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続編 -チケットは二度彼女の手に届く 1-

「ん? なんだこのメール」


後、数日でホワイトデーというある日、ちょっと変な社内メールが届いた。




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


経理部、総務部の男性社員の皆様へ




お疲れ様です。


さて、本日メール致しましたのは来る3月12日(木)に行われる


経理部と総務部による『合同ボーリング大会』の裏企画のご案内です。




それに先立ちまして経理部と総務部の女性社員の中から人気投票を


行いたいと思います。


添付の名簿の中から“この人とデートしたいっ!”と、思う女性社員を選び、


その方のお名前をこのままこのメールにコピーペーストして返信ください。


宜しくお願い致します。




尚、この裏企画に関しましては女性社員の方々には他言無用願います。






『合同ボーリング大会』幹事・経理部 松本


              総務部 佐々木


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




『合同ボーリング大会』とは、毎年決算の直前にそれぞれの部署で行われる


要するに“決算を頑張って乗り切ろう会”みたいなもの。


以前は総務部と合同でやることはなかったのだが、


今年の初めに同じフロアになったから


こうして総務部とも一緒に何かをやる機会が増えたのだ。


まぁ、俺としては千莉ちゃんがいるから嬉しいけれど。




それにしても女子社員の人気投票って……




(そんなのやる前から千莉ちゃんが一番人気に決まってるだろっ?


 てか、この“裏企画”ってなんだよっ?)




もちろん俺は千莉ちゃんに投票して返信したけど、どうも釈然としない。






――翌日。


昨日と同じ様に経理部と総務部の男性社員にだけ投票結果が社内メールで届いた。




(やっぱりな……)




一位はダントツで千莉ちゃんだった。


二位は俺の目の前のデスクに座っている西川さん。


この子もわりと美人系。


でも“ツンデレ”キャラではない。


どちらかと言うとまぁまぁ気さくな方だ。




三位以下は……




面倒臭いから省略。




てか、少数票ばっかだしな。




ふと顔をあげて千莉ちゃんをチラ見すると真剣な顔で仕事をしていた。


今日も相変わらず無表情だ。










そして、数日後――。


『合同ボーリング大会』の当日、幹事の松本と佐々木から裏企画の詳細メールが来た。




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


経理部、総務部の男性社員の皆様へ




お疲れ様です。




お待たせ致しました!


『合同ボーリング大会』の裏企画の詳細です。


本日のボーリング大会は裏企画として、『男性の部』の優勝者と先日行いました


女性社員の人気投票一位の高本さんとのデート企画をご用意しております。


3/14(土)ホワイトデー限定の『ロイヤルディナークルーズ』をペアでご招待!


チケットは既に高本さんに渡してあります。(彼女はまだ何も知りません)


後は男性社員の皆様にデート権を賭けて戦って頂きます!


頑張って我が社のマドンナとのデート権をげっとしてください!


もちろん幹事の松本と佐々木も本気で狙いにいきますよ!




尚、長谷川部長と伊藤部長は裏企画には参加なさらないそうです。






『合同ボーリング大会』幹事・経理部 松本


              総務部 佐々木


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




「……」


俺はメールを読んで愕然とした。




(“俺の”千莉ちゃんとデートだぁ〜っ?)




ふざけんな、ふざけんな、ふざけんなーっ!




冗談じゃねぇ……っ。




しかも、幹事の二人も本気だとー?




それとなく周りを見てみると、ほとんどの男性社員が


千莉ちゃんに視線を向けていた。




(あぁ……こんな事ならさっさと交際宣言しておけばよかった……)




俺と千莉ちゃんは未だに社内のみんなには内緒で付き合っていた。


それは千莉ちゃんがあまり言いたそうじゃなかったから。


まぁ、普段会社で“クールビューティー”を突き通しているから


今さらキャラを変えて「私達付き合ってマース♪」なんて言えないのだろう。






何も知らず黙々と仕事をしている千莉ちゃんの顔を見ながら


とりあえず煙草の一本でも吸って落ち着こうと休憩室に行くと、


「お疲れ様です」


松本の声がした。


今回の幹事の一人だ。




「おぅ」




「今日のボーリング大会楽しみですね」


松本は俺の目の前に座り、にやにやしていた。




(多分、こいつが企画したんだろうなー)




「そうだな」




「前園さん、こーゆー裏企画大好きでしょ?」




「……まぁな」


確かに俺はこの手の企画は嫌いじゃない。


寧ろ好きな方だ。


だが、それは“彼女”がいない場合だ。




(デートの相手が千莉ちゃんじゃなかったら思いっきり手を抜くんだけどなー)




「あっ、てか、おまえ昨日やけに早く帰ってたけど……


 まさか練習とかしに行ってないだろうな?」


幹事の松本と佐々木は裏企画の内容を知っていたという事は、


事前に練習をしておくことも可能なはずだ。




「え……し、してないですよぉー?」


松本はしれーっと目を逸らした。




(こいつ……絶対、練習してやがる)

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