第016話 そしてみんなが嫁になった?
「まぁ入ってくれ」
ソリテアが俺とシオリが待つ俺の部屋へとやって来た。
俺たちは彼女を部屋に通す……。
夕食を終えて、みんなは自室へと戻っていった。
今頃はみんな自室で寛いでいるだろう。
キャルとシャルには神殿騎士見習いの獣人族の女性、ラフの部屋に遊びに行ってもらっている。
「それでどうだった?」
以前、ソリテアには、みんなの本音を聞き出すように頼んだ。
その結果について報告に来たのだ。
みんなは"俺の嫁になること"を本心ではどう思っているか?
それを彼女には聞き出してもらっている。
「やはり全員が心の底からシンさんの妻となることを望んでいます」
「貴族のお嬢さんもか?」
「はい。ゼヴリン・マーロウは特に強く望んでいます」
ゼヴリンは侯爵家の四女で、小さい頃から高度な治癒系神術が使えたことから、彼女はみんなから聖女と呼ばれていた。
その能力の高さゆえ、可哀想に彼女は本人の意思は無視され、神子になることを神殿から強要されたらしい……。
これは俺がゼヴリンと会話した時に、その話の内容から感じ取った印象である。
ゼヴリン自身は『意思に反して神子にされたことを快く思っていない』などとは一言も言っていなかったことは確かなんだが……。
俺は無理矢理神子にされてしまったゼヴリンが、今度も彼女の意思とは無関係に俺の嫁になれと言われ、自身の身の上を悲観しているのではないかと、俺はずっと考えていたから、思わずソリテアに確認してしまったのだ。
「そうか……。分かった。ソリテア、ありがとうな。助かったよ」
「いえ……でも……シンさんは本当にみんなを妻として迎えて下さるんですか?」
「ああ、もちろんだとも!望んでくれるんなら、俺は喜んでそうするぜ。
……だが何でそんなことを聞くんだ?」
「統括神官様と代官様から『后をひとりに絞るように』との横槍が入ったと聞きましたので、私も含めて皆が心配しておりまして……」
「ははは。安心しろ!ヤツらにそれを決める権限はねぇ!どうするかは俺が決めることだ。みんなにもそう言ってやってくれ!」
「はい。安心しました!嬉しいです。早速みんなに伝えてきます」
ソリテアはホッとしたといった表情を浮かべ、この場を立ち去ろうとする。
「あ、ソリテア!」
「はい?何でしょうか?」
彼女の身体は部屋の入り口の方へ向いていたが見返り、俺の表情から用件を推し量ろうとしているようだ。
「お前さんの実家は農家だったよな?」
「はい。そうです」
「それでな、お前さんの家族が望めば……なんだが、お前さんの家族もここへ来てもらったらどうだろうかと思ってな。
幸い植物プラント兼住居も今なら空いていることだし、家族に聞いてみたらどうだろう?」
「ああ……ありがとうございます。両親に手紙で尋ねてみます!」
「手紙で聞いてたんじゃあ時間が掛かってしょうがねぇだろ?明日にでも俺が連れてってやるよ」
「はい!ありがとうございます!」
「それから、実家が農家だという他の子にも聞いてみてくれねぇか?」
「はい。承知しました」
「そうか、じゃぁ、その子たちにも俺が家族のところに連れてってやるということを伝えてくれ」
「はい」
ソリテアは柔らかな笑顔を浮かべながら、この部屋を去った。
俺とシオリはそんな彼女を笑顔で見送る……。
◇◇◇◇◇◇◇
「シオリちゃん、お前さんだけには俺の本心を言う。聞いてくれるか?」
「はい?シンさんの本心ですか?」
「ああ、明日全員を俺の嫁というか婚約者にすることについてのな」
俺はシオリにだけは、正直に俺の考えを話すことにした。
彼女たちが本当に自身の意思で俺の嫁になりたいと思っているのか疑問に思えて仕方ないこと。洗脳によるものだとの思いが払拭できないこと。
それゆえ、俺は彼女たちとは『男女の関係』になるつもりはないということ。
まずは、彼女たちを、この惑星の色々な場所に連れて行き、多様な価値観に触れさせたいと考えていること。心に変化が生まれることを期待して……。
そして、彼女たちに、自身でやりたいことが見つかったのなら、俺は全力で応援し、彼女たちが望む道へと快く送り出してやろうと思っていること。
……そんなことをシオリには話した。
「僭越ながら……恐らくシンさんの目論見は失敗するでしょう。
失礼ですが、シンさんのお考えは"エゴイズム"としか思えません。
今の彼女たちの気持ちを否定する根拠が薄弱です。意味を分かり兼ねます。
御為ごかしではありませんか?偽善です。
今現在の彼女たちの思いを受け止めることこそが、本当の意味での優しさだと
私は愚考致します。
彼女たちの思いを受け入れるのか、拒絶するのかは別にして……受け流すのではなく、まずは真摯に受け止めることだと思います」
「彼女たちが"神殿"に洗脳されていないと言い切れるのか?」
「はい。彼女たちの魂の履歴をご確認いただければお分かり頂けると思います」
シオリは続ける……
「如何な理由でそう思うようになったにせよ、彼女たちが幸福に思っていることを神であるあなたであれば、頭ごなしに否定しても良いとお考えなのでしょうか?
彼女たちの"幸福"を勝手に決めて、押しつけようとしているのはあなた自身じゃないのですか?違いますでしょうか?
"俺がルールだ!"をここでも押し通されるおつもりですか?」
「うぐっ!そ、そういうつもりではねぇんだが……な」
シオリの辛辣な批判に、俺は考えがブレる……。
彼女がこれほど強い口調で意見するなんて……今まで見たことがない。
シオリが言葉を継ごうとした時だった……ドアがノックされる。
「はい……」
「失礼致します。火急にお知らせしなくてはならないことがあります」
ドアの向こうからは聞いたことがない女性の声がした。
その声にシオリが対応する。
「シンさん、彼女は私の手の者です。……許します、入りなさい!」
「ははっ!」
黒装束に身を包んだ女性?が物音を立てることなく、スッと入ってくると俺たちの前に跪く……。
「彼女は"エン"と申します。忍び部隊ムンライトの副隊長を務める者です。
彼女に申しつけてずっと代官を見晴らせておりました。
……エン、何事ですか?」
「はっ!実は代官に良からぬ企みが……」
忍び部隊ムンライトの副隊長、エンからの報告内容は……
代官が后になれなかった神子を狙っていること。
后になれなかった神子たちを仲間内で凌辱して、その後、奴隷商人に"性奴隷"として売り渡すつもりでいること。
力尽くでも、俺には后を"ひとりだけ"選ばせ、他の6人を自分たちのものにするつもりであるということ……。
というものであった。
「ご苦労様。よく知らせてくれた。礼を言うぜ」
「エン、ご苦労様。引き続き監視を続けなさい」
「ははっ!失礼します!」
エンはまるで掻き消えるかのごとくいなくなる。
「シンさん、どうされますか?」
「ヤツらごときがどうこうすることはできねぇだろう?
俺は予定通り、神子全員を嫁にすると宣言するぜ。
なんかしてきたらボッコボコにしてやるだけだ。ははは」
「はい。私はアマゾネス・オーク・クイーンに連絡を取って、受け入れ体制を整えさせておきます」
「おう!頼む」
シオリとその手の者に悪いから言わなかったのだが……
実はさっき代官と会った時に、ヤツがあまりにも胡散臭かったので、俺はヤツの会話を傍受できるようにしておいたのだ。
だから、ヤツらの計画は、俺は既に分かっていたし、その傍受した内容もすべて記録してある。
ヤツらが明日の計画を話し合っている時が、ちょうど夕食時だったので、折角の飯が不味くなった。
その"礼"もかねて明日はヤツらをボッコボコのギッタンギタンにしてやることを俺は心に誓っていたのだ。
「話が途中になっちまったが……嫁さんの件は、シオリちゃんの意見をよく考えてみるわ。忌憚のない意見を聞かせてくれてありがとうな」
「いえ。出過ぎた真似をしてしまい申し訳ありません。ちょっと熱くなってしまいました。分を超えた物言いでした」
「いや、諌言耳に逆らう……だな、耳が痛い話だったぜ。ありがとうよ」
シオリはほのかな笑みをたたえながら、黙って頷いた。
「しかし……なんか変なんだよ。
俺は地球にいた時は"ただひとりの女性"を愛していてな、他の女性を好きになるようなことは絶対になかったんだが……。
シオリちゃんだと抗えねぇかも知れねぇが、たとえ、すごい美人が素っ裸で言い寄ってきても、俺の心はびくともしねぇ自信があったんだ……。
だから、みんなから俺は、理性がスーツ着て歩いているようなヤツと揶揄されていたんだがな……。
それがどうだ、こっちに来てからは、ちょっと気持ちが通じ合う女性がいると、なんだかすぐに好きになっちまうんだよ。どうしちまったんだろう?」
「あ、それは……。
現在ご使用中のお身体は、今回の実験がスムーズに進むように調整されていますので、その影響が大きいのかも知れません」
「な、なに?」
「通常とは異なる点が主として2つあり、1つ目がパッシブスキルとして"魅了"が常時発動しているということです。ただし、対象は女性のみです」
「えっ!?」
「そして、2つ目が好意を寄せられる女性とある程度気持ちが通じ合うと、すぐに愛情を感じてしまうようにプログラミングされていることです。
そのプログラムは、シンさんの身体の基本システムレベルで実行されています。
俗に"惚れっぽい人仕様"と呼ばれる仕様です」
「えーーっ!そうなのかっ!?」
「地球時代に、モテる男性がシンさんの周りにいたかと思いますが、そういう人は決まってパッシブスキルとして"魅了"を持っています。
また、惚れっぽい人もいたかと思いますが、そういった人は"惚れっぽい人仕様"の基本システムが組み込まれている肉体なのです」
「えーーーっ!ということは、現在の俺は、"モテる惚れっぽい男"仕様ということなのか?」
「まぁ……平たく言えば……」
なんか複雑な心境だ……。
聞かなきゃ良かった……。
◇◇◇◇◇◇◆
気持ちのいい朝……と言いたいが、なんか身動きが取りづらい……。
ん?んんん!?
ん!!
昨夜は、俺の右にキャルが、キャルの右にシャルが寝ていた。
眠りについた時には3人だけだった。
だが……今朝目が覚めると……
俺はキャルの方を向いて、横向きで寝ている。
俺の左、背中に顔を引っ付けるように寝ているのはスケさん?
俺の左、腰のあたり?いや俺の尻の位置に顔があるソリテア!?
俺の右、股間の位置にはインガの顔!!
俺の右、インガの頭を避けるように足を伸ばしているキャル。
キャルの右にはシャル。
そして、シャルの右には……神殿騎士見習いの獣人族女性ラフ!
俺のベッドはキャルとシャルの寝相がどれだけ悪くても大丈夫なようにと、
"スーパー、スーパーワイドキングサイズベッド"
なので、これだけの人数が寝ていても、まだまだ余裕がある!
そうなんだけど……みんないつの間に入ってきたんだろう?
俺は全く気付かなかった。
さっき目を覚ますまでこんな状態になっているとは全く気が付かなかったのだ。
俺はみんなを起こさないようにソーッとベッドから抜け出す。
そして、身支度をしてから食堂へと向かい、朝食の準備をした。
◇◇◇◇◇◆◇
神殿の"謁見の間"は、入り口から幅広い赤い絨毯が奥へと続いている。
入り口から見みると、正面の壁際が他よりも3段高い舞台のようになっているのだが、その中央に玉座があり、俺は今そこに座っている。
俺の膝の上にはキャルとシャルが座っており、俺の右斜め後ろにはシオリが控えている。
玉座がある舞台のようになった床へと上がるための3段の階段。その前、俺から見て右側にスケさんが、左側にカクさんが、俺たちを守るように、入り口の方を向いて立っている。
スケさんの右斜め前にはシェリーとラヴが、そして、カクさんの左斜め前には、ラフとミューイが、赤い絨毯を間に挟んで、互いに向かい合うように左右2人ずつ分かれて立っている。
そして、彼女たち神殿騎士見習いから少し離れて、彼女たちと同じように、赤い絨毯を挟んで向かい合うように神官たちが並んでいる。
30人くらいはいるだろうか?
后候補の神子たちは俺の正面の赤い絨毯の上で跪いている。
俺から見て正面にはゼヴリン・マーロウ、右にソリテア、左にインガ。
彼女たちの後ろは、右にタチアナ、左にはヘルガ、その後ろ、右にカーラ、左にディンクが跪いている。
神殿騎士試験受験生3人は、まだ神殿関係者ではないので自室で待機している。
キャルとシャルは俺の膝の上で、ニコニコしながらみんなを見ている。
入り口の扉が開かれた。
むさい男が2人、ゆっくりと入ってくる。
統括神官のアルチエ・ルフクと代官のムケッシュ・ジェイペズだ。
入り口の扉が閉まる際、扉の向こうに神殿騎士の姿がチラリと見えた。
代官の息の掛かった者たちであろう。
マップ上で確認すると、扉の向こうで待機している神殿騎士は11名。いずれも魂の色は黒みがかった赤色をしている。クソ野郎どもだ。
こりゃぁ、大漁だ!アマゾネス・オークたちが喜ぶぞ。ふふふ。
統括神官のアルチエ・ルフクの魂の色は"青"だ。この男は代官に利用されているだけのようだな。
代官のムケッシュ・ジェイペズについては言うまでもなく、ほとんど黒に近い赤である。
后候補の神子たちの後ろ、カーラとディンクから離れること5mくらいの位置でむさい男2人は歩みを止めて跪くと挨拶の言葉をつらつらと述べた。
それが終わると統括神官が厳かに儀式を執り行うことを告げ、后候補の神子たちの経歴を述べていく。
そして、いよいよ俺が后を選ぶ時がやって来た。
「それではこれより、上様に、ここにいる神子たちより、"おひとり"、お后となられる方をお選びいただきましょう!では、上様、お願いします」
「おう!分かった!俺が后に選ぶのは……」
「はい。上様がお后に選ばれる方は!どなたでしょうか!?」
「俺の嫁さんになりたい人ーーっ!」
"はーーーーいっ!"
神子たち全員だけでなく、キャルにシャル、スケさん、カクさんも、シェリーにラヴ、ラフ、ミューイ!
んん?シオリまでも小さく手を挙げている!?
ええーいっ!面倒だ全部まとめて……!!
「よし!今、手を挙げたものすべてを俺の嫁さんにする!
これに異議を唱えることは許さん!以上だ!」
「お、お待ち下さい!お戯れは止して下さい!それは許されません!」
代官が異議を唱える!
統括神官は腰を抜かさんばかりに驚いている。
「ほおぅ?許されねぇだとぉ?てめぇ何様のつもりだ?」
「と、とにかく、おひとりだけでないと困ります!」
「困るだとぉ?誰がだ?てめぇがだろうが?違うか?」
そう言いながら俺はキャルとシャルをシオリに預けて、シオリに目配せする。
シオリは頷くとキャルとシャルを連れてマンションの自室へと転移していった。
「いえ、私ではなく、このような前例はなく……」
「今回のこれが初めてなんだぞ?前例なんぞあるわけねぇだろが?」
こう言いながら、俺は神子たち、神殿騎士見習いたちを俺の側へと転送する。
スケさんとカクさんが剣を鞘から抜き放つ!
「んぐぐ……。とにかくおひとりだけに……」
俺は神術、"威圧"を代官に向かって発動する。
「だ・ま・れ!下郎!」
「ヒィーーーッ!」
ここからコイツを問い詰めていくのだが、そうなると神子たちにとっては非常に不快なことを彼女たちの耳に入れなくてはならない。
だから、彼女たちと神殿騎士見習いたちを、まとめてマンションの1階ホールへと転送することにした。
「みんなマンションの1階ホールで待っててくれ!……転送!」
スケさんにも聞かせたくなかったので、ここにはカクさんだけを残した。
さてと……これで心置きなくコイツを処断できる。
その時、入り口の扉が勢いよく開かれる!
代官の悲鳴にも似た声を聞きつけて、悪神殿騎士の一団が乱入してきたのだ。
まぁ、たかだか11人なんだけど……。
「お代官様!大丈夫ですか!おのれ小僧!」
そう言うと悪神殿騎士どもは一斉に俺に斬りかかってきた!
俺は"見えざる神の手"を12本出して代官と悪神殿騎士どもを掴むと彼等を持ち上げてから、床へとたたきつけてやった!
ぶべっ!ぐわはっ!げふっ!………
「修復!……浄化!」
代官どもは全身打撲に複数の複雑骨折、大量に吐血して伸びてしまったので取り敢えず治療してやる。
そして、コイツらの血で、床や絨毯が汚れてしまったので、浄化によりそれらを綺麗にしておく。
代官が目を覚ました……。
「おい代官!てめぇの悪巧みはまるっとお見通しだ!ほらこれが証拠だ!」
そう言って俺は、昨日代官が俺との謁見の後で、側近に悪巧みを話している時の記録映像を見せてやる。
/*--> ここから記録映像開始……
………途中省略………
「神が后として選ばなかったんだぜ?つまりは神に見捨てられたんだよ。
捨てられたんだからそれはもうゴミだ!
どうせ捨てるゴミだったら俺がもらって楽しんでも文句はねぇだろう?違うか?
しかも、そのゴミが金にも化けてくれるんだぜ。一挙両得じゃねぇか?」
「なんかむちゃくちゃな理屈ですね」
「明日は絶対に、何としてもヤツには后をひとりだけ選ばせねぇとな!」
「どうしてひとりだけなんです?」
「あたりめぇだろうが!性奴隷は多いに越したことはねぇだろ?違うか?」
「はぁ……」
「ヤツが后をひとりに絞らずごねた時は、力尽くで言うことを聞かせるからな。
俺の息の掛かった神殿騎士10人をちゃんと集めておけよ。
俺がたっぷりと可愛がった後、"ゴミ"はちゃんとお前たちに回してやるからな。期待していいぞ。ゲヘヘヘヘッ!」
//<-- ここまでが記録映像 --*/
「どうだ?言い逃れできるか?」
「……く、くそっ!」
『もしもし、クイーン!聞こえるか?俺だ。シオリから聞いてると思うが、そっちの準備はできてるかぁ?』
『はい。上様。いつでもどうぞ』
『今回はちょっとばかし人数が多くてな、全部で12人だ。大丈夫か?』
『はい。大歓迎です。これで今シーズンはオス狩りをしなくても済みそうです。
ありがとうございます』
『おお!それは良かったな。でもな、まだまだこれからもそっちへ送るヤツが出てくるかも知んねぇ……』
『はい。大丈夫です。多い分には何とでもなりますから……』
『そうか……色々面倒を掛けるがこれからも頼むな!』
『はい。喜んで!』
「代官!てめぇ……俺のかわいい嫁たちを性奴隷にしようとは……ふてぇ野郎だ!ただじゃおかねぇから覚悟しろ!」
「ひぃ~っ!」
「それじゃぁ、てめぇらに判決を言い渡す!
主文!てめぇらをアマゾネス・オークへの生け贄の刑に処す!
抵抗は無意味だ!凌辱される者の苦しみをたっぷりと味わいながら、生きたまま食われてこい!以上だ!
ばっははーい!!……転送!」
「ゆ、ゆるしてくだ……」
クソ代官はガタガタ震えながら消えた。
悪神殿騎士たちも恐怖に顔を引き攣らせながら消えていった。
「おい、統括神官!アルチエ・ルフクさんよぉ、おめぇ、しっかりしろや!
あんなクソ野郎を代官に任命しやがって!おめぇの目は節穴か?」
「も、ももも、申し訳ございません。
どうか、どうか命ばかりはお助けを!ひぃ~っ!」
気の小さい男だ。ガタガタ震えている。
「おめぇの魂の色は青い、つまりは善人だっちゅうことは分かってる。
罰を与えようとは考えてねぇから……そう怯えるな」
「は、ははは、はい!」
「いいか?おめぇには神眼を授けてやる!
今後は二度とあいつのようなクソ野郎に騙されるんじゃねぇぞ!」
「は、はは、はいっ!」
「ようし!じゃぁちょっとこっちへ来いや!
……大丈夫だ、痛ぇことはしねぇから。
神眼を授けてやるだけだ。ったく、気が小せえなぁ~!」
俺は統括神官、アルチエ・ルフクに加護、神眼を付与してやる。
ん?リブートを掛けなくてもいいみたいだが……念のために……。
「リブート!」
一瞬、アルチエ・ルフクの意識が飛ぶ……。
「はっ!」
「どうだ?周りのヤツを見てみな!
下向きの矢印みたいなのが頭の上に見えるだろ?」
「は、はい」
「その色が魂の質を表している。つまりは、魂の善し悪しは色を見りゃ分かるってことだ。青から緑、黄色、オレンジ色、赤、……黒と順に、黒に近い色ほど、魂がより悪ぃことを表すんだ。
赤い色からは私欲のために人殺しをしてることを表している。
色は無段階に色々な色が付けられているからな。注意しろ。
今度からはこの魂の色をしっかり見て、おめぇに近寄ってくるヤツの善悪を判断するんだぞ、いいな?」
「は、ははは、はいっ!ありがとうございました!」
「おう!しっかり頼むぜ!」
俺は呆けたようにこちらを見ている他の神官たちに目を向ける。
「ということで、俺は、俺の側にいたすべての女性を妻とする。いいな?」
"はいっ!"
全員が一斉に返事をした。
「ようし!じゃぁみんな!それぞれの持ち場に戻ってくれ!」
そうだ、神殿騎士を11人もアマゾネス・オークへやっちまったんだっけ……
「おっと、そうだ…悪神殿騎士を11人も処分しちまったからな、至急、新規採用する必要があるな。募集をかけておいてくれ!
……アルチエ!しっかり応募してくる人物を見極めるんだぞ!いいな!」
「は、はいっ!」
統括神官は緊張している様子だ。大丈夫かな……。
クソ真面目だからこそ、こういう反応をするんだろうけどな。
◇◇◇◇◇◆◆
マンションの1階ホールへと転移してくるとみんなが揃って待っていた。
「おう!済んだぜ!みんなを嫁と認めさせてきたぞ。安心しな!」
みんなに安堵の表情が現れる。
「代官はどうされましたか?」
珍しくゼヴリンが口を開いた。
「ああ、ヤツと取り巻きの悪神殿騎士は、まとめてアマゾネス・オークへの生け贄にしてやった」
「当然の報いですわね。貴族としてあのような輩は断じて許せませんわ」
「ああ、最低の人間だからな。
今頃凌辱される者の気持ちをたっぷりと味わっていることだろう」
「それで……その後はどうなりますの?まさか生かしておくのでは……?」
「いや、多分……アマゾネス・オークに活け作りにされて生きたまま食われちまうだろうな」
みんなは想像したのか青くなっている。
「いけづくりってなぁにぃ?」
(うみゅ?)
し、しまった。キャルとシャルもいたのか!
「い、生きたまま食べられるように、料理したもののことだよ」
「ふーん。でもねぇ~キャルもシャルも、おさしみはたべられないなのぉ~。なまざかなはNGなのよぉ~」
(こくこく!)
「そうかぁ。でも大きくなるとね、きっと食べられるようになるよ」
「ふぅ~ん」
(ふみゅ?)
ふぅ~、なんとか残酷な話に持って行かずに済んだな……あぶねぇあぶねぇ。
「さてと、それじゃぁ昼飯前に、ソリテアたちの両親のもとへ行ってくるか?」
実家が農家だという神子は、ソリテアにヘルガ、そして、カーラである。
みんな両親のもとへ連れて行くことになった。
彼女たちの家族に、この神殿前の植物プラント兼住居への移住を勧めるためだ。
キャルとシャルも一緒に行きたがったが、今回もラフに子守を頼んだ。
以前、口減らしのために娘が娼館に売られることもある…とソリテアから聞いている。
それで、万が一にも、家族が引き離される場面に出くわしたらマズいと思って、キャルとシャルを連れて行かないことにしたのである。
キャルとシャルにはそんなシーンを、今は絶対に見せたくない。絶対に。
キャルもシャルもちゃんと聞き分けてくれるからありがたい。
「それじゃぁ、行ってくる。シオリちゃん、後は頼む。
代官の手下がまだいるかも知れねぇからな、みんな外出は控えてくれ!」
"はい!"
俺は、スケさんとカクさんも連れて行くことにした。
ソリテア、ヘルガ、カーラにスケさんとカクさん、そして俺が、今回の旅のメンバーだ。
まずはソリテアの実家へと転移することにする。
「さぁ、それじゃぁ!行こう!……転送!」
どうもシックリ来ないところがあります。後に大幅な修正が入るかも知れません。
その場合はご容赦を。m(_"_)m