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第13話 ちょっとだけ違和感を感じました



 用意してくれた席に座るように言われた後、向かい合ったアリオにじろじろと顔を覗き込まれる。


 部屋の中の空気が重い。

 色々悩んで選び抜いた末に持ってきたお土産の品は渡してあるが、とても中身について詳しく話をするような雰囲気ではなかった。


 そんなことを思っていると幼馴染の彼が口を開いた。


「何か変な感じだ、お嬢って感じがしないや。昔のお嬢に戻っちゃったみたいだよ。ねぇ、何で急にこんな事しようって思ったの?」

「ええっと?」


 アリオは勘が鋭い。

 私が更正したとか、態度を改めたとかではなく「戻った」と感じている。


 それはその通りだろう。

 転生したのだから。


 詳しく言うと、今の私は思い改めたと言うよりは、前世の記憶を思い出した影響で意識が前世寄りに上書きされた状態に近いらしい(私を転生させた神様がそう言っていた)。

 が、そのまま述べるのは犯人捜しに支障が出てしまうだろうし、きっと信じてはもらえない。


 なるべく真摯に対応したいとは思っているが、これはこれ、それはそれである。


「お嬢って、子供の頃はやんちゃでちょっと男の子っぽい所があったけど、優しかったよね。懐かしいな、一緒に庭で遊んだ事とか」


 思い出話を振られたのを良い事に私は、その話に便乗していく。


「そうね。かけっこをしても私はいつだってアリオに追いつけなくて、泣いてたから」


 懐かしい思いでいっぱいだった。

 できればこのまま思い出話にしゃれ込みたいところだ。

 アリオとこんな風に穏やかに話ができるのは何年ぶりだろう。


「う、その時はごめん。でもほらちゃんと心配して戻ってあげてたし」

「そういう情けをかけられる事が嫌な子だったいるのよ?」

「うっ。それもごめん」


 獣人であるゆえか、アリオのみみとお尻にはもふもふの耳と尻尾がついている。

 それがぺたんとなって、しゅんとしてしまうのは見ていてちょっと罪悪感が湧いてしまう。


 でも、少し彼の態度は不思議だった。

 アリオの態度は最初こそ刺々しかったものの、今はまるで昔の様に普通だった。


「私、最近はアリオにいっぱい酷い事していたわよね」

「うん、そうだよ」

「もっと、怒っても良いのよ」


 すくなくとも、私の記憶の中にあるアリオにした仕打ちと同じ事を、私自身がやられたらとてもこんな風に部屋の中に迎え入れる事は出来なかったはずだ。


「うーん。最初は正直……謝っても許すもんかって怒ってたつもりなんだけど、真面目に謝ってる人にそういう事するのは何か違う気がするんだ。お嬢だって、子供の時に俺が何か悪い事してても謝ったらそれで終わらせてくれたでしょ?」

「それは、そうかもしれないけど」


 だが、子供の頃の悪さと大人のそれは違うのだ。

 それとも彼にとっては同じ事なのだろうか。

 私は不思議に思った。


 アリオは言葉を続ける。


「あんな事があったのなら、仕方ないと思うんだ」

「あんな事?」


 疑問の声を彼へと発せば、今まで静かに控えていたトールが短く一言だけ言った。


「アリオ、その事は……」


 咎めるような懇願するような声で。


「あ、ごめん」


 アリオは口をつぐんで、それきりだ。

 何も言わずに黙り込んでしまった。


 今のは一体何だろうか。

 私に関する事で、何か知らない事があるのだろうか?



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