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続編 -チケットは二度彼女の手に届く 7-

――RR、RR、RR……




みちるとパスタ専門店の前で別れ、会社に戻って自分のデスクに座ると


賢から携帯に電話が掛かってきた。




「はい、もしもし?」




『……やっと出た』


何やらちょっと怒りが篭っていそうな賢の声。




『おまえ、昨夜打ち上げの後、何してた?』


「あ?」


『千莉ちゃん、俺の店でおまえの事ずっと待ってたんだぞ?』


「えっ!?」


昨夜は打ち上げの途中から記憶がなくなった。


まさか、千莉ちゃんが賢の店で俺を待っていたとは……。




「……彼女、怒ってた?」




『それはもうー、メチャメチャ怒ってたぞー?


 携帯にも電話したのに、おまえ全然出ねぇし』




「え、マジで?」




『千莉ちゃんに嫌われても知らないぞー? いや、てゆーか……


 もう嫌われてたりして?』




「……」




(ま、まずい)




『愛想尽かされた挙句、他の男に獲られたりしてー?』




「……」




(そういえば、さっき林田と……)




“わざわざお兄ちゃんみたいな年上じゃなくても今一緒にいる人みたいに


 同期の人とかもっと若い彼氏がいてもおかしくないのに”




みちるが言った言葉が頭を過ぎった。




まさか、まさか、まさか?


まさかの乗り換えか?




と、そこへ千莉ちゃんと林田がデスクに戻ってきた。




「せ……た、高本さんっ、ちょ、ちょ、ちょっと来てっ」




まずい、まずい、まずいぞ、これは……!




「あ、あのっ、前園さん?」


突然、腕を掴まれた千莉ちゃんは半分俺に引き摺られるように歩いた。




「き、緊急ミーティングッ」


「えっ? な、何のですか?」


「りょ、領収書の事」


「領収書?」


「いいから、とにかく来てっ」


「えっ? えっ? えーっ?」




訳がわからない事を口走りながら俺は千莉ちゃんをミーティングルームに連れ込んだ。




「千莉ちゃん、ごめんっ」


「あ、あの……」


「ホッントに、申し訳ない!」


「前園さん、どうしたんですか?」


千莉ちゃんは余程怒っているのか敬語だし、しかも“一夜さん”て呼んでくれない。




「やっぱ……怒ってるよね?」




「何がですが?」




「いや、だから昨夜の事」




「昨夜?」




「賢の店でずっと待ってたって……」




「あー、その事ですか」




「だから、ごめん」




「私が勝手に待ってただけですし」




「怒ってないの?」




「はい」




「……へ?」




(だって、さっき賢がメチャメチャ怒ってたって……)




「でも、怒ってる事なら一つだけあります」




「な、何?」




「昨日の裏企画の事です。知ってたんなら“そんなの断れ”って


 どうしてハッキリ言ってくれなかったんですか?」




「……あ、うん……ご、ごめん」




(そうか……そもそも最初から千莉ちゃんにそう言えばよかったのか)




だいたい俺が優勝出来るかどうかなんてわからないんだし、


千莉ちゃんは俺の“彼女”だ。


俺がビシッと“断れ”って言わなくてどうするんだ?




『おーい、こっちの事、忘れてねぇかー?』


不意に手に持っていた携帯から賢の声が微かに聞こえた。




「あ……」




(そういえば、まだ電話繋がったままだった)




「おい、賢! どういう事だよっ!」




『いやぁー、なかなかおもしろい会話を聞かせてもらったよ』


賢は今の会話を全部聞いていたようだ。


からかう様にクツクツと携帯の向こうで笑っている。




「おまえ……」




『千莉ちゃんが怒ってたっていうのは嘘だよ。


 寧ろおまえの事、心配してたぞ』




「なんで?」




『かなり飲んでたみたいだから、ちゃんと帰れたかなぁー? って。


 ホントにあんないい彼女、しっかり捕まえてないと俺が奪うぞ?』




(何っ!?)




「バカッ、そうはさせるかっ」




『ははは、まぁーとにかく千莉ちゃんの事、大事にしろよ? んじゃな』


賢はゲラゲラと笑いながら電話を切った。

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