初外交1
〜港町ノルー〜
アーツは王国の魔導船に誘導されて来た日本国の船を見て自分の目を疑った。
「まるで城塞ではないか!」
思わずそう言ってしまう程に。しかし、それも当然と言える。第一に聞いただけと実際に見るのは格段に違うし、第二にグルバニア王国の外交相手の主な国は文明圏外国であり、文明圏外国家の常識として木造の魔導船が船舶として使われているからである。この様にアーツが驚いていると、日本国の船から小型船が来るのが見えた。アーツは小型船に乗っている日本人達を見てこう思った。
(きっと先頭にいる礼服を着ているのが外交官だろう。しかし、その後ろにいる濃淡様々な緑の混ざった変な服を着ているのは何なんだ?)
この様にアーツが考えていると桟橋に小型船が接岸し、日本人達がやって来た。アーツは自身の不安を察知されない様に少し強めに自己紹介した。
「私は石原と申します。貴国との外交を務めさせていただきますので、よろしくお願いします」
先頭の日本人はそう言った。アーツは自分の予想があっていた事から日本に対しての恐怖と不安を幾らか軽減したのであった。
私は石原といって日本の外交官である。
今、私の目の前に相手国の外交官らしき人物がいる。ここに至るまで本当に大変だった。3日も船に揺られて、言葉も文化も通じるかわからない相手にこちら側の条件を飲ませる為にどうすればいいかなどと考えなければならなかったからだ。幸いにも、"言葉"は通じるらしいが相手がどんな条件を出して来るかわからない今気を引き締めなければならない。そう思った矢先に相手が自己紹介をして来た。
「私は、グルバニア王国の外交局次官のアーツ·モルウェイだ。よろしく」
そう彼は言うと、今まで被っていたシルクハットの様な帽子を取った。私は軽く会釈しつつ自己紹介した後に頭を上げようとしたが、彼の頭の少し上を見て私は固まった。何故なら……彼の頭には兎の耳がついていたからである。
「どうかしました?」
彼はそう問いかけてきた。そして、私の目線の先に気づいた時、彼はこういった。
「ああ、耳ですか、日本国では珍しいですか?」
咄嗟に私は叫んでしまった。
「珍しいどころか日本には居ないのですよ!」
一瞬彼の顔が強張った気がしたが、彼はこういってきた。
「そういえば、日本というのは聞いた事がない国名ですが、一体どんな国何ですか?」
そう言われ私は、日本についてかいつまんで話した。産業や文化、平和主義だということ、そして、何故かこの世界に転移して来た事。彼は私の話を聞いている間様々な表情をしていたが、彼は最後にこういった。
「では、あそこの馬車に乗ってください。私の知りうる範囲で教えて差し上げましょう」
と。