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第5話 周囲の環境が厳しすぎます



 ゲームの主人公よりはマシな状況でありながらも、犯人が身近にいるかもしれない危険性はまるで変わらない。


 ゲームでは崖から突き落とされて殺され損ねた主人公は、またそれからも何度か殺されかけるのだ。

 今後の安全の為にも、注意深く周囲の者達を観察しなければならないならないだろう。


 しかし……。


「今更だけど、変わったお屋敷ね」


 私は、今歩いている屋敷を見て思う。


「ブラッディ・ラブ」の主な舞台となる屋敷は、かなり変わった建物だった。


 普段生活している場なのでそれほどおかしいとは思わなかったのだが、前世の知識を思い出した私には少々奇妙な光景に見えた。


 ここウナトゥーラ邸は、周辺の住民から花屋敷と呼ばれている場所だ。


 屋敷内部の様々な所に花の装飾があり、または本物の花や偽物の造花が飾られ、庭にはそれはそれは季節の花が咲き誇る美しい庭園があったりする。


 私の両親が無類の花好きだという事もあって、色々と凝っている内に屋敷がこんな風になってしまったようなのだが、それにしても最近の装飾率は高すぎた。


 以前はもう少し控えめだったはずなのだが、最近はどこを歩いていても花を目にしない区画はないと言った有り様で、臭いの強い花が飾られている区画などは使用人から「鼻がマヒしそう」「料理の匂いが分かりません」などという苦情が聞こえてくるほどだった。


 私としては別に花が嫌いなわけでもないし、花粉などにアレルギーを持っているわけではないので、特別迷惑だと感じるわけではないのだが、周囲から考えれば屋敷のどこにでも花を飾り付けるその趣味が異様にしか見えないようだった。


 初めて訪問してきた者などもやはり、花の匂いが溢れ過ぎて鼻が利かなくなりそうだとか言って、この屋敷に苦手意識を感じてしまうらしい。


 私は手近な場所に飾られていた花に触れる。


 花の女神アイリーン様が特に愛したといわれる希少な花、プラネタリア・スコール。


 前世の世界にはおそらく存在しなかったその花は特に匂いが強くて、咲く花の模様が「流れ星が流れている」かのように見えることからその名前がつけられていた。


 触れた指先からはみずみずしく冷たい感触が返って来る。


「綺麗な花には棘がある」


 私は思わず呟いた。


 使用人にとってはいくら美しくとも、匂いの強さで台無しに思えているだろう。

 それを少し残念に思う。


 この花の花言葉は何だっただろうか。

 だが、いくら考えても古い記憶の扉が開く事は無かった。

 幼い頃からお兄様から聞いたきりで、思い出せないままだ。



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