page1:霞ヶ丘文芸部の中
「森久保先輩。今日の活動はなんでしょうか」
4月20日。桜が散る日の今日も僕たちはここ、霞ヶ丘高校の文芸部で活動をしている。
ちなみに文芸部といっても2人しかおらず休部してもおかしくない部活だ。
部長としてやっている2年の僕、森久保政敬と、1年の安藤由奈さんの2人しかいないのだ。
顧問の先生さえ1週間に1度くる程度なので基本いつも二人だけの活動になっている。
そして今、安藤さんが僕に質問を問いかけているのであった。
「非常に言いにくいのですが、今日も何も決めていないんですよね」
元部長が不登校になってしまったことにより必然的に僕が部長になってしまったのだ。
元部長は根暗な性格で部活内ではほとんど話さなかったのでよくは知らない。
だが僕が1年の2月頃急に不登校になったらしく原因はクラス内でのいじめだと聞いたのだが、僕は少しだけ同情はしたもののどのようなものだったのかは知らないので、気にしないことにしていた。
だから、部長とはいえ活動の内容を決めたことがないため活動内容はないんだ。
「それでは、私は読書をしていますので、先輩も読書でもしていてください」
彼女、安藤さんは真面目で気の強い性格なのであたりが少し強い。
「はい…。あ、なんで安藤さんってわざわざこの部活に入ってまで読書するんですか?」
僕は彼女が入部してから何日か部活を一緒にしたが、いつも読書をしている。
自分も読書はするのだが、あいにく文芸部では本を読まず小説を書いている。
理由は小説を書くときは静かなところで邪魔されずやりたいからだ。
家では親がうるさいのでできないというのもあり、部活の時間と親が寝た時間に小説を書いたりする。
「特に理由はないですが、静かなところで読みたいので」
どうやら、彼女と僕は少し似たような考え方があるのだと思い、これからあと1年この部活をやるうえで、何か少し変わった1年になるのだろうかと、僕はこの時思う。
そして、少し彼女のことを知りたいと思っていた。
「そうなんだ。僕も本を読むなら静かなところだと思うからわかるよ」
その後、下校まで特に何も話さず、明日また少し話そうと森久保は思っていた。