続編 -チケットは二度彼女の手に届く 2-
――午後6時、『合同ボーリング大会』スタート。
総勢33名で5レーンを貸し切り、くじ引きで前半17人と後半16人に分かれ、
さらに3,4人ずつのグループに分かれてやる事になっている。
俺は後半のグループで今回はあの三人組とも一緒にならずに済んだ。
しかし、千莉ちゃんとはというと前半のグループで、しかも松本と一緒だった。
(あのヤロー……くじになんか仕込んでたんじゃねぇだろうなー?)
後半組の俺達は前半組がゲームをしている間、後ろのソファーで待機する事になった。
「前園さん、今日は本気でいくんですか?」
煙草を吹かしながら後ろから千莉ちゃんと松本の様子を眺めていると、
俺の隣に林田が腰掛けた。
千莉ちゃんと同期で同じ総務部の男だ。
「まぁな、どうせやるなら本気でやらないと面白くないだろ?」
「そうですね」
「てか、林田も『デート権』狙ってるんだろ?」
「もちろん」
林田はそう言うと挑戦的な笑みを俺に向けた。
(む……)
挑発してんのか?
上等じゃねぇかー。
――それから間もなくして前半組のゲームが開始された。
千莉ちゃんとの『デート権』はこの『合同ボーリング大会』に参加した
男性社員のほぼ全員が狙っていると思われた。
一部の男性社員は女の子と楽しそうにきゃあきゃあ言いながら投げているものの、
それ以外の男共は目がマジだ。
その中でも俺と林田の視線はある男に向けられていた。
「おい……あれ……」
俺は目を疑った。
「……」
そして林田も言葉を失った。
「松本のヤツ……」
「……」
「下手クソだなー」
松本はいきなりガターを出した後、立て続けにまたガター。
ピンに当たっても倒れるのはせいぜい端の2,3本。
間違ってもヘッドピンになんて当たらない。
だからストライクなんてもってのほか、スペアーも取れないでいた。
「酷いですね」
「てか、あいつ昨日練習しに行ったんじゃないのか?」
「え……あれで?」
「だってそんな感じだったぞ?」
「まぁ、でもこれで松本は争奪戦からあっさり脱落って事で」
林田はそう言うと他の男性社員を偵察し始めた。
千莉ちゃんはあまり力がないのかボールが真っ直ぐにヘッドピンに当たるものの、
なかなかストライクが出ない。
スペアーを取る事もあるけれどスプリットになったり、ガターになったり。
それでもゲームが終わる頃、なんとか100近いスコアを出していた。
そして前半組のゲームが終わった。
松本は……千莉ちゃんよりも低い点だった。
他の奴らはというと、だいたい120点前後、高くて150点くらい。
これならまだまだ望みはある。
前半組と後半組が入れ替わり、後半組の男性社員は俺を含め11人。
その中には林田ともう一人の幹事・佐々木もいる。
俺の右隣のレーンに佐々木のグループ、左隣のレーンに林田のグループが入った。
(千莉ちゃんの『デート権』は絶対俺が死守するっ!)
(千莉ちゃんっ! 14日は『ロイヤルディナークルーズ』で食事デートだよっ!)
くるりと後ろのソファーにいる千莉ちゃんを振り返ると、
ちゃっかり松本が千莉ちゃんの隣に座って何か話していた。
「……」
(ま〜つ〜も〜とぉ〜っ)
「前園さん、何番がいいですか?」
俺が松本を睨みつけていると同じグループになった西川さんが
いつの間にか俺の目の前に立っていた。
「え? あー、何番でもいいよ」
「じゃあ、最後で」
「OK」
俺のグループは西川さんの他に総務部の男性社員で俺の一つ先輩の
高木さんが一緒だった。
最近、結婚したばかりの新婚さん。
だから争奪戦には参加しないだろう。
……油断はできないが……。