第28話 思いもよらない人達と遭遇しました
色々な事があって目が覚めてしまった。
どうやっても大人しく睡眠がとれる気配がなかったので、私は軽く散歩に出る事にした。
命を狙われる事は昼間にしかないので、たまには安全な場所にてゆっくり歩き回りたかったのだ。
夜闇の中、誰もいない中庭を歩く。
まさか私の命を狙っている犯人もこんな物騒な時間に、殺害対象が出歩いているとは思わないだろう。
なんて、そんな細かい事は案外どうでもいいのかもしれない。
ここの所、気を張りつめっぱなしだったので、静かな場所で落ち着ける時間が欲しかっただけなのだろう。
部屋の中で歩き回るのもどうかと思うし、あそこは気分転換をするには狭すぎた。
「ふぅ……」
久しぶりのゆっくりとした時間。
何の考え事もしなくていいのんびりとした散歩は、私にとってとてもありがたいものだった。
そんな風にリラックスしながら庭をウロウロしていると、突然声をかけられて驚いた。
「お嬢、お嬢」
「えっ!?」
それは、昔から聞きなれた幼なじみの声だ。
そして……。
「元婚約者殿は、こんな時間に何をしておられるのだ?」
「その声は……」
元婚約者である男性の声。
声がした方に視線を向けると、アリオとウルベス様がいた。
彼らがこんな時間に屋敷に訪れた事は今までなかった。
こんな夜中に屋敷の庭に訪れるなど一体どんな用事があるのだろうか。
アリオはともかく、真面目なウルベス様はこんな非常識な時間に人の家を尋ねるような人間ではないはずだ。
そもそも接点の無さそうな二人がなぜ一緒にいるのだろうか。
私は二人の顔を交互に見つめながら、その疑問について尋ねる。
「あの、こんな時間にどうかされましたか? 何か急な用事でもおありですの?」
しっかりしているだろうウルベス様に向けてそう聞くのだが、彼が答えるより前にアリオが早口で喋った。
「うーん、ちょっとね。お嬢が悩んでるみたいだから、何かできる事が無いかなって来たんだよ。本当はお昼に着くつもりだったんだよ。けど、ほら、俺って不幸体質だから」
「ああ」
納得した、アリオは放っておけば財布を落としたり、何もなくとも鳥につつかれたり、誰かにぶつけられたりするような体質なのだ。
ここに来る途中で何かトラブルに遭って、こんな時間になってしまったのだろう。
そんな風に時間を使っていたから、たまたま屋敷に用事があったウルベス様と共に一緒になったのかもしれない。
場合によっては、起きた何事かの解決を手伝ってもらったという事もありえるかもしれない。




