第003話 魔物溢れとクソ野郎
>>警告! 警告! 危険! 極めて危険!
<<どうしたんだ!! フライデー! ……じゃなかった、全知師!!
聞き覚えのあるフレーズにふと昭和40年代の『宇宙で迷子になる家族』というような題名の海外SFドラマに出てきたロボットを思い出してしまった。
全知師と会話しながら俺はテントの外に出た。
重大事案が発生したようなので、シオリにも俺と全知師とのやり取りを聞かせることにする。もちろん念話で。
>>約5キロ西方にある魔物の森で"魔物溢れ"が発生しました。
おおよそ1万5千匹の魔物がこちらへ向かってきています。
10分ほどで遭遇します。
まいったなぁ……こうも次から次にトラブルが発生するとは……
やはりこれも何者かの仕業なのか?
娘さんたちの攻撃神術の練習台にするには数が多すぎるしなぁ……
どうしたものかなぁ??
ちょっと行った先には町もあるようだし……
俺とシオリ、娘さんたちで力を合わせれば殲滅することは可能なんだろうが……
時間がかかるだろうしなぁ~、疲れるだろうし、めんどくさいなぁ~。
<<全知師、魔物たちをチャッチャと殲滅するいい手はないか?
>>お答えします。
マスターの上空、この惑星の周回軌道上の管理サポート衛星を使用する方法があります。
衛星には『重粒子砲』2門が搭載されており、それを使用すれば30秒以内にこちらへ向かっている全魔物の殲滅が可能です。
な、なんだぁ?ファンタジー世界かと思ったらSFになってきたなぁ?
まぁ、俺の種族は科学技術がめちゃめちゃ発達しているらしいからそりゃぁ衛星くらいは飛ばしていてもおかしくはないわなぁ。
まっ。俺の記憶にはないけどな……。(苦笑)
<<よし全知師!重粒子砲の発射準備をしてくれ!
それと重粒子砲の威力が及ぶ範囲内にヒューマノイドの生命体反応がないか、念のために確認してくれ!
>>承知しましたマスター。
……殲滅予定範囲内にヒューマノイドの生命体反応を5つ確認しました。
それ以外の動物の生命体反応は探知できませんでした。
魔物溢れを察知して皆退避したものと推測されます。
指示をお願いします。
<<そうか野生動物とかをどうしようかと思っていたが良かった!
……じゃぁ、そのヒューマノイド5名を街道脇の空き地に転送してくれ!
>>承知しました。ただちに転送を開始します。
街道脇の空き地に5人が実体化した。
お! 俺の指示通り今度は光の粒が現れなくなっている!
走って逃げる途中だったようだ。5名全員がつんのめるように地面に転がった。
人族の男だけがかなり前を走っていたようである。他の4人とは、離れた位置に出現した。
「「「「「う、うわぁ~~っ!!!」」」」」
おっ! エルフの女性だ!
おおっ! ドワーフの女性?少女?に"犬族"?それとも"たぬき族"?なのか?
獣人の女性もいる!! ファンタジー世界だぁ!!
く~~っ、なんか嬉しくなってくる!! おっ! 人族の女性もいる!?
女性たち4人がいる場所よりもかなり離れた前方に転がっている男のターゲットカーソルは真っ黒に近い赤であった。
ん?こいつはろくでもない野郎だなきっと……ちょっと【魂の履歴】を確認してみるか?
えーと。窃盗から強盗殺人……レイプ殺人もか!!酷ぇ野郎だな~、こいつだけ送り返しちまうか?
この状況から判断すると……
女の子たちを囮にして自分だけ逃げようとしたんだな?
クズ野郎が! 許せんな!!……と思っていると男が大声を出した。
「いってぇなぁ~っ! どこだここは!! 魔物はどうなった!?」
「おい! 今は取り込み中だ! そこを動かずに静かにじっとしていろ!!」
俺がこう言った直後、地震の初期微動のような揺れを感じだした。
何やら地響きを立てて近寄ってくる。西の方からは澱んだ空気が漂ってくる。
なんかおぞましい鳴き声のようなものも聞こえてきた。
>>マスター、準備が整いました。発射のご命令を。
「OK!あっそうだ、全知師!可能なら魔石をいくつか回収して魔物溢れの原因を分析してくれ!
もちろん魔物殲滅が最優先! 魔石回収は二の次だ! いいな!?
よし! それでは! 発射っ!! 魔物を殲滅せよっ!!」
おっとぉ。つい思わず声に出してしまった。
その直後、西の上空から雲を突き破り、地面に向かって放射状に光の雨というか光のスジが降り注いだ!
それは20秒ほど続くと何事も無かったかのごとくやんだ。
>>マスター、魔物の群れの掃討が完了しました。
魔物の森を溢れ出てこちらに向かっていた魔物を、すべて跡形もなく消し去ることに成功しました。
なお、魔石64個を回収しましたので分析に回します。
<<良くやったぞ!全知師!見事だ!!
念話を通じて"事の次第"を把握していたシオリと、喧噪を聞きつけた神殿騎士のふたりがテントから出てきた。
テントの中では待機するように言われているのか、神子たちが息を潜めている。
「おい、兄ちゃん! こりゃ一体どういうことだっ! 分かるように説明しろや!
それと……俺ら怪我しちまったじゃねぇかぁ! 謝罪と賠償をしろや!!
まぁ~今回は特別にそこのべっぴんさん3人を俺に差し出せば命だけは勘弁してやらぁっ! さあ兄ちゃん! 女をこっちに寄越せ!」
クソ野郎が下卑た笑いを浮かべながら、ふざけたことをまくし立てる!
クソ野郎の後ろの地面でへたり込んでいる4人の女性たちが、すがるような目を向けて何か言おうとした時、クソ野郎が振り返りその女性たちに命令する……
「てめぇたちは黙っていろ!
余計なことを言うんじゃねぇぞっ! いいな分かったなっ!!」
「さぁ~兄ちゃんや、どうすんだ!?
俺にぶっ殺されたくなかったら素直にそっちの女どもを俺に寄越しなっ!!」
クソ野郎は右の拳を見せながら俺に近づいてくる……
「「ええーーいっ! 無礼者!! 控えよ! この下郎がっ!!」」
スケさんとカクさんが同時に叫んだ!
息がぴったりだよ! かっこいい~なぁ~!!
「な、なんだとぉ~このアマぁ~っ!! てめぇらぶん殴るぞ!!」
男は3メートルほどの距離を一気に詰め、スケさんに殴りかかった!
おっ! クソ野郎にしては動きが速いな! そこそこはできるようだな……。
だがなぁ……全く話にならんわなぁ~。
クソ野郎の拳がスケさんに届く前にシオリがサッとそいつとスケさんの間に割り込み、クソ野郎の横っ面を右手で軽く叩いた!
シオリは男の一連の言動を腹に据えかねたらしい。
シオリはかなり手加減をしたようだったんだけど……
クソ野郎はフィギュアスケーターのジャンプのようにすごい勢いで回転しながら吹っ飛んで行き、変な格好で顔面から着地した!
『あー、着地に失敗! 減点1だな……』
それでも勢いが止まらないのか地面をゴロゴロと転がり……動かなくなった!
いやよく見るとピクピクしている!?
「あらごめんなさい。そっと撫でただけなのに……か弱い男ですねぇ~。
しかし、魔物に喰われそうになっているところを助けて貰ったのに……無礼にもほどがありますわねぇ~。
上様! こんなゴミは生かしておいてもしようがないですし……
やっちゃいましょうか? いや、やっちゃいますね!!」
「おいおいシオリちゃん、かわいい顔したお前さんには似合わねぇ言葉だなぁ。
百年の恋も一時に冷めちまうぜ。そんな物騒な事を口にしちゃぁダメだよぉ~。
それに……細かいようだけど"上様"じゃなくて"シンさん"と呼んでくれよな!」
シオリは『ガーーン』という感じでショックを受けているようだ。
スケさん、カクさんは非常に険しい表情をしながら地面でピクピクしている男を睨み付けている。
ふと男の連れの女性たちを見て気が付いた。
女性たちは皆、首に囚人がつけるような"首輪"をつけている。
俺はどうにも気になって彼女たちのところへ近づいて行き、尋ねた。
「ん? 何だ、その妙な首輪は?」
「「「「…………!」」」」
女性たちは皆なにか言おうとしているがしゃべれないようだ。
口はパクパクしているのだが声が出せないのか?
取り敢えずエルフの首にハマっている首輪を選択して情報を表示させてみた。
「隷従の首輪なのか!? お前さんたちはあのクソ野郎の奴隷なのか!?」
「「「「…………!」」」」
やはり女性たちは声が出せないようだ。
目にいっぱい涙を浮かべて必死に何かを訴えたがっている?
そうか! さっきあのクソ野郎は彼女たちに余計な言うなと命令してたよな?
それでしゃべれないのか?
「大丈夫だよ。ちゃんとお前さんたちの思いを聞いてやるから安心おし。
今から俺は神術を使ってお前さんたちの心の声が聞こえるようにするからな」
俺はそう言いながら、落ち着くようにとの意味を込めて彼女たちひとりひとり、頭に軽く手を置きながら順に、彼女たちに念話のパス、念話回線をつなげていく。
これで彼女たちの心の声が聞こえるハズだ。
「さぁ、落ち着いて頭の中で俺に話しかけてごらん」
『助けて下さい!
私たちは魔物溢れの少し前に無理矢理あいつの奴隷にされてしまったんです!』
人族の女性、ラヴが話しかけてきた。
続いてエルフの女性、シェリーが彼女たちが奴隷にされた経緯を語った。
『私たちはこの女性4人でパーティーを組んでいる冒険者です。
ギルドの要請で様子がおかしくなった魔物の森の調査を行っていました。
午前の調査を終えて森のすぐ外の草原でみんなで一緒に昼食を取って……
午後の調査を始めようとしたときに、その男が森の中からよろよろしながら出て来て私たちの目の前で倒れたんです』
ドワーフの女の子?ミューイが続きを語る……
『あたしたちは助けなきゃと男に近づいたんだよ。
そしたらそいつはラヴちゃんを人質にして……
殺されたくなかったら全員首輪をつけろ!って脅してきたんだ! それで……』
人質に取られたラヴちゃんというのは最初に話しかけてきた人族の娘さんだな。
彼女、ラヴのステータスを確認したがこの4人の中ではSTR値が一番低い。
なるほど……。
この先は獣人族の女性、ラフが続けた。
『うちらは仕方なく首輪をつけたんだよ。
で、みんなが首輪をつけたらすぐにあいつは……
あいつはシェリーに襲いかかって……魔物溢れがなかったらシェリーは……
シェリーは酷い目に遭うところだったんだよ。そして、うちらも……』
そういうと獣人の女性、ラフはエルフの女性、シェリーの方を見た。
ラフの目からは涙が溢れ落ちている。
一方、そのシェリーという女性の方は思い出したのか真っ青になっている。
彼女の着衣がちょっと乱れているのはそのためだったのか……
可哀想になぁ。怖い思いをしたんだなぁ。
『ホント、魔物溢れが起こらなかったら、そうじゃなかったら……
私たちはみんな……みんなあいつのおもちゃにされて……ううう……』
人族の女性、ラヴが泣きながら語った。
その後の話は思った通りだった。
魔物溢れが起こったら、そこで意識を失っているクソ野郎は彼女たちを囮にして真っ先に自分は逃げ出したとのことだった。
相当なクズだな。しかもこいつの魂は真っ黒に近い赤だ。
俺の権限で絶対に報いを受けさせる! 絶対にだ! 命で償わせてやる!
彼女たちはもちろん、ヤツの犠牲になったその他たくさんの女性たちが味わった苦痛をた~っぷりと味わわせてからなっ!
俺がいた日本という国は性犯罪者には非常にあまい国だと常々思っていた。
だが……ここでは俺がルールだっ! クソ野郎には一切容赦はしない!
重犯罪者に人権などないっ! 死を以て償うべしだ!!
しかし、この娘さんたちは……魔物溢れで貞操の危機はなんとか回避できたのは良かったが、今度は魔物の大群に追われることになっちまって……
さぞや怖かっただろうなぁ。
「よし! 事情は分かった! 今それを外してやるからな!」
「管理者たる我が権限において……ここにいる4人の者たちの奴隷契約を強制的に解除・破棄する!
加えて"隷従の首輪"の除去!消滅!を命ずる!!」
本当は言葉に出す必要はないんだけど、ちょっと格好を付けてしまった……。
俺が命令すると彼女たちの首から隷従の首輪は外れて、地面に落ちる前に粉々になりながら消え去った。
これで彼女たちも普通に会話できるだろう……
彼女たちに繋いでいた念話パスはもう必要ないだろうから切断した。
この惑星を支配しているヒューマノイド種族国家の多くには奴隷制度が存在していることが分かった。全知師が教えてくれたのだ。
刑罰で重犯罪者を奴隷にすることは良しとしよう……
だがそれ以外、俺は許さない! 今後必ず何とかしてやると心に誓った!
「さぁ、もうこれでお前さんたちは自由だ!」
「「「「ありがとうございます……ううう……」」」」
彼女たちは俺に礼を言いながら泣いている。
クソ野郎になにかされる前に助けられてホント良かった。しみじみとそう思う。
俺はクソ野郎の【魂の履歴】をもう一度念入りに確認してみた。
ヤツはギルドでも美人パーティーとして有名な彼女たちにずっと目を付けていたようだ。
今回彼女たちがあまり人が近づかない魔物の森へ調査に出かけるのを知り、これ幸いと一芝居打って罠にはめ、モノにしようとしたのだ。
彼女たちを性奴隷にしてから、まずは自分がたっぷりと凌辱して彼女たちの心をへし折り……飽きたら彼女たちに客を取らせて自分はヒモのような生活をする……
それがヤツの目論見だった。
本当のクソクズ野郎だな!
たっぷりと懲らしめてやらねば腹の虫が治まらん!!
彼女たちはギルドでも評判の美人パーティーなのか……。
俺の側には優雅高妙、羞月閉花、仙姿玉質……
美女をたとえるすべての言葉でも言い尽くせないほどの超絶美女のシオリがいるから俺の美女基準は上がってしまったのか、全く意識しなかったのだが……
確かにそう言われてみればみんな美人だもんな~。良からぬ事を企む者は今後も出てくるかも知れないな。
この子らにも加護が必要かもなぁ……。
クソ野郎の処分と共に彼女等への加護の件もシオリに相談してみよう……と考えながらシオリの方を見た。
ん? シオリが頬を染めている? なんだ!?……あ゛! しまった!
シオリとの念話は繋ぎっぱなしだった!
うわっ。俺の心の声はシオリにダダ漏れだったのかぁ~!?
『あ、あ、シオリちゃん。 超絶美女のシオリちゃん聞こえますかぁ?』
『は、はい! シン様……シンさん!……あのぅ~超絶美女ではないですぅ……』
『あ~そろそろ念話を切るね~。なんかごめん』
なんか分からんけど、ついシオリに謝ってしまった。
念話の繋ぎっぱなしか……今度からは気をつけようっと。
「シオリちゃん、このクソクズ野郎をどうしたら良いと思う?
たっぷりと懲らしめてから処刑してぇんだけど……何かいい案はねぇかな?」
シオリは暫し考えてから提案してきた。
「では、アマゾネス・オークに処理を任せるのがよろしいかと存じます」
「アマゾネス・オーク?なんだそれ!?」
「はい。シンさんが地球視察に出かけられる前に創られた新種族です。
『女性を凌辱する魔物はいるのに男を凌辱する魔物がいないのは不公平だ!』とシンさんが仰って……
オーククラスを継承元として創られた"女性だけのオーク型魔物種族"です。
アマゾネス・オークは繁殖に他種族のオスを必要とし……
生まれてくるのはメスだけです。そうなるように設定されています。
オークが繁殖に他種族のメスを必要とし、生まれてくるのはオスだけですので、相対する存在ということになっております」
「ん? 男女のオーク種が存在するなら……
一緒になれば繁殖のために他種族を襲うことがなくなるんじゃねぇのか?
その方が理想的に思えるんだがな……」
「いえ。オークとアマゾネス・オークは敵対するように設定されています。
この2種族を合流させれば他種族への凌辱行為が減るかのように思えますが……
実際にはうまく行きません。
オーククラスを"継承"してアマゾネス・オーククラスが創られた関係で、互いを繁殖行為の対象としては認識しないのです」
うまくすれば他種族の異性を凌辱する魔物を減らせるかと期待したのに……
無理なのか……残念だ。
かつての俺は意図的にこんな下手なクラス設計をしたんだろうか??
「なるほど。ところで……
好奇心から聞くんだが、仮にオークとアマゾネス・オークが子作りをしたらどうなるんだ?」
「その場合、父親と母親のいずれかレベルが高い方の性別になります。
なお、男女が同レベルの場合はメスが生まれます」
「へぇ~そうなるのか……
で、シオリちゃん。どうやってアマゾネス・オークへ指示を出せばいいんだ?」
「はい。アマゾネス・オークは、"クイーン"を頂点とするヒエラルキーを形成しています。その男をアマゾネス・オークに処理させるのでしたら"クイーン"にご指示下さい。
今からシンさんに"アマゾネス・オークとクイーンに関する情報を"送信します。ご査収下さい」
「ありがとう……シオリちゃんの提案通り、アマゾネス・オークに処理してもらうことにするわ」
ピロリーン!というような音が脳内に響く……。
ん? シオリから添付情報付メッセージが脳内に届いたのか?
送られてきた情報に基づきアマゾネス・オーク・クイーンと連絡を取ってそこのクソクズ野郎を処分させることにした。
『ああ、もしもし……クイーンか?』
『誰だ、お前は! "もしもし"ってのは何だ!?』
『あー俺だ! 分かるか! 神だ! 元気か?』
『し、失礼致しました! 上様! はい、息災にございます!』
『あー、そのな、"もしもし"ってのはな、こうして念話で最初に話しかける時等に使う"決まり文句"のようなモノだ。気にするな』
『は、はい。承知しました』
『ところでクイーンになぁ、折り入って頼みがあるんだが……。
今ここに人殺しやら、女性を無理矢理性奴隷にしたりやら……
散々酷いことをやらかしてきた女の敵でクソクズ野郎な人族のオスがいるんだがなぁ……そちらで懲らしめてやってくんねぇかなぁ?
凌辱される側の思いをた~っぷりと味わわせてやりてぇんだよ』
『はっ!御意のままに!
そろそろ種族として子種が不足しつつありますので助かります。
たっぷりとかわいがってやります。
……それでその男から子種を搾り尽くした後はどう致しましょう?
死んでしまう前にそちらへお戻ししましょうか?』
『いや、いい! 不味いかも知れねぇけど食べちゃってもいいぜ。
食べたくねぇなら攻撃練習の的にでもして……
死んだら骨が残らねぇくらいに燃やして捨ててくれ。アンデッドにでもなったらマズいんでな』
『はい。ありがとうございます。活け作りにでもして皆で味わうことにします』
『うん。面倒をかけるな。
じゃぁ後でそっちの広場に"男"は転送するから、誰か待機させておいてくれ。
逃げ足が速そうなんでな、気をつけてくれ。では、よろしく頼む』
俺は白目をむいて意識を失っているクソクズ野郎の怪我を治療してやり、手足を縛って拘束した。
アマゾネス・オークのみんなが楽しみにしているんだからできるだけイキの良い獲物を送ってやらないとな!
「ううん……な、なんだこりゃ! やい小僧! 縄を解け! ぶっ殺すぞ!
俺を解放しろ! さもないと後悔することになるぞ!
俺は顔が広いんだ! 大貴族にも伝があるんだからな!」
「ほざくなっ! クソクズゲス野郎が!! 四肢粉砕!!」
「…………ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!痛ぇ!痛ぇ!痛ぇ!痛ぇ!」
クソクズゲス野郎の手足の骨が粉砕された!
暫しのタイムラグの後、押し寄せる激烈な痛みに男は絶叫した。
そして、また気絶してしまった。
「おっといけねぇ。あまりの激痛に気を失いやがった。
これじゃぁクイーンに怒られちまうな。……修復!」
男をたたき起こして宣告する。
「おい、クソクズゲス野郎!! 判決を言い渡す!
主文!……てめぇをアマゾネス・オークへの生け贄の刑に処する!!
判決理由は……めんどくせぇから省略だ! 抵抗は無意味だ!!
凌辱される者の気持ちをた~っぷりと味わいながら、生きたまま食われて死んでこい!! 以上だ!」
「ちょちょ、ちょっと待ってくれ!
心を入れ替えるからさぁ。た、頼むよぉ~助けてくれよぉ!」
「却下だ!! ばっははーい!……転送!!」
引きつった顔をしながら男は消えた。
疲れたような顔をしている冒険者の女性たち。
相変わらず地面にへたり込んでいる。
シオリの顔を見てから、シオリの視線をへたり込んでいる彼女たちへと誘導するように視線を送った後、改めてシオリの顔を見ながら尋ねた。
「なぁ、シオリちゃん、あの子たちも加護してやった方がいいんじゃねぇかな?
お前さんほどじゃねぇにしても、みんなかなりの美人だろ?
あのクソクズゲス野郎のように付け狙う輩が今後も現れるんじゃねぇかと思ってちょっと心配でなぁ」
「失礼ながら……私は反対です。
一般人への過度の干渉は避けるべきかと存じます。
シンさんの后候補者や、お側に仕える神殿騎士たちを庇護下に置かれて加護することは良いと思います。我々の実験に必要であり、我々がこの惑星を管理するために必要な者たちですから……。
しかしながら一般人にまで強力な加護を付与するとなりますと、場合によっては実験の公正性が担保できなくなる可能性があります」
「そっかぁ……でもなぁ~、なんか放っておけねぇんだよなぁ……。
シオリちゃんも見えるだろうけど彼女たちの魂の色は"スカイブルー"なんだぜ?
神殿神子レベルの純真無垢な乙女たちなんだぜ?
悪い奴にとってはチョロい相手だろ? いいカモだぞあれじゃぁ……」
「しかしながらたとえ類いまれな清い魂を持っていたとしても、彼女たちは神殿や我々管理者とは無関係の者たちです。
私は彼女たちへの加護には反対です。
もし万が一にも彼女たちがシンさんの配下にでもなれば……話は別ですが……」
「神と呼ばれている俺が仏教思想なのかな?を持ち出すのはちゃんちゃらおかしいかも知れねぇが……袖振り合うも多生の縁というじゃねぇか?
今回のように縁があった人たちだけは特別に……ってのはダメなのか?」
「……仏教思想?袖?縁???……不勉強で申し訳ありません。
仰っている意味を分かり兼ねます」
そんなことを話しながら俺たちがチラチラと女性たちを見ていたのが気になったのか、冒険者の女性を代表してエルフのシェリーが話しかけてきた。
「あの~、私たちに何か……?」
「いやそのぉ、なんだなぁ。あれだあれ。これからお前さんたちはどうするのかと思ってな。このまま分かれても大丈夫かなぁ?って、シオリと話していたんだわ」
「あ、そうでしたか……。
私たちはこれから依頼を受けた町"ノルム"に戻って、ギルドに今回の魔物溢れの件を報告するつもりです。
みなさんはどちらへ行かれるのか分かりませんが……もし方角が同じでしたら、よろしければ途中までで結構ですので一緒に行っていただけませんでしょうか?」
「俺たちはこれから神都エフデルファイの中央神殿へ向かう。
一気に中央神殿に転移しようと思っていたんだが……
"ノルム"までお前さんたちと一緒に旅をするのも面白ぇかも知れんなぁ。
ちょっとみんなに聞いてみるわ」
テントの中から神子たちが出てきた。
俺たちの会話が聞こえて、もう大丈夫と判断したのだろう、
冒険者の女性たちは、せいぜい二人くらいしか入れないような小さなテントからぞろぞろと7人もの女性が出てきたのを見て口をあんぐりとあけたまま驚く。
「なぁみんな。神殿に行く前にちょっと寄り道して"ノルム"って町にこの子たちと行きてぇんだが……いいかなぁ?」
「はい。上様の御心のままに」
「もちろん私たち神殿騎士はどこへなりとも上様と神子様方にお供します」
シオリは無言で頷いた。
神子たちのリーダー的存在と思しきソリテアという名の女性が皆に確認してから同意し……スケリフィがカークルージュと互いに頷き合った後、ふたりを代表して同意した。
「えっ? 貴方様は神様なんですか? ええっ? 神子様に? 神殿騎士様?」
「ああ。まぁ……そういうことになっているな。
俺はこの星を創造し、管理している者だ」
「そ、そそ、そうとはつゆ知らず、ご、ご、ご無礼をお許し下さい!」
冒険者の女性たちは皆が慌てて土下座した。
いやいやいや……逆に俺たちの正体がすぐに分かったとしたら、その方が気持ち悪いよな……。
神子たちも、神殿騎士たちも、全く同じグレーのロングワンピースにジーンズ、そして、靴はスニーカーだし……
俺はなにやら上下黒で異世界モノの漫画でも出てくる魔導士のような格好をしているし……ぜーったいに分かるわけがない!
「いやいや、土下座は止めてくれよ!
俺たちはこんな格好しているし……ふつうは分からねぇよ。
今まで通りでいいから、普通に話してくれ!
それとなぁ俺のことは"シン"と呼んでくれ。なっ!?」
冒険者の女性たちは土下座したまま暫くお互いの顔を見合わせた後、その状態でおもむろに頷き合ってから立ち上がった。
冒険者の女性たちは顔を見合わせながら、ばつが悪そうにもじもじしている。
獣人族の女性、ラフが勇気を出して話し出した。
「シンさん。うちらはみんな神殿騎士をめざしてるんです」
「え? じゃぁなんで冒険者をやってるんだ?」
「神殿騎士試験の受験料、金貨100枚を稼ぐためです。
ひとりあたり金貨25枚が必要なんです」
ラフが神殿騎士をめざしていると言い、続いてエルフのシェリーが、騎士試験の受験料を稼ぐために冒険者をしていると話した。
「「「金貨100枚!!!」」」
神子の何人かが同時に驚きの声を上げた。
そうだよなぁ。金貨100枚って日本円でいくらくらいに相当するんだろう?
1000万円くらいなのかな?
「おい、スケさん、カクさん、神殿騎士試験を受験するのに金が要るのか??」
「いえ、そんなことはありません。
事前の書類審査すらなく誰でも無償で受験可能です。
試験日当日に受験を申し込むことさえ認められています。
一体どこから金貨25枚なんてデマが流れたんでしょう?」
「ということなんだがシェリーさん。受験料が要るって一体誰が言ったんだい?」
「ノルムの町の統括神官様です。
金貨25枚をノルムの神殿に寄進して……
更に女性だけが統括神官様自ら検査をなさる身体検査を受けねばなりません」
「ん? 身体検査まであるのか? そりゃぁちょっとおかしいじゃねぇか?」
「男性は金貨25枚を寄進すれば受験資格証明書を発行してもらえるんですが……
女性の場合には身体検査が必要だとのことでした。
それにその身体検査をパスしても、統括神官様に"身体浄化儀式"をしてもらって清い体になったと認められなければ"受験資格証明書"を得ることができません」
「当然、身体検査とやらをする統括神官ってのは女性なんだよな?」
「いえ、統括神官様は男性です。
やせている方が多い神官職には珍しく、なんというか……ふくよかな方です」
「お前さんたち! 騙されてんぞ!!
金をだまし取られるどころか体まで狙われてんじゃねぇか!!
……なんだ! この世界の男はみんなクソクズゲス野郎なのか!?
許せんな! ったくよぉ! 俺がきっとその豚神官を成敗してくれる!」
冒険者の女性たちは顔を青くし……
冒険者たちを除くみんなが顔を見合わせて肩をすぼめた。
「ほらなシオリちゃんや。俺はさっきちゃんと穿った事を言ってただろ?
俺たちに出会わなければ彼女等は危うくクソクズゲス豚野郎のカモになるところだったじゃねぇか!? 危ねぇなぁ~。ゾッとしたぞ!
……よし! 俺は決めた! いいよなシオリちゃん、いや、ダメだと言っても、俺はこの子らを庇護下に置き、加護するぞ! 絶対にだ!」
シオリは目を閉じ苦笑いをしながらおもむろに頷いた。
「さてと、シェリーさん、ラヴさん、ラフさん、ミューイさん……
お前さんたちが望めばなんだが……神殿騎士見習いにならねぇか?
俺たちの仲間になって欲しいんだがぁ? どうだろうかな?
俺たちと一緒に中央神殿まで来ねぇか? もちろん無理にとは言わんが……」
「よ、よろしいんでしょうか?……うれしいです。ぜ、是非お願いします!」
「「「はい。お願いします!!」」」
シェリーが控えめながらもすぐに俺からの提案を受け入れ、他の皆も間を開けることもなくそろって受諾した。
「「「「ありがとうございます!!」」」」
「そうか! 良かった! 俺としても優秀な人材を確保できて嬉しいよ。
ああ……でもまずは見習いからな!
スケさん、カクさんの下で修行してもらって、実力がついたらすぐにでも正式な騎士になってもらうつもりだ。
焦らず、無理せずにがんばってみるがいいぜ!」
「「「「はい!!」」」」
しかしまさか神殿関係者にクソクズゲス野郎がいるとはなぁ……
それも統括神官だぜ!? そんな奴が豚野郎だとはなっ!! ったく!
他の神殿もすべて調べなきゃいかんな!
同様のクソクズゲス野郎がまだまだいるかも知れん……
クソクズゲス野郎ども!!首を洗って待ってろよ!!
みんなまとめてアマゾネス・オークの慰み者にしてくれる!
お読み下さりありがとうございます!
m(_"_)m
2019.11.22:会話文末句点消去。ルビ追加。表現等を一部修正。加筆。