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続編-予約済み・2-

――数日後。




今日も朝から女子更衣室ではあらゆる噂話が飛び交っていた。




そんな中――、


「おはようございます」


西川さんが出社して来ると、


「「「西川さんっ」」」


例の三人組が待ってましたと言わんばかりに彼女を取り囲んだ。




「な、何……っ?」




「西川さんは聞いてます?」


「前園さんと水沢さんの関係とか」


「水沢さんがどうして前園さんの事を“一夜”って呼び捨てにしてるか」


詰め寄る三人組。




(それ、私もずっと気になってたのよね……)


一昨日、水沢さんが一夜さんの事を“一夜”と呼んでいるのを偶然耳にした。


一瞬、聞き間違えたのかとも思ったけれど、昨日もそう呼んでいたのをハッキリ聞いたし、


彼女も以前この会社の別の部署にいたという噂を小耳に挟んでいたから、


きっとその頃からの知り合いなんだとは思っていた。




「……」


口を閉ざす西川さん。




「「「どうなんですかっ?」」」


更に詰め寄る三人。




「……私も人事部にいる先輩に聞いた話だから、よく知らないんだけど……」




「「「何ですかっ?」」」




「あの二人……昔、付き合ってたんだって」




「「「えぇっ!?」」」




(……)


なんとなく、そんな気はしていた。




「二人は二年くらい付き合ってたらしいんだけど……ある日突然、水沢さんが別の人と


 『出来ちゃった結婚』をして会社も辞めたらしいわ」




(……)


西川さんの話の内容に私はものすごくショックを受けた。




「その話が本当なら、普通、元彼のいる会社に派遣社員として来るかな?」


「でも、前園さんはともかく、水沢さんは“一夜”って呼んでるし」


「じゃあ、もしかして……」




(……よりを戻すつもりなのかも?)


私だけじゃなく、ここにいる誰もがそう思っただろう。




「だけど、それなら前園さん、水沢さんに捨てられたって事?」


「それで女性が信じられなくなって、遊んでるとか?」


「じゃあ、なんで私達の誘いはいつも断るの?」


――と、三人がそんな事を話していると、


「おはようございます」


噂の水沢さんが更衣室に入って来た。




「「「……」」」


ピタリと会話を止める三人。




「おはようございます」


その横で西川さんがぎこちない笑みを浮かべて挨拶を返した。




「……おはようございます」


とりあえず私も平静を装いながら挨拶をする。




「おはようございます」


水沢さんはにっこり笑った。




“美人で知的でスタイル抜群”




そんな完璧な女性が一夜さんの元カノだなんて……。




一夜さんは、どうして私なんかと付き合う気になったんだろう――?






     ◆  ◆  ◆






そして、昼休憩の終わり――、




(あ……)


部署に戻ろうと廊下を歩いていると、目の前を一夜さんが歩いていた。


いつもより少しゆっくり歩いている。


何か考え事をしているみたいだ。




「一夜」


すると、私の後ろから水沢さんが一夜さんの姿を見つけて駆け寄って行った。




「……っ」


足を止める事無く振り返った一夜さんは、私と目が合うと一瞬、驚いて前に視線を戻した。




「ねぇ、待ってよ」


少し足取りを早めた一夜さんの腕を取る水沢さん。


すぐに腕を振り払う一夜さん。


それでも、二人が並んだ姿を後ろから見ているとお似合いだなぁーって思った。




「今夜、時間ある?」




「ない」


彼の歩調に合わせながら小走りをしている水沢さんに、顔を向ける事無く答える一夜さん。


あの三人組と同じ扱いだ。




「じゃ、時間作ってよ」




「用件はなんだ?」




「ここで話せる事なら、わざわざ時間作ってなんて言わないわよ」




「……」




「いつなら空いてるの?」




「……」




「もうー、あの頃はあんなに優しくて愛してくれたのに、今は随分冷たいのね~?」


何も答えようとしない一夜さんを挑発するような言い方をした水沢さん。


その言葉が私の胸を締め付ける。




「おい、あんまりそういう事は社内で口にするなよっ」


一夜さんは鋭い口調で水沢さんを制した。


けれど、その事でやはり西川さんが言っていた事は本当の話なんだと確信した。


それにあの三人組が話していた事も……。




(やっぱり、水沢さん、一夜さんと……)




「時間を作ってくれないんなら、家に押しかけちゃおっかなー?」




「勝手にしろ」


突き放すように冷たく言い放った一夜さん。




「……」


水沢さんは一旦足を止めて、一夜さんから離れると自分の歩調で歩き始めた。






デスクに戻った一夜さんは眉間に皺を寄せたままパソコンに向かった。


いつも笑顔の彼が水沢さんが来てからずっとこうだ。




(なんか……私の知っている一夜さんじゃないみたい)

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