第22話 ちょっとの勇気をもらいました
トールの時と、アリオの時とは比べ物にならないくらい時間がかかったが、それから数日かけて葬儀は終了した。
ウルベス様の確認もあって無事に、成果を見る事ができた。
私が無礼を働いた墓の女性は、ちゃんと成仏してくれたようだった。
全てが終わった後、私はこれから正しく進んで行く為に彼に問いかけた。
「ウルベス様、私が墓を暴いた事を許せないとお思いになりしたか?」
付き合いの浅い彼は、良い意味でも悪い意味でも正直だ。
ゆえに彼の言葉に、私が今更過剰に傷つく事は無い。
「怒りは当然あった。だがそれ以上に悲しく思えた」
「悲しく?」
だが、付け加えられたその言葉は若干予想外だ。
ウルベス様は注意深くみていなければ分からないほどに、ほんの少しだけ表情を歪めて悲しそうにした。
「君は人の物を、名誉を、幸福を奪う事でしか満たされない。そんな悲しい人だと思っていたからだ」
「そう、ですか」
「あくまでも、そう思って「いた」のだがね」
「え?」
言葉の意味を再び問いかけされるよりも前に、ウルベス様は話を切り替えた。
「正直その心代わりは気味が悪いくらいだが、こちらに歓迎しない気持ちがないわけでもない。次に用事があった時は、部屋に直接乗り込んでくるのではなく、入り口で私の名前を出すと良い。仕事次第では待たせるかもしれないが、茶菓子くらいは出そうと思っている」
とても回りくどい口調で言われたが、好感度最低値の状態からは脱しているらしい。
彼のその言葉はこの件で初めて執務室に出向いた時よりはかなり柔らかくなっていた。
少しは好感を持ってくれたと考えて良いのかもしれない。
そう思っていると、次いでの様に現状二番目に謝罪しなければならない者の名前を口に出された。
「それに……見切りをつけるだけでは良くないと現婚約者殿に言われたからな」
「え、あの方にですか?」
悪口を広めたり、物を隠したり、嫌がらせしたり、脅したり。
散々な事しかした覚えがなかったので、そんな風に気にかけられるのは意外だった。
「私はその人物とは会った事は無いのだが、彼女が……彼女の友人であるアリオ殿から色々事情を聞いていたようだからな」
「アリオが……」
私の幼なじみの名前を出されて、少しだけ腑に落ちた。
こちらと関係が深かった彼ならば、ほんの少しくらいは私を擁護するような言葉を漏らしていても不思議ではなかったからだ。
特に彼は優しい人間だからなおさらに。
「道をあやまつ人間がいたら正してやるのも優しさだろう。その昔、君が私に言ってくれた事のように相手から見て、それと分らない優しさでも、な」
「ウルベス様……」
「ああ、今の君の顔は良い表情だ、やはり私はもっと早くこうすべきだった。すまない」
「いいえ、ありがとうございますウルベス様」
嫌われていただけではなかった。
ほんの少しであったとしても、気にかけてもらえていた。
その事実で、少しだけこれからも頑張っていくだけの勇気をもらえたような気がした。




