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第2話 とりあえず無事です



 貴族令嬢アリシャ・ウナトゥーラ(十五歳)は崖から突き落とされて頭を打ったショックから、自分が乙女ゲーム「ブラッディ・ラブ」の世界にいる事を思い出した。


 そして突き落とされた後。

 自室にいない事をいぶかしまれ、探しに来た使用人達に崖下で発見された後は、大変な騒ぎの中で屋敷に運び込まれたらしい。

 現場は直接見てないが、その時の事は後に使用人達の口から聞いていた。


 そうしてアリシャは運び込まれた自室で目が覚めた後、自室で医者にあれこれ体の調子を見てもらい、手当を受けた結果、幸いにも命に関わる怪我をしてなかったというのが分かった。痛みはするが、動き回る事もできるだろう、と。


 薬を処方され家族に言葉をかけられ、騒がしい時間を過ごした後、静かになった部屋の中で私は、乙女ゲームの記憶を思い出すに至る前、この世界に転生することになった出来事を思い出していた。


 アリシャ・ウナトゥーラの前世の元の名前は、海川杏うながわあんだ。

 時刻表通りに電車がホームに付くのが当たり前で、通りを歩く人間の大抵はスマホを所持してるというそんな世界から転生してやって来た。


 やって来た、と言うが実はこの来訪は自発的ではない。


 原因はありふれたもの。

 偶発的に思った、スマホ見て歩いててトラックにはねられた……という事故によってだ。


 その後、死んだと思っていた私はやはり死んでいて、霊魂の状態で「転生待機室」なる白い部屋で目覚め、そこにいた神様と対面。

 輪廻転生を司るらしい神様に「いやー、転生させてあげたいんだけど、今どこもかしももいっぱいでさ。ちょっと殺伐とした世界だけど、そこに生まれ変わらせて良い?」なんて言われ、よく分からない内に「話聞いてますよ」的に首を縦に振ったら、こんな世界に転生していた。


 了承したわけじゃない、と叫びたかったが今更だろう。


 だが。

 まさか崖から転がり落ちて大怪我で、自分を殺そうとした犯人がいるかもしれない世界に転生させられるとは、さすがに思わなかった。


 幸いにも転生した私の体には、この世界の創世神の一人女神ユスティーナ様から与えられた「痛みを感じない」加護があるので、そう辛くはないのが救いだ(その加護自体はこの世界で、前世の記憶がないまま過ごしていた子供の頃にもらったものだ)。


 しかし、殺されそうになったという出来事は、かなりのトラウマだ。

 文句を考えれば後から出てきて、いつまでたってもやみそうにない。


 転生願望のない私にとっては、ここに至るまでの一連の話は不幸続きの出来事としか言いようがない事の流れだったのだが、周囲を見回してこの世界が生前やっていた乙女ゲーム「ブラッディ・ラブ」の世界と同じな事だけが救いだった。


 ゲームの流れをなぞるように行動していけば良いのだから、普通に生活するより楽だろうし困らない。


 幸い命に関わるような怪我も、動けなくなるような怪我もないので、健康な人間と同じように生活は出来そうだった。



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