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続編 -チケットは二度彼女の手に届く 8-

「ところで、千莉ちゃん……て、あら?」


賢に電話を切られ、気がつくと千莉ちゃんは既に


ミーティングルームからいなくなっていた。




(うぅ……冷たい……)






−−−−−−−−−−


さっき、林田と何話してたの?


−−−−−−−−−−




とりあえず俺もデスクに戻ったものの、一番肝心な事が解決出来ていないと思い、


千莉ちゃんに社内メールを送った。






−−−−−−−−−−


明日の事


−−−−−−−−−−




しばらくして短い返事がきた。




(忙しいのかな?)




千莉ちゃんの方を見ると真剣モードでパソコンに向かっていた。


それでも一応、送ってみる。




−−−−−−−−−−


明日の林田とのデート断って


−−−−−−−−−−






すると、またしばらくして返事が来た。




−−−−−−−−−−


もう遅い


−−−−−−−−−−




(え……)




昼休憩、林田と話していた時に断れない状況になってしまったのだろうか?




(それとも、やっぱり相当怒ってる?)




再び千莉ちゃんの方を窺うと相変わらず忙しそうに仕事をしている。


だからこれ以上の話は仕事が終わってからする事にした。




−−−−−−−−−−


今夜、賢の店で待ってる。


何時になってもいいから来て。


−−−−−−−−−−




「前園さん、ちょっといいですか?」


メールを送って、画面が切り替わったところで総務部の佐々木が来た。


後一秒コイツが来るのが早かったら俺が千莉ちゃんにメールを送っていたのが


バレるところだった。


あぶない、あぶない。




「あのー、昨日の裏企画の事なんですけどー……」


佐々木は他の人に聞こえないように小声で話し始めた。




「うん?」




「一位と二位の賞品を交換して貰えないかなー? っていう相談なんですけど……」




「へ?」




「いや、それがですねー……ここだけの話なんですけど、


 実は高本さんが『人気投票で選んで貰ったのはとても光栄な事なんだけど、


 こういうのは林田くんが一番誘いたい人を誘ってあげて?』って、


 昼休憩の時、林田さんにチケットを返したらしいんですよ。


 もちろん、林田さんは高本さんを一番誘いたかったって言ったらしいんですけど、


 高本さんに『今、お付き合いしてる人がいるから、こういう“デート”だと


 誤解されるような事はできない』って、はっきり言われたらしいんです」




(……え)




「それで、林田さんから高本さん以外誘いたい人もいないから、


 このチケットは二位の前園さんに渡してくれって言われて……、


 けど、それだと林田さんが何にもなくなっちゃうから、


 幹事としては二位のお米券と交換して貰えたら助かるんですけどー……」




「うん、全然OK、OK牧場!」


なんだ、なんだそんな事ならモーマンタイ!


千莉ちゃんも結構意地悪だなぁー?


さっきはあんなつれないメールを返してきておいて、


林田をバッサリ斬り捨てちゃってるんだから。




“もう遅い”っていうのは俺が言う前に断ったという意味か。






チケットとお米券を交換した後、林田の方にちらりと視線を向けると


背中が哀愁に満ち溢れていた。




(うゎ……)




俺のデスクからは背中しか見えないけど、林田の落ち込んだ顔が想像できた。










――そして、夜。




「千莉ちゃん、明日コレ一緒に行こう?」


俺は彼女の目の前に『ロイヤルディナークルーズ』のチケットが入った


白い封筒を置いた。




「えっ、これって……」


見覚えのある封筒を手にし、中から出てきたチケットに千莉ちゃんは驚いた。




「何故か俺の手元に回ってきちゃった♪」




「な、なんで?」




「千莉ちゃんが林田の事をぶった切ったからー♪」




「……林田くんから聞いたの?」




「いや、佐々木に聞いた。林田がさ、千莉ちゃん以外に誘いたい人なんていないから、


 二位の俺にこのチケットを渡してくれって佐々木に言ったんだってさ」




「そ、そうなんだ……」




「俺と一緒に行ってくれる?」




「それって……裏企画の延長?」


千莉ちゃんはちょっと意地悪な言い方で俺の顔を上目遣いに見た。




「そんなワケないだろ? 俺は一番誘いたい人を誘ってるんだから」


俺がきっぱりそう言うと


「うんっ」


彼女は嬉しそうに返事をした――。

これにて続編完結です。

ありがとうございました。m(_ _)m

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