第23話 再び殺されそうになってます
崖下に転落して記憶を取り戻してから大体一か月が経過したと思う。
私は、それぞれの攻略対象者達に、トールに、アリオにウルベス様に、謝罪と償いをできる範囲でしていった
だが、未だに私を突き落とした人間……肝心の犯人は、分からずじまいだ。
改めてこれまでに起こった事を思い起こしてみるものの、ヒントとなりそうなものはまるで見当たらない。
私の頭が悪いのだろうか。
あるいはまだ重大な証拠を見つけるタイミングが来ていないとか……。
攻略対象達からの好感度は最低値から脱したのだが、これで一安心とは言っていられなかった。
なぜなら。
「きゃっ!」
「お嬢様、大丈夫ですか!」
「え、ええ」
中庭を散歩していた時の事。
頭上から落ちて来た花瓶に身をすくませていればトールが慌てて、声をかけてきた。
そう、なぜならまた命を狙われ出したのだから。
これは早急に、何とかしなければならないだろう。
トールは上を見上げて、底に人の気配が見つからない事を確認した後、軽く首を振った。
「おそらく誰かが窓際に置いたんでしょうね、あれほど使用人頭に花瓶を配置する時は気を付けろと言われていると言うのに、使用人として失格です」
いえ、たぶんそれ確信犯……とは口に出さないで置いた。
仲間を疑えというのは、同じ使用人である彼には酷な話だろう。
と、彼は何かを思い出すかのようにこちらに言葉を告げてくる。
「そういえばこの間、巨大な置物が倒れて来た事もありましたが、最近のお嬢様の身辺はあの楽団員のように物騒ですね。不運が移ったのではないでしょうか。入りたての使用人が掃除の際に位置をずらしたのかもしれません、一度しっかり使用人頭に叱ってもらう必要がありそうです」
「ほ、ほどほどにね」
運が悪いとかそういう問題ではなく、真面目に狙われているんです。
だなどと言わない。
しかし、トールの言動にかすかな違和感を感じた。
ウルベス様の次に頭の固い彼は、幽霊話や目に見えない存在の事など信じない人間のはずだが……。
やはり長い間、私のとなりでアリオと交流する際に彼の不運を見て来たから、持論が変わったのだろうか。
「使用人頭と言うとハーリィさんよね。あの人、威厳があるのは良いけど、ちょっと怖いのよね」
「いいえ、お嬢様は甘いんですから、ちゃんと叱らないと駄目ですよ。本人の為にもなりません」
私は哀れな新人の使用人に同情しながら、トール達使用人のまとめ役である老齢の人物……この屋敷の使用人頭ハーリィ・クシューバスの男性の姿を思い出して冷や汗をかいた。
彼は子供の頃からこの屋敷に勤めている者で、厳格な雰囲気を醸し出す厳しい男性なのだが、ミスをした使用人に怒鳴っている所をたまに見るので、怖くてあまり話した事は無かったのだ。
特に最近は私を見る目が冷たいような、何だか避けられているような気がして、接しなくなってしまっている。何か失礼な事をしたのだろうとは思うのだが、彼に関してはまるで心当たりがなかった。




