初接触
〜グルバニア王国上空〜
統合暦14056年7月のことだ。
アーク・ミルガーは空を飛んでいた。そう、飛竜に乗って飛んでいた。アークの後ろには部下である東部方面軍第21飛竜偵察分隊の隊員達が飛んでいた。
「平和だなぁ……皇国もこちら側には攻めて来ないし、こっちは何もなくてありがたい。」
そういったアークの平穏な日常は司令部からきた伝令用飛竜からの一報により粉々に砕け散った。
「緊急事態発生!緊急事態発生!魔導波感知器から魔導波反応を確認!第21、22、23偵察分隊は直ちにノルー方面に向かうこと!」
そう言って伝令用飛竜は飛び去っていった。
「はぁ……何であんなちっさい港町ノルーなんだ?まぁ行くぞ」
そう言ってアーク達第21偵察飛竜分隊は港町ノルーに向かって飛んで行った。
〜ノルー上空〜
ここには運良くノルー付近を飛んでいた第23偵察飛竜分隊がいた。
「何が来るんでしょうか?」
隊員の一人がそう問うた。
「野生の飛竜かも知れないし……」
「皇国の新兵器かもなのだぜ!」
それに隊長が答え、お調子者の隊員が途中で話に割り込む。
「じゃ、どんなのが来るんだ?」
「きっと、ど派手ですごいやつなんだぜ」
と、隊員が軽口を叩いていたら、
「おい、なにか来たぞ!」
視力の良い隊員達の中で特に目が良い隊員がそういった。
「軽口は辞めだ!各自単眼鏡で確認しろ!」
"それ”は港町ノルーの南地区の方に東から海を越えてやって来たようだった。
「あれは……なんだ?」
隊長のその言葉は隊員達の気持ちを代弁していた。"それ"は鋼の羽ばたか無い変な飛竜で片翼に2つ回る剣が付いていた。
「やはり、あれは皇国の新兵器なのでは?」
隊員が隊長に向かって聞く。
「ああ、きっとそうだな。だから、我々はあれを撃墜すべきなのだ」
「そ……そんなことできる訳が……」
隊長が言った答えに隊員は、反論する。
「では、我々の郷土が国が皇国に侵されるのを黙って見てろとでも?いいか、我々が乗るこの飛竜はたしかに小さい、そして火炎放射量も少ない、だがな、速い!最高時速315kmだ!そして、到達高度は4000mまでいく!だから大丈夫だ、ついて来い!」
そして隊長が言い切ったあと隊員達は一致団結していた。そう、あの鋼の飛竜を倒すために。
〜第21偵察飛竜分隊〜
「見えてきました!ノルーです!」
そう隊員に言われて見れば、ノルーはもうすぐそこだった。
「アーク隊長!左側から第22分隊です!」
別の隊員からの連絡は私を心強くするのに十分だった。そして、私は指示を出す。
「皆、単眼鏡で何が来ているかを確認しろ!もし、皇国の軍ならば迎撃するんだ!いいな!」
「「「はい!」」」
そう部下達は答えてくれた。そして、
「アーク隊長!第23分隊が突撃体制に入っています!突撃対象は……皇国の新兵器と思われる鋼の飛竜です!」
悪い知らせが入った。
我々偵察飛竜分隊は偵察との名がついているものの、王国上空の哨戒とそこで会った敵の迎撃をする部隊だ。が、相手は皇国の新兵器かも知れないのだから我々では非力……しかし、もう第23分隊は突撃体制に移行している……
「いいか、我々も第23分隊に続いて突撃するぞ!突撃体制に移行しろ!」
「我々第22分隊も突撃するぞ!」
「「「「「「オォォォ」」」」」」
どうか上手くいってくれよ……
そうアークは思うのだった。
〜ノルー上空〜
「突撃〜」
その言葉と共に第23偵察飛竜分隊は自衛隊のP-3C哨戒機に向かって火炎放射の準備をしながら飛んでいく。だが、放った火炎はP-3C哨戒機には当たらなかった。
〜第21偵察飛竜分隊〜
「なにっ?」
私は自分の見た光景が信じられなかった。最高時速315kmを誇るグルバニアの飛竜の全力突撃を回避し、我々が届かないだろう目測8000mにまで飛び去ったからだ。
有り得ない……そう思いつつ私は新たな指示を出した。
「全員突撃辞め」
そう言って徐々に減速しつつ上を眺めた。上では鋼の飛竜がルノー上空を旋回しており、それを何度か繰り返した後に首都の方へ向かって飛んで行く姿が見えた。
そして、私は思った首都でも"あれ"を止める事は出来ないだろうと。
一分隊は4人で構成しています。