第15話 濡れ衣着せたのを何とかしたいです
トールとアリオ。
二人は何かこの私の知らない事について知っているらしい。
小声で何事かをやりとりしているが、彼等が距離を離してしまったので聞き取れない。
こちらから問いかけても、どうしても教えてもらう事が出来なかった。
だが、そんな気になる点を除けば、状況は上手くいっている。
当初ここに来る前に想像していたよりもずっと平和的な雰囲気だったのだが、途中である事件が起こってしまった。
控室の外が慌ただしくなったので、外に出て通りがかった人に聞いてみれば、舞台の方で問題が起こったというらしいのだ。
アリオ達と共にその現場へと向かってみると、端の方に倒れた女性がいて驚いた。
周囲には、その女性を心配そうに見守りながら声をかけたりしていた。
幸いにも女性はしばらくして起き上がったのだが、気分が悪そうな様子だ。
「最悪の事にはならなかったみたいですが……」
「何かがあったみたいね」
トールの事を聞きながら、私は何かヒントでもないかと周囲を見回してみる。
話を聞くに、どうやら倒れていた彼女……舞台女優である女性は、背後から誰かに首を絞められて殺されかけたらしい。
彼女とその仲間達は「火炎舞踏」という演劇団のメンバーであり、今日はアリオ達の公演の期間が終わった後に、このホールで劇をする為の打ち合わせをしに来ていたらしい。
女優らしいという倒れた彼女は、事件が起こるまでは周囲にいる者達と途中まで一緒にいて話をしていたらしいのだが、休憩の時に集団から離れた際、何者かに襲われ倒れてしまったらしい。
それで、首に跡が残っている事から、誰かが首を絞め殺害しようとしたのではないか……と、そんな風に話は広まっていく。
「また、この騒ぎかよ」
意識を舞台に集まった者達の方に戻せば、誰かがそうポツリと呟いた。
おそらく倒れた女優と同じ演劇団のメンバーの誰かだろう。
不穏な言葉だが、そんなセリフが口から出てくるのも無理はなかった。
なぜなら前に殺人事件が起きた時の現場もここだったからだ。
だからなのか、彼等は必然的にその時もここにいたアリオ達に疑いの目を向けてしまっている
また同じ事が起こってしまうかもしれない。
そう思った私はその光景を見て、アリオを庇うように前に立って述べた。
「アリオはやっていません。だって、私達と話をしていたんですもの」
証拠はあった。
それは私自身だ。
私が信用できないというのなら、トールがいる。
「私だけじゃない、トールや他の楽団の人達だっていたもの、口裏あわせとかはしてないわ。だから彼は関係ない」
こんな事でこれまでした事の償いになるとは思えなかったが、とりあえずできる範囲で何かしたかった。
「お願い、信じて」
「お嬢……」




