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続編 -チケットは二度彼女の手に届く 6-

(あぁ……情けない……)




自分がこんなにもダメ男だったとは。




昨日の『合同ボーリング大会』で優勝出来ず、あっさり林田に


千莉ちゃんとの『デート権』を奪われてしまった。


しかも一点差で。


そしてよりにもよってそのデートはホワイトデー限定の


『ロイヤルディナークルーズ』だ。




さらには打ち上げの席でも完全に出遅れた俺は例の三人組に捕まっただけでなく、


千莉ちゃんの近くに行く事もままならなかった。


やけくそ気味に酒を飲み、酔い潰れたあげく一体どうやって帰ったのか……


気がつけば自分の部屋のベッドで寝ていた。


止めは目が覚めて二日酔いで重い体を無理矢理起こしてシャワーを浴び、


酒を抜いていざ出勤しようとして携帯がない事に気が付いた。




(あれ?)




携帯はいつもベッドのサイドテーブルに置いている。


しかし、どこにもない。


煙草やサイフ、部屋の鍵はちゃんと置いてあるのに携帯だけがない。


もしやと思い、キッチンやリビングも捜してみたがやはりなかった。


みちるに俺の携帯を鳴らして貰ったが着信音がどこからも聞こえてこない。




(まさか、落とした?)




自棄酒のおかげですっかり記憶がない。




そんな訳で俺は朝から落ち込んでいた。










――そして昼休憩の直前、俺のデスクの内線電話が鳴った。




「はい、経理部です」




『受付ですけど、今、前園さんの妹さんがこちらにいらっしゃってるんですけど』




(みちるが? 何かあったのかな?)




「わかりました。すぐに行きます」






受話器を置いて受付に行くと、エントランスホールのソファーにみちるが座っていた。




「どうしたんだ?」




「どうしたじゃないよ。携帯、持って来てあげたの」


みちるはバッグの中から俺の携帯を出した。




「え? どこにあった?」


今朝あれだけ捜しても見つからなかったのに。




「タクシー会社の人が昨夜乗せたお客様が車内に忘れて行ったみたいだって


 モバイルショップに届けてくれたみたい。


 それで10時くらいに家の方にモバイルショップからこちらで預かってますからって


 電話があってね、今、私が取りに行って来たの」




「マジで?」




「お兄ちゃん、きっと携帯なくて困ってると思って」




「おー、さすが我が妹!」




「わざわざ届けに来たんだから感謝してよねー?」


みちるはそう言うと手を腰に当てて胸を張った。




「ありがとう、感謝してるよ。お礼に昼飯奢るから」


「ホント?」


「あぁ、ちょうど昼休憩になったし。何が食べたい?」


「じゃあ、パスタ!」


「え……もうちょっと豪華なモンにしろよ」


「んー……、じゃあー……」


みちるは少し考えると、


「やっぱり、パスタッ」とにんまり笑って答えた。




「はは、わかったよ」


我が妹ながら安くつく女だな……と思った。










俺とみちるは会社の近くのパスタ専門店に入った。




「ねぇ、お兄ちゃん、昨夜なんかあったの?」


みちるは美味しそうにカルボナーラを食べながら言った。




「ん? なんでだ?」




「ものすごーく酔ってたから」




「大人にはいろいろあるんだよ」




「ふーん」


そしてみちるは一緒にランチセットのサラダを口に運び、


大きな口を開けて「あ」と、小さく言った。




「お兄ちゃん、あれ……」




「うん?」


みちるが指差した方を見るとうちの会社の制服を来た女の子と


スーツ姿の男が向き合って座っていた。




(千莉ちゃん?)




女の子の方は千莉ちゃんだった。




(男は誰だ?)




千莉ちゃんの向かい側に座っているスーツ姿の男に目をやると


そいつは俺もよく知っているヤツだった。




林田だ。




「あの野郎……」




「お兄ちゃん、あの男の人誰?」


みちるは小声で俺に尋ねた。




「千莉ちゃんと同期でしかも同じ総務部の林田って奴」




「へぇ〜、なかなかイケメンじゃん」




「……」


まぁ、確かに林田はフツーのそのへんの奴よりは顔はいい。




「ところで前から思ってたんだけどさー、千莉さんてなんで


 お兄ちゃんなんかと付き合ってんの?」




「俺なんかとって、おまえ……」




(酷い……妹なんだから、もうちょっと言い方ってモンを考えてくれてもよくねぇか?)




「だって千莉さんほど美人なら、わざわざお兄ちゃんみたいな年上じゃなくても


 今一緒にいる人みたいに同期の人とかもっと若い彼氏がいてもおかしくないのに」




「う……」


そりゃあ、千莉ちゃんからしてみれば俺は六歳も年上だし、


“おっさん”なのかもしれない。




俺はそれ以上、何も言えなかった――。

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