page2:安藤さんへのお願い
ガラガラガラ
「こんにちは、森久保先輩」
「こんにちは、安藤さん。実は今日は活動があるんだ」
今日は活動があるんだがまぁ、活動と言っても個人的な要件なんだが。
「はい。なんでしょう」
「活動と言っても、僕の個人的な要件なんだけど大丈夫かな?」
実は僕は小説を書いてはいるが、出版社の応募に投稿する以外していないので、誰かに読んでもらったことがない。
いつも、本を読んでいる安藤さんに読んでもらって感想やアドバイスを貰えたらと思っている。
「個人的な要件ならお断りします」
僕はその返しは予想外というか、以外だった。真面目な安藤さんなら引き受けてくれると思ったのだが、そうは引き受けてくれなさそうだ。
「そこをなんとかお願いできないですかね。非常に困ってるんですよ」
申し訳なさそうに、頭を下げて頼んでみた。
「まぁ、いいですよ。途中で私が嫌だと思ったら今日は帰らせていただきます。あと、2度とこの部に来ません」
また凄い返しが来たのでビックリしてしまった。しかし、ここでひいてしまっては2度と誰かに感想などを近くで聞けなくなってしまう。なら、ここは覚悟を決めてでも行くべきと考えるべきだ。
「わかりました。それで構いません。お願いします」
と言いながら僕は印刷した原稿用紙を安藤さんに渡す。
「なんですかこれは?」
意外そうな顔をしていたので補足を言う。
「これは僕が書いた小説なんですけど、あいにく友達がいないから感想を聞けなくて困っているんです。そこで、安藤さんに読んでもらって感想を聞きたいと思いまして...」
最初の声に比べて小さくなっていく僕の声に安藤さんは溜息をつきながらこう言った。
「はぁ...。そうだったんですか。タイトルからして私の読まないジャンルですので、素人並みの感想しか出来ませんよ?」
そう言ってくれただけで、僕は内心ほっとして安藤さんにこう呟いてしまった。
「安藤さんって、優しいですね。少し安心しました」
と言うと、安藤さんは窓の外を見ながら黄昏れるかのようにこう言った。
「私も友達はいませんし物事を頼まれることはよくありますが、大体がくだらない頼まれ事なので断っているんですよ。ですけど、部活の活動という意味では正しいというのもあります。それと、部長が書いた小説なら読んでみたいと私は思うんですよね」
安藤さんは真面目な故に大変なことが沢山あるのと、自分の好きなことには正直というのが分かった。だから、何となく僕はこういってみた。
「安藤さん。宜しければこれからは敬語とかなしで読書友達として仲良くして貰えませんか?」
内心かなりの勇気を出した。彼女は友達がいないというのは、友人関係が難しい人と捉えられるから断られる覚悟で言った。でも、安藤さんとなら僕は仲良くやって行けると思えた。なぜなら、彼女と僕の考えは似ているから。ただそれだけだ。
「その返事は森久保先輩の小説を読んでからにさせてもらいます。感想は後日ということで持ち帰って読んでもよろしいですか?」
こんなにも優しいとは思っていなかったので、内心嬉しい。
「全然かまいませんよ。明日まで楽しみにしています」
と、僕は笑って言った。
「ありがとうございます。それではまた明日ここで」
と言い、綺麗な髪の毛をなびかせながら安藤さんは文芸部を立ち去った。今日はまた充実した日になったなと思いながら僕も文芸部を後にした。明日がまた楽しみと思えたのは久しぶりだった。
少し進展させてみました。これからも、少しづつ進めていきますのでよろしくお願いします。