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続編-予約済み・11-

「……ん……いたたたた……」


翌朝、カーテンの隙間から差し込む光で目が覚めた。


だけど頭がガンガンする。


完全に二日酔いだ。




「あれ……?」


それに何かが私に密着している。




(あったかい……)


心地良い温かさ。


顔を動かして正体を確認する。




(一夜さんっ?)


私に密着していたのは一夜さんだった。


彼が両腕で私を抱きしめていたのだ。




(そういえば……昨夜、私どうやって帰って来たんだろう? 一夜さんが連れて帰って来てくれたのかな?


 ……て、なんで私、こんな格好してんのっ?)


私は何故か服を脱いでベビードールになっていた。


一夜さんもTシャツとハーフパンツだ。


しかし、服が散乱していないという事は一夜さんは普通に着替えて、


私の服も皺にならないように脱がせてくれたみたいだ。




「……ん……千莉……?」


ベッドの中で私がワタワタしていると一夜さんが目を覚ました。




(あ……起こしちゃった)




「おはよ♪」


一夜さんはそう言うと私のおでこに軽くキスをした。




「お、おはよう……あの……一夜さん?」




「うん?」




「昨夜……私の身に一体何が起こったんでしょう……?」




「やっぱり、憶えてないんだ?」


一夜さんはクスッと笑った。




「いやぁ、昨夜の千莉はすごかったなぁー、部屋に入るなり俺に強引にキスした上に、


 ベッドに連れ込んで今度は服を脱がせ始めちゃってさぁー、


 俺が素っ裸になったら自分もポンポン服を放り投げながら脱ぎ始めちゃって……、


 後はそのまま俺は千莉にされるがままってヤツ? もうびっくり♪」




「え……」


一夜さんの口から語られた事実に私は顔が青ざめた。




「……ていう展開を期待してたんだけどね」




「へ?」


寝起きの上、二日酔いの私は思考回路がまだ完全に起動しておらず、一夜さんが言っている事がよくわからなかった。




「千莉を連れて帰って着替えさせる為に服を脱がせたのはいいんだけどさー、起きた時にTシャツとハーフパンツとかよりも


 ベビードールのままの方が可愛くていいかなー? と思ってね♪」


ニコニコして言いながらコットンケットを捲る一夜さん。




「きゃっ、だ、駄目っ」


慌ててコットンケットを引き寄せる。




「え~、今更~? 散々俺とあんな事や、こーんな事してるのに?」


意地悪そうな顔で私に覆いかぶさる一夜さん。




「う……、だ、だって……」




「確かにいつもは電気消してるから暗いしね。だから俺も昨夜はここぞとばかりにガン見しちゃった~♪」




「えーっ」




「脱がせてる時もいつもなら恥ずかしそうな顔するけど、昨夜は流石に酔い潰れちゃってるから無反応じゃん?


 それはそれで可愛いかったんだけど、せっかくだから目に焼き付けておこうかと思って♪」




「い、一夜さぁ~ん」




「またそんな艶かしい声なんか出しちゃって、もう~、俺を挑発してるの?」




「え……ち、違うもんっ」




「ウソウソ♪ いくら恋人とはいえ、俺も流石に二日酔いの子には手を出さないよ♪」


一夜さんはそう言うとベッドから出た。




「はい」


そして冷たいお水を私に手渡してくれた。




「ありがとう」




「それ飲んだら先にシャワーを浴びておいで。ちょうど昼になるから外で食事しよう」




「うん……て、もうそんな時間?」


驚いて部屋の時計を見るとちょうど午前十一時になるところだった。




「二人共酒が入ってたから全然目が覚めなかったみたいだね」




「うぅー……、二日酔いなんて大学の時以来かも……」




「どの辺りから記憶がなくなった?」




「んー……『利き酒セット』? ていうのを林田くんに飲まされて……すぐくらい、かな?」




「やっぱりなぁ……千莉って基本的にビールなら結構飲めるんでしょ?」




「うん、でも日本酒はすぐに酔っちゃうみたい」




「だけど、もう少しで千莉、林田に“お持ち帰り”されるトコだったんだぞ?」




「え……」




「林田が千莉をタクシーに乗せてるところに『俺が送って帰る』って言って回避したんだけどね」


苦笑いする一夜さん。




「……ご、ごめんなさい……」




「いや、俺も近くの席にいたし、『利き酒セット』を林田がオーダーする時に止めればよかったと思ってるんだ。


 まぁ、林田も自分が潰しちゃったから責任を感じて送って帰ろうとしたんだと思うけどね」


一夜さんはベッドに腰を掛けて私の頭を撫でてくれた。




「けど……俺と千莉の事、林田と大伴さんに気付かれたかも」




「へ?」




「林田が千莉を送るって言った時、『高本さんの家の場所を知ってるのか?』って訊いたら、


 やっぱ知らなかったらしくて、それなら『俺が送って帰る』って言ったんだ。


 一応、『前にどの辺りか聞いた事があるから』って言い訳もしてみたけど、


 その時、大伴さんも傍にいて話を聞いてたから多分、気付いたと思う。


 だから、もしかしたら休み明けに二人に何か訊かれるかも……ごめん」




「ど、どうして一夜さんが謝るの? 私が酔い潰れちゃった所為なのに」




「でも、やっぱり他に回避する方法もなかった訳じゃないと思うし。


 まぁ、俺はバレても全然いいんだけどね」




「……」


私も別にバレてもいいと思っていた。


佐緒里が来るまでは。




「千莉はやっぱり知られたくない?」


そう言って私の顔を覗き込む一夜さん。




「……佐緒里にバレちゃうと……」




「また俺を取られちゃうんじゃないかって思ってる?」




「……」




「……て、否定しないのかっ」




「だ、だって……」




「まぁ、気持ちはわかるけど……俺は元彼とは違うよ?」




「う、うん……でも……佐緒里、高校の時も『どうでもいい男子も人の物になると奪いたくなる』って、


 よく言ってたし、最近まで付き合ってた彼も元々同僚の彼だったらしくて……」




「要するに“略奪”が趣味なんだ?」




「そうみたい……その元彼は結局、同僚の子に奪い返されて居辛くなって会社を辞めたって言ってたから、


 少しは懲りたのかもしれないけど……」




「懲りてないとしても俺は大丈夫」


そう言って優しく微笑む一夜さん。


だけど私にはかえってそれが苦しかった。




だって……、




隆也もそうだったから。


彼も佐緒里と浮気し始めたと思われる頃、こんな風にすごく優しかったのを私は思い出したのだ――。

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