第25話 それぞれのアリバイ
数日後。
本人に直接聞いたり、手紙で聞いたり、管理墓地に行ったりして、色々調べた。
そのかいあって、私が崖から落ちた日の攻略対象者達の行動がおおよそになるが、それぞれに判明したのだった。
順に挙げていくが、まず……。
トールはその日の時間帯、例の新人使用人を部屋に呼んで仕事のあれこれやノウハウを教えていたらしい、これは新人使用人にも聞いた事だ。
アリオは楽団の公演の後、ホールの中で夜遅くまで残って楽団員達と練習。
そしてウルベス様は仕事に励むためにその時間帯には執務室から一歩も出ていなかった。
全員にアリバイがある。
普通に考えれば攻略対象者の犯行は不可能だ。
第三者の線を考えるのが、堅実だろう。
けれど、犯人はこの三人の中に必ずいる。
いるはずなのだ。
調べた内容はゲームと同じだった。
アリバイはあるがズレてはいない。
なら、攻略対象達がそのアリバイを偽ったという可能性がある。
この世界が「ブラッディ・ラブ」の乙女ゲーム世界に忠実であると仮定するならば……、身近な場所に、私が調べられる立ち位置に犯人がいなければおかしいのだ。
だが、分からない。
「困ったわ」
私は自室にて、これまでの自分を含めた登場人物達の行動をまとめた日記を読み、大いに頭を悩ませていた。
犯人に辿り着けない。
これは、調べが足りないという事なのだろうか。
まだ何かやってない事があるのかもしれない。
だとしたら、それは何だろう。
それとも自分が気が付かないだけで、身の回りに当たり前にあるものがヒントだったりするパターンだったのだろうか。
屋敷、公園会場、騎士団の詰め所。
駄目だ、思い浮かべても何も分からない。
なら、次に何を目的に行動するべきなのだろうか。
「あんまり気は進まないけど」
あまりにも煮詰まった状態から進まないので、私はお兄様に相談する事にした。
もちろん本当の事を言うと大騒ぎになりそうなので、例え話として雑談風にして……だ。
これ以上時間をかけては、いられない。
嫌がらせが毎日起こっているのだ。
その行為がエスカレートして何かのはずみで死んでしまったら、後悔するどころの話ではない。
今はまだ何かがあったとしても原作知識で避けられているし、加護のおかげで大して辛いとは思わずに済んでいるが、いつまで経っても死なない私を見て犯人が追い詰められないとも限らない。
打てるものなら、できるだけ早く何かしらの手を打つべきだろう。
しかし、
「肝心のお兄様も、最近手紙をやりとりしてくれないのよね。どうしてかしら」
この間送った手紙がまだ帰ってきてない所が不安ではあったのだ。
そう思っていると、机の隅に紙切れが置いてあるのに気が付いた。
「あら?」
気になったその紙を手に取って目を通すと、底に掛かれていた文面は奇妙な物だった。
『図書室に行って息を抜きなさい』
たったそれだけのもの。
けれど、その文面の筆跡は紛れもなくお兄様のものだった。
「これは……、一体どういう事なのかしら」
お兄様に事情を伝えた事は無い。
けれども、目の前にあるのはまるでこちらの事を分かっているような内容だ。
首を傾げるが、その意味は少し考えた所で分かるはずもなかった。




