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続編 -初めての… 10-

それから数日間、一夜さんはほぼ定時で退社していた。




“たいした事じゃないから”




そう言っていたのに・・・。




しかも、今日は会社を休むとさっき電話があったらしい。


その電話を西川さんが受けたらしく、経理部の部長と


話しているのが聞こえた。




「前園さん、なんか熱がぶり返したらしくて


 病院へ行くので今日はお休みさせてくださいとの事です。」




え・・・熱?


一夜さん、風邪ひいてたの?


だから、ずっと早退したり定時で退社してたりしたんだ・・・。




それならそれで言ってくれればよかったのに。




一夜さん、困ってないかな?




熱があるならご飯だって作るのも辛い。




帰りに一夜さんのマンションに行ってみようかな?




一夜さんのマンションにはまだ一度も連れて行ってもらった事はない。


だけど住所だけは付き合い始めた頃に教えてもらっていた。






―――定時になり、私は昼休憩にこっそりプリントアウトした


一夜さんの家の周辺地図を片手に退社した。




私のアパートから2駅向こうの駅から徒歩5分くらいにあるマンションだ。


大通りにも面していて綺麗でわかりやすい場所だった。




いきなり押しかけて行ったら怒られちゃうかな?




でも、せっかくここまで来たんだし・・・






マンションに入る勇気が出なくて悩む事数分。




エントランスの前に突っ立っていると中から誰かが出てきた。




あ・・・




「一夜さんっ!?」


「千莉ちゃんっ?」




中から出てきたのは一夜さんだった。




「千莉ちゃん、どうしたの?なんで、ここに・・・」


「え・・・、一夜さんこそ寝てなくていいの?」


「は?」


「・・・え?」


「「ん?」」


しばし、二人で顔を見合わせて首を傾げた。




「私、一夜さんが熱出して大変だって聞いたから・・・


 それでそのー・・・ご飯とか、困ってないかなーって・・・」


実はここに来る前に駅前のスーパーで食材を買って来ていた。




「それでわざわざ来てくれたんだ?」




「う、うん・・・て、やっぱり迷惑だった?」




「全然っ、えーと・・・とりあえず、立ち話もなんだから。」


一夜さんはそう言うと私の手から買い物袋を受け取り、


部屋に案内してくれた。






「今、お茶淹れるから座ってて。」


「でも、一夜さん、熱あるんじゃ・・・」


「あー、いや、それ俺じゃないんだ。」


「?」




???




一夜さんじゃないなら・・・誰?




「妹。」




妹?




「千莉ちゃんにはちゃんと話しておかなきゃって思ってたんだけど、


 なんか、ごたごたしてて言いそびれちゃって。


 実は俺、妹と一緒に住んでて、それでその妹が


 この間、風邪でぶっ倒れちゃってね。」




「だからずっと定時で退社してたの?」




「うん、それで一昨日やっと熱が下がって安心してたら、


 あいつ昨日、大学に行きやがってさー。


 ・・・で、また今朝になって熱がぶり返したから


 大慌てで病院に連れて行ったんだよ。」




「妹さんて・・・大学生なの?」




「うん、俺とは年が離れてるんだ。」




じゃあ・・・あの子達が言ってた“女子大生みたいな子”って・・・




「やっぱり、なんか誤解してた?」


一夜さんは私の顔を覗き込んだ。




「・・・。」




「例の三人組にしつこく聞かれたから。」




「?」




「この間の夜、妹を迎えに行って一緒に帰ってるところを


 どこかで見かけたらしくてね。


 妹だって言っても全然信じてなかったみたいだし。


 それでそういう噂ってすぐ広まっちゃうだろ?


 だから千莉ちゃんの耳にも入ってたかなー?って。」




「うん・・・。」




「それで千莉ちゃんに言っとかなきゃって思ってたんだけど、


 なんかいきなり聞かれてもないのにあれは妹だからって言うのもなんだし、


 タイミングを見計らってたら言いそびれちゃった・・・ごめん。」




「ううん。」




私はあの子達の噂話を聞いて、もしかして一夜さんが


浮気してるんじゃないかって思ってた。




でも・・・やっぱり一夜さんはそんな人じゃないよね?

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