続編 -初めての… 7-
「・・・ちゃん。」
一夜さん?
「千莉ちゃん。」
一夜さんの声がして目を開けると、私の目の前に一夜さんの顔があった。
「っ!?」
しかも助手席のシートが倒され、私の体に
一夜さんのコートがかけられている。
「・・・あっ!」
私・・・寝てた・・・?
「着いたよ。」
自分が寝ていた事にショックを受けていると
一夜さんは優しく笑いながら言った。
「あ・・・」
外の景色に目をやると、そこは私のアパートの前だった。
確か・・・
埼玉の神社に初詣に行って、それから境内を
散策して都内に戻りがてら寄り道でいろんな所に行って、
さらにその途中で夕食を食べて・・・
えーと、その後は・・・
その後・・・?
その後から記憶がない。
多分、昨日あんまり眠れなかった所為で
おなかいっぱいになって睡魔が襲って来ちゃったんだろうな・・・。
あぅー・・・最悪だ、私。
「ご、ごめん・・・」
「ん?」
「寝ちゃって・・・。」
「いや、俺の方こそ、ごめん。千莉ちゃんが疲れてたの
気付いてあげられなくて。」
カーオーディオのデジタル時計はまだ20時を過ぎたばかりだった。
一夜さん、私が疲れてると思って早く送ってくれたのかな?
「ううん、違うの。」
“違う”と、言ったところで今さら本当の理由を言うのも
恥ずかしいけれど。
「いいよ、無理しなくて。」
一夜さんはクスッと笑った。
私、そんなに“マジ寝”してたのかな?
「あー、そうだ。千莉ちゃん、コレ横浜のお土産。」
そして車から降りる時、一夜さんが後部座席から小さな紙袋を取って
私に持たせてくれた。
「シュウマイ。」
「あ、ありがと。」
「それじゃあ、また明日、会社で。」
「うん・・・。」
「おやすみ。」
一夜さんはそう言うと私に優しくキスしてくれた。
この間よりも長くて優しいキスだった・・・。
―――部屋に戻って、一夜さんに貰ったシュウマイを
冷蔵庫に入れたほうがいいのか、冷凍庫に入れたほうがいいのか
確認しようと紙袋から出した。
後は賞味期限も見ておかないと。
「?」
だけど包装紙に貼ってある表記ラベルには賞味期限や
“要冷蔵”なんて事も書いていなかった。
仕方なく包装を解いて中の箱を出してみたけれど、
どこにも何も書いていない。
んー?
不審に思い、箱を開けてみると・・・
中に入っていたのは、シュウマイ。
だけれど・・・
それはシュウマイの実物大マスコット人形だった。
普通のシュウマイみたいに箱に詰めてある。
一瞬だけ見たら誰もが本物と見間違うだろう。
「・・・。」
やられた・・・。
“シュウマイ”って一夜さんが言った時、
やけに可愛い笑顔で言ったと思ったら・・・
私は一夜さんの可愛い笑顔にまんまと騙されたのだった―――。