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12月24日―――。




“クリスマス・イブ”




恋人がいない者同士、会社の同僚達と


『クリスマス会』と称して飲んだ後、


外に出ると薄っすらと雪が積もっていた。




いつの間にか降り始めたようだ。




ホワイト・クリスマスか・・・。




真っ暗な夜空を見上げると


真っ白な雪が俺の火照った頬に落ちて


融けていった。




冷たい・・・。




けど、微酔い気味の俺にはその雪の冷たさが


少し心地良くも感じた。




しかし、外気の冷たさもすぐに伝わってきた。




「寒っ。」


思わず出た独り言。


マフラーをぐるぐると首に巻いて顔を上げると


目の前に大きなツリーが見えた。


そして、その下にさっきの俺と同じ様に空を見上げ、


落ちてくる雪を見つめている人がいた。




街は聖なる夜を共に過ごす恋人達でいっぱいだ。


その中でただ一人、ベンチに座ったまま


ただじっと雪を見つめている。




高本さん・・・?




その人は俺と同じ会社の総務部の女性・高本千莉だった。


いつも黙々と仕事をこなし、誰に対しても


淡々とした態度で接すると有名で、


社内行事や飲み会なんかには参加するらしいが


誰も彼女の笑った顔も、泣いている顔も、


怒った顔も見たことがない。


無表情で何を考えているかわからず、


プライベートも全て謎。


しかし、顔は美人系でモテないはずはなく、


いろいろ誘われはするらしいが断っているとか。




まさに“クール・ビューティー”?






「高本さん。」


彼女の目の前に立ち、少し屈み込む様にして呼んでみた。


すると彼女はハッとしてすぐに視線を絡ませてきた。




「・・・。」


黙ったまま俺を見つめている彼女。




あれ?


高本さんだよな?




「俺の事、わかんない?」




部署が違うからわかんないのかな?




「・・・経理の前園さん。」




「正解。」




一応、顔と名前は知ってんのか。




「何してんの?誰かと待ち合わせ?」




「いえ・・・。」


高本さんは俺の質問に小さく首を振って答えた。




待ち合わせじゃなきゃなんなんだ?


こんなところで。




・・・てゆーか、いつからここにいるんだ?




高本さんの長い黒髪とベージュのコートが少し濡れていた。


地面に積もっている雪からして少なくとも


2時間くらいはここにいたみたいだ。


もうすでに11時近い。


9時・・・いや、もっと前からいたのかもしれない。




「冷たい。」


コートのポケットから右手を出して彼女の頬に触れると


まるで氷のようだった。




「ねぇ、これから時間ある?」




「え?」




「この近くに俺の知り合いがやってる


 スープ専門店があるんだけどさ、


 そこ夜中までやってて、俺、今から


 行くところなんだけど一緒に行こうよ。」


そこは俺がいつも飲んだ帰りや


こんな寒い日によく行く店だ。




「このままここにいたら、風邪ひくよ?


 体、冷えてるみたいだし。


 熱いスープでも食べて暖まろうよ。」


俺がそう言って軽く腕を引っ張ると


彼女は戸惑いながら立ち上がった。




「行こう。」


彼女の手を握ると俺の体温が一気に


吸い取られていくような気がした。




冷凍マグロじゃないんだから・・・


ホントにいつからここにいたんだ?

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