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第19話 アリシャ・ウナトゥーラの大きな罪



 ウルベス様に許可をもらった後、こちらを待っていたトールと追加された三人の見張りと共に、管理墓地の中へと足を踏み入れる。

 彼のいる騎士団の詰め所の裏にある広い土地には、無数の墓石が数えきれないほど並んでいた。


 私は迷いなく、その中の一つの墓石へと向かう。


 その墓石には、他の墓石と違って明確な違いがあった。


 完全な葬儀が終わった印である文字が、描かれていないのだ。


 この世界での葬儀は、エルフやハーフエルフの力を借りて、亡くなった人間の魂を天国へ送る事で完了した事になる。


 なので、この墓地の管理者であるウルベス様が、葬儀を済ませなければいつまで経っても成仏できない事になってしまう。


 だが、それは仕方がない事なのだ。


 ウルベス様とその亡くなった人の魂が、直々に私に謝ってほしいと言っているのだから。


 無くなった人が強い思い出、見送って欲しい人や要望を口にした場合は、エルフ達はそれを無下にはできない。


「遅くなってごめんなさい」


 私はさっそくその墓石へと頭を下げて、謝罪の言葉を口にした。


 墓を暴く事になったきっかけは、何でもない事だった。

 なじみだった宝石店の、最後の一つの品。

 それを生きていた頃の彼女が買っていってしまったというそれだけの事。


 気に入っていた品物だった。

 前々から欲しいと望んでいた。

 なのに、奪われてしまった。


 そう考えた私は、その思いをぶつける様に願ってはいけない事を願ってしまった。

 いっそ目の前で亡くなってくれたら。


 私はそう、妬みの感情と共に願ってしまったのだ。


 そしたら彼女は運悪く、私の目の前でなくなってしまった。


 これは運命だと思った。

 天が味方しているのだと。

 事故の後始末を見届けた後、私はウルベス様の元を訪ねて、墓の場所を教えてもらい、後でこっそり墓を暴いたのだ。


 人として許されない事をした。

 今までしでかしてきた他の罪を低く見るつもりはないが、今回の事は特別だと思う。

 あきらかにしてはならない事だ。


「お嬢様、大丈夫ですか……」


 トールの気遣いの言葉に頷く。


「大丈夫よ」


 私はそれから、墓石に向かって色々と話しこんだ。




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