続編 -初めての… 9-
―――数週間後。
朝、いつものように出社してロッカールームに入ると
例の女の子達の声が聞こえてきた。
「えーっ!ショックぅ〜っ。」
「それってホント?」
今日も朝から三人で噂話のようだ。
「絶対、あれは前園さんだった。」
え・・・?
彼女達の話のネタはまたしても一夜さんだった。
「見間違いじゃないの?」
「絶対、間違いないってば。」
「で、ホントに女の子と一緒だったの?」
げげっ・・・どこかで見られた?
嫌な汗が出てきた。
しかし、次の瞬間・・・
「うん、昨日なんか女子大生みたいな子を助手席に乗せてた。」
昨日?
???
昨日は一夜さんとは会社帰りに会っていない。
それに女子大生って・・・?
「もしかして、彼女なのかな?」
「えー、だとしたら超ショック〜っ!」
「前園さん、あぁいうのがタイプなのかな?」
「ねぇねぇ、どんな子だったの?」
「んー、可愛らしい感じの子だった。」
「それでそれで?」
私はそれ以上聞きたくなくて、逃げるようにロッカールームを出た。
一夜さん、それって・・・
どういう事?
デスクに座って、一夜さんの方を見ると
眉間に皺を寄せながら黙々と仕事をしていた。
さっきあの子達が話していた事、本当なのかな?
聞いてみたいけど・・・聞けない・・・。
こんな時、一夜さんの方からメールでも来れば、
ついでにさらっと聞けるのにな。
でも、そんな時に限ってメールが来ない。
そして、悶々とした気持ちのままさらに数日が過ぎたある日―――。
一夜さんが会社を早退した。
会社に一本の電話が一夜さん宛てに掛かってきて、
その直後に血相を変えて早退した。
何かあったのかな?
昼休憩に携帯に電話してみたけれど一夜さんは出なかった。
電源も切っている。
夜になってもう一度電話をしてみたけれど、
やっぱり出なかった・・・。
どうしたんだろう?
―――翌日、一夜さんは午後から出社した。
−−−−−−−−−−
何かあったの?
−−−−−−−−−−
さすがに気になってメールしてみた。
でも、一夜さんから返って来たメールは・・・
−−−−−−−−−−
昨日は電話くれてたのに出られなくてごめんね。
ちょっと、いろいろあって。
−−−−−−−−−−
詳しい事は何も教えてくれなかった。
私には話せない事?
−−−−−−−−−−
大丈夫?
−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−−
うん、たいした事じゃないから。
心配してくれてありがとう。
−−−−−−−−−−
そのメールの後に一夜さんは私の方に視線を向け、
少しだけ笑ってくれた。
私もちょっとだけ笑みを返すと一夜さんは
すぐにパソコンに視線を戻した。
でも、さっきよりも少しだけ表情が柔らかくなっていた―――。