ?ヤツはいい男だぜ?」


 他の4人もすごい勢いで首を左右に振っている。


 オークはやはり女性を凌辱する魔物のイメージがあるためか、敬遠されてしまうようだ。この悪いイメージを払拭すべく、より一層の努力が求められるな。


「あのう……上様と一緒に私たちを助けに来てくれたあの人は誰か"いい人"がいるのでしょうか?」

「あ?ああ……オークドゥのことか?いねぇよ。独身だし彼女もいねぇよ。彼女を募集中だと思うぜ?だがなぁ……」

「あ、あのぅっ!しょ、紹介していただけませんか?お願いします!ひと目会った瞬間にビビビッと来たんです!

 ああ……まるで予(あらかじ)めこの魂に刻まれていたかのような思慕(しぼ)の念……」

「落ち着け!俺の話を最後までちゃんと聞け!いいか!?」

「は、はいっ!」


「あのな。後から騙(だま)されたと言われちゃ心外だからハッキリと言っておくぞ?

 俺と一緒にお前さんたちを助けに来たあの男は、ロイヤル・オークだ。そして、ここにいるオークたちの王だ」

「えっ!?そ、そうなんですかっ!?」


「ああ。そうだ。人族ってのは人と違うヤツをすぐに差別しやがるからな。本当は肌の色を変えたくはねぇんだが、あいつが無用のトラブルに巻き込まれねぇように肌の色を変えてある。だから、ロイヤル・オークとは分からねぇだろうがな」

「そ、それでも構いません!しょ、紹介して下さい!」


「あのなぁ……あの男はお前さんがさっき拒否したイケメンオークの兄貴だぜ?」

「えーっ!そうだったんですかぁ!?オークドゥさんの方が遥かにイケメンなので兄弟とは思えませんでした!」


 そうなのか?俺は二人はよく似ていると思うんだけど……。


「まっ!お前さんが人族相手じゃなくても構わねぇって言うんなら紹介してやろうじゃねぇか。オークドゥ!弟と話しているところを悪ぃがちょっといいか?」

「はっ!上様。なんでしょうか?」


「ああ。この子がなぁ、お前さんに惚れちまったから紹介しろって言うんだよ」

「えっ?わ、私に、ほ、惚れた?そ、その女性がですか?」


 あれれ?ひょっとしてオークドゥって……チェリーボーイくんなのか?


「そうだよ。この子がお前さんに惚れたらしいから。お前さんが嫌じゃなかったら付き合ってみたらどうだ?」

「上様。彼女は私の正体を……」

「ああ。知っているよ。俺が今話したからな。だから、その点は全く問題ねぇよ。心配するな。どうだ?」


「……ごにょごにょ……」

「ん?なんだって?ハッキリ言えよ!ハッキリ!ったくもう!」

「はいっ!よ、よよ、喜んで!是非!あなたとお付き合いしたいです!」


 こうして、女性冒険者たちのリーダー、アウデッテとオークの王、オークドゥの交際が始まることになった。めでたし!めでたし!


「おい!オークドゥ!分かっているだろうが……あっちの方は、ちゃんとお互いが合意した上でしねぇとダメだぞ!いいなっ!?」

「は、はいっ!しょ、承知しておりますっ!貴方様に誓って!無理矢理にそういうことは致しません!お約束致します!」


「よし。分かってるならそれでいい!オークドゥ、おめでとうさん。彼女ができて良かったな?」

「はっ!ありがとうございますっ!」



 ◇◇◇◆◇◇◇



『ということで、バルバラ。悪ぃけどまた5人追加してぇんだが?大丈夫かい?』

『はい。ランクAの冒険者なら大歓迎です!』

『そうか。それじゃぁ、後でそっちへ送っていくからよろしく頼むな』

『はい、上様。お待ちしております』


 バルバラからは、さっき女性冒険者を連れて行ったときにどんどんスカウトしてきて下さいと言われている。


 オークドゥの彼女とはいえ、この先に連れて行くわけにはいかない。彼女たちのレベルではこの先に進むには無理がある。

 それもあって、今回もダメ元で彼女たちに神殿騎士にならないかと尋ねたところ皆が乗り気になったので、アウデッテをリーダーとする彼女たち女性冒険者5人も神殿騎士試験を受けられるようにと、バルバラに頼んだのだ。


 これからこの神殿のような建造物の外、亜空間バイパスの出入り口付近で待っているハニーたちと合流し、アウデッテたちを神都へと送り届けようと思っている。


 第7階層へ至る階段まではまだ少し距離がありそうなので、今夜はこの神殿前で野営しようかと考えている。

 ただ、ミニヨンに周辺調査をさせてはいるが、まだ周囲の状況を十分に確認していないので、その結果次第では一旦ピラミッドの外へ出ることも考えている。



 ◇◇◇◆◇◇◆



 オークドゥの弟たちに見送られながら、神殿の出口付近に近づいてきたところ、外の様子がなんだかおかしい?


 神殿の外へ出てみると、亜空間バイパスの出入り口付近にものすごい数の魔物が群がっている!? 方角から判断するとハニーたちがいるテントの方だ!


 すぐにハニーたちに念話を繋ぐが……返事がない?

 ハニーたちを守るようにシールドを展開してきたので多分問題ないとは思うが、念話がつながらないのが非常に気になる! 胸騒ぎがする! 気ばかりが焦る!


「オークドゥ!ハニーたちの方でなにかトラブルが発生しているようだ!

 俺は一足先に転移で向かうことにする!

 向こうの状況が全く掴めねぇ!だから、お前さんはアウデッテたちを守りながらここで待機していてくれ!……それでは頼んだぞ!」

「はっ!どうぞお気をつけて!」

「転移!」



 ◇◇◇◆◇◆◇



 転移した先ではハニーたちが押し寄せてくる魔物の群れと交戦中であった!

 だが、なぜか野営用テントの周りに張っておいたシールドが消失している!?


 ハニーたちは野営用テントを中心とした方円陣形、つまり、テントに背を向けてテントを囲む円となるように布陣している!?ハニーたちの表情は硬く、険しい!


 俺はサッと状況を確認した後、すかさずハニーたちを取り囲む新たなシールドを展開した!


 シールドが展開されるのを見て俺の帰還を知ったのか、ハニーたちの険しかった表情が和らいでいく……。


「ハニーたち。待たせたな!後は俺に任せろ!」

 "はいっ!"


 さあ!魔物殲滅戦の始まりだ!……まぁ、一瞬で終わるだろうけどね~。



いつもお読み下さり、ありがとうございます。

ブックマークして下さっている方々に深謝します!

m(_"_)m

挿絵(By みてみん)


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