第17話 元婚約者様にすごく冷遇されてます
トールとアリオからの底辺だった好感度は、何とかそれぞれに対処して引き上げることに成功したはずだ。
その中でも犯人捜しを続けながらそれとなく探りを入れ、心情的にアリオは犯人ではないのではないかと検討をつけてみたのだが……、まだ現状では油断出来ない状況だ。
そんな中で私は、次にお詫び申し上げなければならない攻略対象……元婚約者であり今は婚約者が別にいるウルベス・ジディアラーツ様の元へと向かった。
ウルベス様はハーフエルフの騎士だ。
能力の高さを買われて、騎士団にスカウトされて騎士として活動している。
人間とエルフのハーフであるが、エルフの能力はほとんど使えないらしい。
彼が使えるのは、亡き人の魂を鎮める為の鎮魂の魔法だけだった。
普通の人間よりとがった耳に、一目見ただけでは感情を読み取る事が出来ない無表情。
短い緑の髪に、明るく宝石の様な透き通った翡翠色の瞳。
体つきは騎士団勤めにしては細身だと言えなくもないが、よく見れば特訓によって作れらた……相応の筋肉がついているのが分かった。
「何を言い出すかと思えば、元婚約者殿、君はわざわざそんな事を私に言いに来たのかね」
それでさっそく、ウルベス様の勤める騎士団の詰め所に行き、そこまでついて来てもらったトールに部屋の外で待ってもらって彼のいる部屋に入ったら、呆れたような顔をされたのだ。
場所は騎士団の副団長の執務室だ。
攻略対象に選ばれるだけあって、やはり仕事をする能力が高いのだろう。
ここまで来るまでに見た彼の部下からは、信頼の強さを感じていた。
「時間の無駄だとは思わないか」
そんな彼は私に冷たい視線を注ぐのみだ。
普段無表情なので、なおさら気おされてしまいそうになる。
だが、そんな反応になるのも当然だろう。
仕方がない。
アリオの時と同じようになる事は目に見えていた。
ウルベス様は視線を戻し、書類に目を通しながら、こちらの様子に気を払うことな言葉を続けていく。
「仕事の邪魔になるので、私としては早く帰ってもらいたいのだが、君はいつものように居座るのだろうね。ならせめて煩くないようにしていただきたいところだが……、生憎仕事部屋には君を楽しませられるようなものは何一つ置いていないのだよ」
嫌みを言っている様に見せかけて実はそうではない事があるウルベス様だが。
今のは正真正銘の嫌味だろう。
彼は、思った事を装飾せずにそのまま口に出すものだから、初対面の人間からはかなり誤解されやすく、人間関係で苦労する事も多いのだが、さすがにそんな事情を知っているからと言って今もそうだとは思えない。
明らかに素だろう。
目の前にいる彼は、正真正銘疑いようもなく素で私を嫌っている。
そもそのこの私が、能天気に「嫌われているわけじゃない」などと思えるはずがないのだ。
なぜなら私は、彼等……エルフにとっては最大のタブーとされる事をしてしまったのだから
そのタブーを侵してしまった今でも、のうのうと暮らし続けていられるのは私がウルベス様の元婚約者であった事と、私の気持ちも聞かずに婚約破棄を勝手にしてしまったという負い目があったからに過ぎない。
私は一呼吸をして、向き直った。
そんなただならぬこちらの様子に気づいたウルベス様が、書類から視線を上げた。
「ウルベス様、どうか聞いてください、私は……私が宝飾品欲しさに暴いてしまった死者の墓の件を、お詫びに来たのです」
彼は心の底から驚いたとでもいうように目を見開いた。




